山形花笠まつり 花笠づくり後継者不足でベトナムで生産の動き進む
山形の夏の風物詩、「山形花笠まつり」。祭りで使う花笠は作り手の後継者不足で、確保が難しくなっています。こうした中、花笠の一部を海外で生産し、祭り文化を継承しようという動きが進んでいます。
毎年8月5日から3日間に渡って開かれる「山形花笠まつり」。
およそ1万人の踊り手が一堂に会し、100万人の人出でにぎわいます。祭りの象徴となるのが踊りに花を添える「花笠」です。しかし去年、祭りで使う花笠不足が表面化しました。
こうした中、花笠の作り手確保に向け動き出した企業があります。
小坂アナ リポート「こちらに2つの花笠があります。1つは県産、もう1つはベトナム産です。みなさん、どちらが県産かわかります」
尚美堂逸見良昭 社長「正解はこちら(左)が山形産、こちらが(右)がベトナム産」
「持ってみた感じはベトナム産の方が軽いです」
花笠を製造・販売している山形市の「尚美堂」は去年の事態を受けて、日本貿易振興機構「JETRO」と連携し、初めてベトナムに生産を委託することを決めました。
尚美堂逸見良昭 社長「昨年度の花笠まつりで約1000枚の笠が不足した。毎年その状況が続いていて、山形市に相談したところ「JETRO」を紹介いただいた。相談の中でベトナムという国が出てきた」
JETRO山形貿易情報センター古賀健司 所長「私がベトナムに駐在していた。(去年初めて)花笠まつりを見た時にベトナムの笠と似てる所があると思った。親近感があった」
現在の花笠は、祭りが始まった1963年ごろから、農作業がない冬場の女性の仕事として飯豊町の中津川地区で作り続けられていきました。
夏の間に刈り取った材料のスゲを木と竹でできた笠の骨組みに手で巻きつけながら編み込み、生地を縁に縫い付けて出来上がります。中津川地区では10年前、30人ほどの作り手がいましたが、現在は70代の90代までの6人のみとなっています。
さらにー。
尚美堂逸見良昭 社長「近年気温が高くなって、菅が良くない。これが昨年の笠。非常に色が悪い。(菅の)量、品質もよくない状態」
12月、逸見さんと古賀さんは、ベトナムの首都・ハノイ郊外のザイタイ村を訪れました。村では「ノンラー」と呼ばれる日よけの帽子を日常的に使う習慣があり、いまも現地で盛んに作られています。現地の職人に試しに作ってもらったところ想像以上の結果が。
尚美堂逸見良昭 社長「技術レベルが非常に高い。型が無くても熱意と工夫でいろんな試作を作ってくれた」
JETRO山形貿易情報センター古賀健司 所長「まだ試作だったので十分な品質にはなってなかったがこれはうまくいくなと確信した」
最終的な試作品がこちら。県産の花笠はスゲを使うのに対し、ベトナム産はヤシの葉でタケノコの皮を挟んで編みこみます。従来の笠と同じく水をはじく性能に加え、軽さや頑丈さが向上した笠になったということです。
ベトナムにはおよそ200人の笠の作り手がいるため、花笠の型を人数分作り、ことしはおよそ1500個の生産を依頼する方針です。
尚美堂逸見良昭 社長「従来の伝統工芸品の笠はその文化を守っていかないといけないし、継承していかないといけない。それは残しつつ、毎年1万人から1万2000人の踊り手がいるので十分に行き渡るような笠を提供したい」「大きな期待を持っている」
花笠祭り過去映像尚美堂とジェトロでは今週、現地の担当者と最終打ち合わせをし、契約を結ぶ予定です。ベトナム産の花笠は3月末ごろに届けられことしの花笠まつりに使われるということです。花笠と踊り手ー、祭りの華がことしも山形の夏の夜を彩ります。