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介護福祉士目指す短大生 東日本大震災で亡くなった祖父母の温かさ胸に秘め 岩手県陸前高田市

2024年3月18日 19:36
介護福祉士目指す短大生 東日本大震災で亡くなった祖父母の温かさ胸に秘め 岩手県陸前高田市

 岩手県陸前高田市出身の女性が、この春、短大を卒業し、介護福祉士を目指して仙台の介護施設に就職します。道しるべとなったのは東日本大震災で亡くなった祖父母、そして、仮設住宅での高齢者とのふれあいでした。

陸前高田市出身の吉尾明莉(よしお・あかり)さん、20歳。一度、行ってみたい場所がありました。

 吉尾明莉さん
「(ここに来るのは?)初めてです」

 地元で2022年に整備された追悼施設「刻銘碑(こくめいひ)」です。ここで亡くなった、1700人以上の名前が刻まれています。

 お母さんの車に乗る時に、私が「あれ何?」と言ったのが津波で、すぐそこまで来ていて、引き返して逃げた

 震災の時は小学1年。両親やきょうだいは助かりましたが、祖父・貞次郎(さだじろう)さんと、祖母のキヨ子さんは、避難していた市民体育館で津波に襲われたとみられています。

 膝の上に座らせてくれておいしいジュースをくれたおじいちゃん。厳しかったけれど、欲しいとわがままを言ったお菓子はちゃんと買ってくれたおばあちゃん。刻まれた名前を見て、久しぶりに2人に会えた気がしました。

 家族7人で暮らした自宅は全壊。今は、公園が整備されていて、当時の道路もほぼありません。

 吉尾明莉さん
「だいたいこのへんです」「このへんに玄関があって、こっちに車を止めるところがあって・・・」

 家族はその後、竹駒小学校にできた仮設住宅で暮らしました。 洗濯物をつるすハンガーの置き場もないほど狭かったけれど、得られたこともありました。

 吉尾明莉さん
「仮設で人との距離が近いからこそ、関われることも増えたかなと思うし」「人見知りはあまり変わらなかったけれど、人と話す楽しさとかは仮設住宅に来て学べたかなと思います」

 高校卒業後、仙台の短大に通ううちに、ある目標ができました。介護福祉士になることです。きっかけは、大好きだった祖父母の存在でした。

 吉尾明莉さん
「(震災前は)小さかったので(祖父母に)何もしてあげられなかった」「介護福祉士など『高齢者とふれあっているよ』と報告できたら喜んでくれるかなと思う」

 短大では、地元の高齢者団体と連携して、学生と高齢者がふれあう授業があり、明莉さんはこれまでグラウンドゴルフやクリスマス会などに参加。イベントの企画、運営も携わりました。そこでも、高齢者の優しさ、温かさに気づかされます。

 吉尾明莉さん
「逆に高齢者からエネルギーをもらったりとか元気をもらうことが多くて、行事も楽しみの一つだった」

2月13日。卒業を前に、交流を続けていた高齢者団体がお祝いにかけつけてくれました。明莉さんはあいさつで、これまでの感謝と、自分の目標を語りました。

 吉尾明莉さん
「介護福祉士になるために勉強中です」「介護福祉士を目指そうと思ったきっかけも、みなさんの影響があります」「高齢者の方って本当に温かいと思ったし」「(介護って)こんなに楽しいんだってよく思いました」

 吉尾さん、無事、春から仙台市の特別養護老人ホームで働くことが決まりました。将来は地元・陸前高田市に戻り、介護の仕事を続けるということです。

 吉尾明莉さん
「やっぱり高田が好きって言う気持ちが一番大きい」「それぞれ人に向き合って、介助できる。障害者でも高齢者でもマルチに対応できる介護福祉士になりたい」

 大好きな祖父母のおかげで、切り開けた自分の進路。新たな決意を胸に、春から社会へはばたきます。

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