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「103万円の壁」引き上げ 山形県と市町村計300億円減収 専門家「地方交付税で補填」「消費活発化」

2024年12月5日 18:01
「103万円の壁」引き上げ 山形県と市町村計300億円減収 専門家「地方交付税で補填」「消費活発化」

年収が103万円を超えると所得税が発生し手取りが減るいわゆる「103万円の壁」。国会では石破総理がこの壁の「引き上げ」を明言した一方で、吉村知事は山形県と市町村の税収があわせて300億円減ると影響を懸念しています。「壁の引き上げ」は私たちの生活に何をもたらすのか、専門家に聞きました。

石破首相「いわゆる“103万円の壁”については、令和7(2025)年度税制改正の中で議論し引き上げます」

石破総理は11月29日の国会での所信表明演説で、「壁」を103万円から引き上げることを明言しました。引き上げ幅は明らかにされていませんが、国民民主党は、最低賃金の上昇に合わせて178万円に引き上げるよう求めています。
現在の制度では、年収が103万円を超えると所得税が発生します。このため、手取りが減ることを避けるためにあえて働く時間を減らしたり非正規雇用に就く「働き控え」が起きているとし、自民、公明、国民民主の3党は11月、「103万円の壁の引き上げ」に合意しました。
「壁の引き上げ」は、私たちの生活に自治体の財政にどのような影響があるのでしょうかー。
財政学が専門の山形大学の坂本直樹教授は、メリットについて一般論として働く人の「働き控え」が減り、手取りが増えることで消費が活発化し、自治体の税収が増える可能性があるといいます。

山形大学・坂本直樹教授「消費が喚起されて、それが所得の増加をもたらすという可能性はある。ただ、その効果がどの程度かは十分に精査する必要があるが、もし消費が増加した場合には、県レベルでは地方消費税の増収も考えられるでしょうし、市町村レベルでも地方消費税から交付金をもらっている」

しかし、自治体は今、税収の減少を懸念しています。吉村知事は11月20日、「103万円の壁」が国民民主党の求める178万円に引き上げられた場合、県単独で120億、市町村で180億のあわせて300億円の減収となる試算を明らかにしました。

吉村知事「地方にとって多大な影響が生じることになるので代替財源をしっかりと国に確保していただく必要がある」

坂本教授はこの300億円の減収額は、県内すべての地方税収のおよそ1割にあたり、影響は大きいと指摘します。

山形大学・坂本直樹教授「地方の行政サービスの水準が低下することになりかねないので、しっかりした財源確保が必要になる」

減収した場合はそれを補うために公債を発行し、結果、将来世代の負担が増える恐れがあります。ただ、減収分を国からの地方交付税で補填する制度が適用される可能性があるといいます。

坂本直樹教授「県のレベルでは、減少額のだいたい8割は普通交付税、地方交付税として手当てされるし、市町村でも7割5分は地方交付税として手当てされるので、300億円全部が地方の歳入減少につながるわけではない」

坂本教授は、各自治体が減収に見合う財源を国に引き続き求めていくことが重要だと指摘しています。全国知事会は石破総理に対し、壁の引き上げに伴う地方への財政支援を要望しています。政府が、必要な対策を打ち出せるかが注目されます。

最終更新日:2024年12月5日 19:27