命を大切にする教育で使われる「かくれてしまえばいいのです」 都城市が教訓にしていることとは
警察庁と厚生労働省のまとめによりますと、
去年、日本の小中高生の自殺者数は527人。
統計を取り始めた1980年以降で最多となり、
高止まりといえる状況が続いています。
都城市では子供たちの心と命を守ろうと、
学校用のタブレット端末を活用した新たな取り組みが始まっています。
今月は国の自殺対策強化月間です。
優しいタッチで描かれた絵本のような世界。
つらい気持ちに寄り添う言葉でおばあちゃんが出迎えてくれます。
その名も「かくれてしまえばいいのです」
自殺予防対策に取り組むNPO法人ライフリンクが運営するサイトで、絵本作家のヨシタケシンスケさんの全面協力で作られました。
宮崎県都城市では、このサイトを活用し、子供の命を守る取り組みに力を入れています。
その背景には、過去の事件の教訓がありました。
(都城市教育委員会 児玉晴男教育長)
「かくれてしまえばいいのです の存在と入口をきちんと示してあげることだと思うんです」
自身の役割についてこう話すのは、都城市教育委員会の児玉晴男教育長です。
去年9月、市内の公立小中学生およそ1万4000人のタブレット端末に「かくれてしまえばいいのです」を導入しました。
(又川岳人記者)
「こちらが都城市の公立小学校で貸与されているタブレット端末です」
「スタート画面からアイコンをタップするだけで、すぐに かくれてしまえばいいのです にアクセスすることができます」
サイト内にアバターで入ると、つらい気持ちなどを書いた手紙を不思議なキャラクターが食べてくれる部屋や、AIが気持ちに寄り添った返事をしてくれる「ロボとおしゃべりコーナー」など、9つの部屋に出入りできます。
匿名・無料で24時間利用でき、そのアクセス数は、平日、都城市から毎日200人以上。
多くが児童・生徒と見られています。
(都城市教育委員会 黒田勝彦指導主事)
「学校生活アンケートを取っているが、まあまあ楽しい とか あまり楽しくない という子供が比較的見逃されがちだと思うんです」
「まさしくそういう子供たちにとっては、ふらっと訪れてほっかりできるいいコンテンツじゃないかなと」
独自の取り組みで子供たちの心のケアに力を入れる都城市。
きっかけとなったのは、35年前に起きたある事件でした。
1990年8月、都城市の住宅で中学3年生の少年3人が「生意気だ」という理由で小学2年生の男の子を暴行。
何度も畳の上に投げつけられた男の子は命を落としました。
この事件は都城市教育委員会に大きな衝撃を与え、二度と繰り返されることがないようにと、歴代の教育長たちの間で引き継がれてきたといいます。
(都城市教育委員会 児玉晴男教育長)
「もちろんそれは自殺とは違うんですけど、やっぱり命を大切にする教育を、先生たち、子供たちに真正面から受けてもらわないといけない」
現在都城市では「かくれてしまえばいいのです」だけでなく、SOSの出し方や市独自の命の大切さを考える教育に取り組んでいます。
児玉教育長は子供たちの生きづらさを減らし、心と命について考えてもらうことが、自分だけではなく他人を尊重することにつながるのではないかと話します。
(都城市教育委員会 児玉晴男教育長)
「子供の命をどう考えるか。これが教育の中では最優先なんです」
「子供の命がなくなってしまえば、教育は成り立たない」
「子供の命を大切にすることは私たちの使命なので、その使命を果たしていきたいと思っています。」