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サクランボの双子果なぜ発生?防ぐには夏場の園地管理が重要 双子果の選別「非現実的」

2024年6月11日 17:02
サクランボの双子果なぜ発生?防ぐには夏場の園地管理が重要 双子果の選別「非現実的」

サクランボの収穫が山形県内で本格化する中、商品価値が低く実が2つくっついた「双子果」の発生が目立っています。双子果はなぜ発生するのか、そのメカニズムと来年に向けた対策を取材しました。

ことし4月に開学した東北農林専門職大学のサクランボの実習園地を訪れました。

東北農林専門職大学石黒亮准教授「もう摘果しているからない…あるある落とし残しがここ」

サクランボの生育に詳しい石黒亮准教授です。石黒准教授は県職員時代、およそ20年に渡って、サクランボの品種改良に取り組み、「やまがた紅王」の開発にも携わりました。現在は専門職大学で果樹の栽培方法などを教えています。この日、石黒准教授が見せてくれたのは、実が2つくっついた状態で生育した「双子果」です。

東北農林専門職大学石黒亮准教授「去年の夏、暑さで花芽が異常形成されてめしべが2つになって双子果になったというのがことしの現象」

「双子果」は規格外品として扱われ、果実としての出荷が難しく、ジュースなどの加工品に使われることもあります。廃棄されるケースも多いのが実情です。
通常のサクランボの花芽のイメージです。中心部にあるめしべは本来、1本となっています。
双子果が発生する時の花芽。はっきりとした原因は分かっていませんが猛暑の影響で花芽に異常が発生し、めしべが2本になるとみられています。その2つが受粉して最終的に実がくっついた状態になるということです。

県農林水産部・高橋和博次長「作柄は平年よりやや少ないと見込んでいる昨年夏の高温の影響で双子果の発生が多くなっている」

県が5月「佐藤錦」と「紅秀峰」の園地で作柄調査を行いました。「双子果」の影響で、今シーズンの予想収穫量は平年よりも「やや少ない」1万2100トンとなりました。

県農林水産部・中野憲司技術戦略監「双子果を入れて予想収穫量がいくつになるのかそれも計算している。1万2800トンくらいになる。平年並みにまでいく。双子果分が700トン」

生産者・槇恵太さん「双子果・・・この辺状況としては例年もゼロではない例年より多少多くはなっている」

東根市の槇恵太さんのサクランボ園地ではこの日、紅秀峰が収穫目前となっていました。槇さんによりますと、紅秀峰、佐藤錦ともに1割ほどが「双子果」だということです。味は通常のサクランボと変わらない「双子果」ですが「規格外品」として売り出すためには、大きな課題があります。

JA全農山形園芸部・山木真太郎次長「双子果といってもきれいなものだけではない。それを再選別するのは出荷作業に時間がかかってロスが出てしまうひいては品質にも影響が出る」

多くの生産者がいまの時期、正規品を出荷するのに追われます。「双子果」のみを選別する作業を行うのは現実的ではないと言います。

槇恵太さん「サクランボの時期って短期集中なので畑での作業中に双子果を落として正規品をどんどん出す方に人を使わないといけないのでなかなか加工に回すのは正直難しい」

来年発芽するサクランボの花芽は毎年、収穫を終えた後の7月から8月に作られます。ことしの夏も猛暑が予想される中、対策をとらなければ来年も「双子果」が多く発生する可能性があると専門家は警鐘を鳴らします。

東北農林専門職大学・石黒亮准教授「長期予報を見ると今年も暑くなると予想されているので今年のように双子果が発生することが十分に懸念される。来年に向けて重要な時期・ポイントとなるかもしれない」

有効な対策として石黒准教授が挙げたのは、園地の気温を下げること。
「散水氷結法」と呼ばれる春先のサクランボの霜の害などを防ぐ対策です。花芽に水をまとわせ表面をあえて凍らせることで内部の温度が氷点下になるのを防いでいます。石黒准教授はこの対策で使うスプリンクラーを活用し、夏場の園地の温度を下げることが可能だと指摘します。スプリンクラーが無い園地の場合でも、定期的に地面に水をまくことで効果はあるということです。
また、ハウスの屋根をシートで覆い日光による温度上昇を防ぐことも有効だとしています。しかし、新たな対策を講じるにも資金や人手が必要となります。

槇恵太さん「暑くならないでと願うしかない。人手もいない中で作業が増えてしまうのは大変だがサクランボが収入の大部分になるのでやれることはやりたい」

温暖化の影響なのか、県内の生育環境は変わり始めています。全国一の収穫量を誇るサクランボ県・山形。対策の広がりが収量維持の鍵を握りそうです。

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