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【特集】難聴の17歳ランナー世界へ駆ける 20歳以下の日本代表 心強い家族の支え 岩手

2024年7月12日 18:50
【特集】難聴の17歳ランナー世界へ駆ける 20歳以下の日本代表 心強い家族の支え 岩手

 7月14日から、台湾で聴覚障がい者のためのユース世代の世界大会が開催されます。この大会に、20歳以下の日本代表として盛岡聴覚支援学校・高等部の今野桃果さんが初めて出場します。世界を目指す今野さんには、心強い家族がいました。

 仲間たちと手話で会話しながら練習をしているのは、今野桃果さん17歳。
短距離の分野で世界を目指しています。

「将来の目標は2025年の(東京)でデフリンピックの大会です。もしメダルがもらえたら、親に見せてご褒美もらいたいなと思います」

 今野さんは現在、盛岡聴覚支援学校・高等部の3年生です。補聴器を外すと、音があることは分かりますが、何の言葉かは分かりません。手話や相手の口の動きを読み取る「口話(こうわ)」で周囲とコミュニケーションを取ります。

「健常者と話しをする時に手話じゃなくて、口が話すの早いし。口話だから、それが困っています」

奥州市出身の今野さんは3人姉妹の末っ子。3歳の頃、難聴とわかりました。中学からは聴覚支援学校に進学。以来、親元を離れ、寄宿舎で生活を送っています。

「(寄宿舎は)6年です。最初はさびしくて泣いてました」

  仲のいいお友達が日々の生活を支えています。

「(普段の会話は)アイドルとか、恋話とか。ははは」

 今野さんが本格的に陸上を始めたのは小学校6年生の時。
そのキッカケとなり、ずっと競い合っている人がいます。
岩谷堂高校3年の今野春果さん。今野さんの双子の姉です。

「(桃果さんは)負けず嫌いなところがあります」
「うちに勝ちたい?はい。タイム勝ちたい?はい」
「負けて悔しい感じがします」

  100メートルのタイムでは、1秒以上の差がありいまだ勝つことができない相手です。陸上部顧問の白藤先生は、二人の関係をこんな風に話します。

「お姉さんも桃果さんのことを気にかけながら、アドバイスをしてくれたりということが、大会に行けば見られるので。お互いに協力し合いながら、高めあってるかなという風には感じます」

 練習、そしてレースの時、桃果さんには姉・春果さんの声が聞こえています。

「疲れてきたら腕を振ることを意識してとか。足を上げるのを意識して走るといいかもよとか。あとケガしないで頑張ってみたいな感じ」

心の声に耳を澄ます時、二人の間に障害はありません。

今野さんは、年々自己ベストを更新。去年の全国大会では100、200の2冠を達成しました。 そして、18歳以下の強化指定選手となったのです。

「もう選ばれた?ってびっくりして。でも本当はうれしかったです」

今野さんは今月、初めて世界大会に出場します。 この日は、学校あげての壮行会です。

「ファイト、ファイト、ももか!ファイト、ファイト、ももか、オー!」

「タイムを縮めていい記録を残して。メダルを取れるように頑張りたいです。応援してくれる皆さんの期待に応えられるように、全力を出し切ってきたいと思います。きょうは本当にありがとうございました」

 応援の声を力に変えて。今野さんは、世界を見つめ走り続けます。