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【LOVEいわて】酪農の町・葛巻の礎築いた先人研究に情熱 埼玉の82歳男性  

2024年8月20日 18:43
【LOVEいわて】酪農の町・葛巻の礎築いた先人研究に情熱 埼玉の82歳男性  

 特集です。8月火曜日は岩手に深い愛情を注ぐ人たちを紹介しています。3回目は130年以上前、葛巻町に乳牛を導入し、現在の酪農の町葛巻の礎を築いた先人の研究に情熱を燃やしている82歳の男性を取材しました。

 葛巻町に乳牛を導入した遠藤福一郎の研究をしているのは、埼玉県さいたま市に住む渡邊弘美さんです。毎月、葛巻町を訪れて資料を集め研究を続けています。

渡邊弘美さん(82)
「この方が福一郎さんご本人です これはかなり年を召されていますけど(記者)酪農130年の一番初めに種をまいた方ですね(渡邊さん)そうですねこの方がまず初めではないかなと間違いなくそう思っています」

 渡邊さんが社長や会長を務めていた藤島建設は、埼玉県を中心に住宅を建設している会社で、1959年の創業以来1万5000棟以上を建てています。また、サッカーJ1の浦和レッズのオフィシャルパートナーとなっています。

 さいたま市には葛巻の木材をふんだんに使ったモデルハウスも建てられています。

渡邊さん
「これが葛巻材で作った建物のモデルです。みんな節があるじゃないですかという言い方をされるんですけど、自然な感じなんです。これが自然な感じなんです。強くて表していて私はこういうふうに表した梁が好きで、 こういうふうにやってもらったんです」

 藤島建設は、葛巻のカラマツを安定的に供給してもらうことや、首都圏の顧客との結びつきを強めようと、町内の山林を買い取ってカラマツを植えています。葛巻町森林組合の竹川常勤理事は、渡邊さんが葛巻と取引を始めたころから親交を深めてきました。

葛巻町森林組合 竹川高行常勤理事
「やっぱり葛巻の先人の方々が葛巻のこのカラマツもしかり、この風土を作ったのは先人の方々の力だと思っているだから、本当に私たちもどなたがこういう活性化をさせてきたんだろうなということに興味があります。それをまた形として残してくれるというんですから渡邊会長には本当に感謝ですね。 誰もこれを調べる人はいませんでしたから」

 1892年、明治25年に乳牛を導入した遠藤福一郎は、屋号が江戸屋という葛巻を代表する豪商でした。

渡邊さん
「こういう辺ぴなところで屋号は江戸屋っていうの私は考えられないというか、これは遠藤さんの出自というか、先祖が宇都宮から来ているんですね。宇都宮からということはやはり東北人云々というより関東人の気風の良さというんですか、それこそさっき言ったクイックに反応するイエスノーがはっきりしている、そういうDNAを持っていた家族ではないかと。そこらあたりから始まっていると思いながらこの研究を進めてきました」

 渡邊さんの研究を指導してきた岩手大学農学部の山本信次教授は、渡邊さんの研究で明らかになった点があると高く評価しています。

山本教授
「これも私の目からウロコで地域のリーダーの方ですから、地域の有力者の人だと思い込んでいたら、実は外から人が入って来ていたということが分かって、山村というものが思ったより開放的な社会だったし、新しい人を受け入れて新しい産業を興していくということをやるようなところがあったと、今回改めていろいろ調べていただいたことで分かったということ」

 サッカーワールドカップの試合が行われた、埼玉スタジアムのすぐ近くにあるマンションに渡邊さんは住んでいます。ここでこつこつ研究を続け、論文を執筆している渡邊さんは葛巻の将来に思いをはせています。

渡邊さん
「葛巻町の材を都市部に移動させる、その材で家を作っていうなれば森を移動させる、それを循環させるようなそういう仕事がここだったら組める言うふうに思ったんですね。藤島という埼玉にある会社と葛巻町 中にある髙吟製材所で作ってもらう商品(集成材)が全部循環して回っていく、だから私が当時思い描いていたのはまさに無限大の 横8 ∞これをやると」

高吟製材所 髙橋宏壽社長
「渡邊さんの研究から教わったことは、葛巻の仕事のベースは酪農と林業だと。これを時代に合った形でどういうふうな形で拡張していくか、付加価値をどうつけていくか、地のあるもの それは後に続く我々の あるいは我々の後に続く世代の人たちの大きな役割じゃないか、それをきちんとやってさえいれば葛巻町の産業はきちんと維持されて発展していくのではないかと思いました。渡邊さんの研究は原稿を読ませて頂いたんですが、改めてそこに気づかさせていただいたというふうなことで、非常に素晴らしい研究をしていただいたと」

 葛巻町のカラマツを買い入れて町の林業を支えている藤島建設。その基礎を築いた渡邊さんは今、葛巻だけでなく岩手県にもエールを送っています。

渡邊さん
「やはり魅力があるということですね、それは葛巻だけじゃなくて岩手という大きなポテンシャル 四国一島に全県に匹敵するくらいの大きな面積を持っていて、なおかつ地下資源とか森林資源にしても海岸でもそう非常に良港があったり海の資源もある。そういうことがもっともっと僕は前に前に出していいんじゃないかそれが足りないもっとやるべきだと思います

 渡邊さんの研究によると、遠藤福一郎は葛巻に乳牛を導入して10年も経たないうちに家が傾き始め没落してしまいました。

 しかし遠藤福一郎が蒔いた種は、その後町の人が引き継いで酪農王国葛巻へと発展させました。さらに酪農の成功は、ワインやクリーンエネルギーの創造といった特色ある街づくりの礎となりました。