【特集】「最初から教科書は開かない」県内最高齢!教壇に立ち続ける85歳現役教師の矜持

全国で教員不足が深刻化する中、退職後も教壇に立ち続けるベテラン教師はなくてはならない存在となっています。こうした中、南アルプス市の中学校に85歳で今なお現役の男性教師がいます。県内最高齢教師の矜持とは?
甲西中 宮沢千秋先生
「この数字がすごい関わってくる」
南アルプス市の甲西中で教壇に立つ宮沢千秋さん(85)。週に4回は授業を行う県内最高齢の非常勤講師です。
甲西中 宮沢千秋先生
「(年齢について)私はなんとも思ってない。年寄りでもできる人はどんどん頑張っていいんじゃないか。たまたま体力・脳に問題はなく、この年齢まできた」
宮沢さんは38年間の教員生活で身延町の下山中や富士川町の増穂小で校長などを歴任。定年を迎えても子どもたちへの情熱は衰えず、退職した2001年から非常勤講師を続けています。
現在、担当しているのは1年生の数学の授業です。この日、教えていたのは「立体の表面積」について。
甲西中 宮沢千秋先生
「きょうはこれの周りの面積を求めたい」
甲西中 宮沢千秋先生
「つまりこれが周りの展開図になる」
身近な三角すいである三角コーンを用いて、わかりやすく計算の仕方を指導します。
甲西中 宮沢千秋先生
「作るのに一晩中かかった。これ(三角コーン)と同じ形作るの大変。円すいを見たことがない子どもが多い。だから作った」
1時間の授業に対し、教材研究にかける時間は2時間以上。高齢だからといって、手を抜くことはありません。
宮沢さんの授業の特徴は「最初から教科書を開かない」こと。豊富な経験から得た、生徒が数学を嫌いにならないための工夫です。
宮沢先生に教わる生徒
「わからないことがあると気軽に聞ける。解き方を丁寧に教えてくれる」
宮沢先生に教わる生徒
「物を使うことによって、使わないときよりもわかりやすい」
60年以上のキャリアを経て今なお教壇に立ち続ける姿は、後輩教員にとってもよきお手本です。
甲西中 今津義弘 校長
「僕自身も含めて教育・教師の素晴らしさを教えていただいている。僕たちはその姿を見て子どもたちへの思いを教えていただいている」
この日は中学進学を目前に控える、市内の小学6年生のクラスに出張授業です。
授業では宮沢さんが自ら考案した教材「BLACKBOX」を使って、比例の計算に児童が挑戦しました。
甲西中 宮沢千秋先生
「数学の課題じゃないですか、上(の学年)に行けばいくほど数学がおもしろくない。だいたい『BLACK BOX』と初めて聞いて授業を行うと、興味が出る」
「求められる限り、教師をやめない」と話す宮沢さん。数学を通じて子どもたちを成長させることは、どんな難題を解くより楽しいといいます。
甲西中 宮沢千秋先生
「指導によってぐんぐん変わってくる。数学も同じで。学校・学級で子どもが違うのを見ると、しっかりやらければいけない。子どもと対等に向き合う気持ちがないと無理ですよね」
教員生活63年。85歳の現役教師は今なお、子どもたちと一緒に成長を続けています。