特撮はゴジラから始まった 初登場から70年 特撮の軌跡たどる「特撮のDNA in 信州上田展」
世界中に多くのファンがいる怪獣キャラクターの「ゴジラ」。
初めて映画に登場してから今年で「70年」。ゴジラを通じて、日本が誇る特撮映画の軌跡をたどる企画展が先週から上田市で開かれています。
「本物の造形」などを通じて特撮の魅力に迫ります。
再現された上田の街並みに足を踏み入れたゴジラ。
トンボのように素早く動き高速の羽ばたきから衝撃波を発生させる怪獣「メガギラス」がゴジラに襲い掛かろうとするシーンが精巧に表現されています。
実在しないものや状況を現実のように見せる技術「特撮」。
今から70年前、「特撮映画」はゴジラ映画から誕生したと言われています。
手塚昌明監督
「このワンカットを作るために100人ぐらいの人間がずっとやってるわけですよ」「それがスクリーンから感じられたんですねそれが特撮の面白さだと思うんですよね」
上田市のサントミューゼ上田市立美術館で開かれている「特撮のDNA in 信州上田展」。
映画の為に作られた現存する最古の模型から去年、映画が公開された最新の「ゴジラ-1.0」まで。
実際に撮影で使われたスーツやミニチュアなどおよそ「260点」が展示されています。
こちらは70年前に公開された映画「ゴジラ」のポスター。
日本の映画界に「特撮映画」というあらたなジャンルを築いたゴジラ映画の一作目です。
フィルムが保存されていた缶や当時、特殊技術を担当した円谷英二さんが手にした台本も置かれています。
今ではコンピュータ・グラフィックス=CGで表現されるシーンも当時はミニチュアセットで怪獣スーツを着た俳優が大暴れ。
壊れた街はその都度作り直すなど気の遠くなるような手仕事が積み重ねられたといいます。
「じゃあ、あとはCGでなんとかする、とはならない」2000年に公開された「ゴジラ×メガギラスG消滅作戦」などゴジラ映画3作品を手掛けた手塚昌明 監督です。
小学1年生のときに初めてみたゴジラ映画の醍醐味がその後の映画作りにつながっているといいます。
「いい大人が30とか40とかのおっさんお姉さんがですねおもちゃ箱のようにこういったいろんなものを作って それを怪獣が壊していくっていうのが面白かったんですね」
「だからおもちゃ箱から出したおもちゃを並べて背景とかを作って怪獣も作ってそれがやっぱり僕がスクリーンから感じた特撮の面白さなんですね」
造形師 若狭新一さん
「僕たちがやっていたスタイルはやっぱり中に人が入ってそのキャラクターに命を宿すっていう考え方ですから」
怪獣のスーツやミニチュアの製作を行うこの道40年以上の造形師若狭新一さんです。
こちらは若狭さんが手掛け撮影で使われたスーツと同じ工程で作られたゴジラの左足の表皮=皮膚が再現されたもの。
実際に会場で触ることができます。
最初は粘土でゴジラの模型が作られそれをもとに型が作られます。
その型に液状のゴムが塗り重ねられていきます。
若狭新一さん
「6回か7回ラテックス(液状ゴム)を塗ってその次に生地を張っている」
「生地を貼ったものが皮膚になっていてその皮膚の形を保たせるために人間でいうと筋肉にあたる部分その筋肉にあたる部分が発泡ウレタンになるんです」
こうしてできたスーツを専属の俳優が着用し演技に挑んでいます。
若狭新一さん
「ごらんのとおり布団を着ているようなもんですから、布団を着てさらに表面には断熱というよりももう火や水を通さない素材を使ってますから。そういう意味での快適性はございません」
若狭さんが初めてゴジラを手掛けたのは1999年公開の「ゴジラ2000ミレニアム」でした。
若狭新一さん
「99年版のゴジラなんで20世紀 新しい世紀に向けたゴジラにしなきゃいけなかったので」
色は今までになかった緑色に。
一方で、ゴジラの特徴の一つである口周りのキノコ雲のような形は初代ゴジラのモチーフが残されました。
「顔に関しては実際人間と同じ様に中に骨格が入っているんです。中にゴジラの骨が入っていて骨に歯とかベロがついていてそれにゴジラの皮膚がかぶっている形で作っている」
ゴジラスーツは完成までおよそ40日。
作り手の魂が込められています。
若狭新一さん
「ここに置いてある90パーセント以上のものが撮影で使われたものですから。今ではなかなかみんなが目にすることができないもの。それが特撮のDNAの一番のポイントだと思うんですけど」
70年前に誕生した怪獣映画がきっかけとなり今では世界から注目される日本の特撮映画。
特撮の軌跡をたどる企画展は上田市で9月8日まで開かれています。