【自然や農業の豊かさ伝えたい】亡き祖父の水田受け継ぎゲストハウスも開設 29歳男性の挑戦 岩手県釜石市
特集は、岩手県釜石市で新たなコミュニティー作りに挑戦している29歳の男性です。亡くなった祖父の水田を受け継ぎ活動しているこの男性を遠藤記者が取材しました。
8月3日、釜石市小佐野町の民家に若者たちが集まりました。東京都在住の大井祥紀さん(29)がオープンしたゲストハウスのお披露目会に集まった人たちです。
大井祥紀さん
「サラリーマンを辞めてからずっと家を持たないという生活をしていて、バンライフと言って車に住んだりとかゲストハウスを作ってそこに住み込んだりとかそういう生活をしていて、気づいたらちょうどこの8月でホームレス生活が5年目に突入した」
集まった人達も個性的です。
ドミニカ共和国出身・フランク カラバージャヒさん
「登山とか夜も好きです日本のアニメも好きです」
荒川恵さん
「仕事は画家とデザイナーとモデルをフリーランスでお仕事をいただいてやっていて、今23歳なんですけどできるだけ活動の幅を広げて、たくさん経験を増やしていきたいなって思っています」
大学を卒業後、東京のベンチャー企業に就職した大井さんは、営業力や新たな事業を開発する能力が評価され若くして管理職に昇進しました。しかし、組織の中で働くより自分で新たな仕事に挑戦する道を選びました。
そして、5月には県内外の若者と共に釜石で田植えをしました。
7月下旬、植えた稲の穂が出始めました。この日は肥料を追加する追肥と言われる作業をしました。一緒に汗を流しているのは佐藤海輝人さん(18)です。
佐藤海輝人さん
「祥紀さんいい人ですから来たくなっちゃうんですよね。いい人だったんで来たらいくらでも来たくなった。ここまで送ってくれるんで楽しいですね」
大井祥紀さん
「今までずっと祖父のおコメを食べて育ってきたんですけど、コメを作るというのは本当に大変なんだと感じながら(祖父が)常にそばにいるような感覚でやっていますね」
農業経験のない大井さんがコメ作りを始めたのには訳があります。前の年の10月に87歳で亡くなった母方の祖父・藤井保則さんが亡くなる間際、大井さんに田んぼを守ってほしいと言ったからです。保則さんは毎日毎日、稲の生育具合やその日行った作業を丹念にノートに記していました。
大井祥紀さん
「正直、稲の花とかをまじまじと見るのも恥ずかしながら初めてで、順調に かなり順調に育ってくれていますね。基本的に9割方祖父のやり方を完全に継いでいて、祖父が残したノートがあってそのノートを見ながら参考にしながらこの時期こういうことをやっていたんだ、あとはネットで調べたりしながら」
記者
「大井さんの田んぼオタマジャクシがすごく多いんですけどなぜですか?」
大井祥紀さん
「土がいいというのは周りの方に教えていただいて。結構昔なんですけど、祖父が遠野の方から良い土を大量に購入してうちの田んぼにそれを入れているというので土がいいというのを。それがゆえにたくさん水生生物が集まるんじゃないかと思っているんですけど」
迎えたゲストハウス「やまとき」オープンの日。集まった仲間は14人。おじいちゃんの家の裏山で切ってきた竹を使って、みんなで流しソーメンの準備をしました。
竹を切っている星さんは大井さんの小学生時代からの友達です。とりあえず2025年3月までの約束でこの「やまとき」の管理人を務める予定です。
星友輔さん(29)
「彼が僕の知らないところでどんどんいろいろなつながりができているので、楽しみもありつつちょっと自分の中ではどんどん増えていくなみたいな、思っていたよりどんどんすごくなっていくなという楽しみよりすごいなくらいの感覚です」
「乾杯!」
大井さんは、この「やまとき」を拠点にして、農業体験をしてもらったり、釜石の良さを全国の人に知ってほしいと願っています。
大井祥紀さん
「まだまだ始めたばかりなのでどれくらいの規模でやっていけるかはわからないんですけど、自分の周りで田舎暮らしだったり一次産業とかそういうところに興味がある方って結構都会に多いので、そういう人たちが気軽に試しにやってみようかなってみたいな形で来てくれるような人の流れみたいなものが今後作って行けたらと思います」
大井さんは釜石の「やまとき」のほかに、父方の祖父の出身地広島県竹原市で「うみとき」というイベントの発信拠点を開いています。当面、広島の海と釜石の山を行き来しながら、自然や農業の豊かさを多くの人に知ってもらう活動を行っていくことにしています。