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「良い出来事も悪い出来事も全て必要だった」 金メダルまでの歩みを振り返る レスリング・文田健一郎選手 山梨

2024年9月16日 13:33
「良い出来事も悪い出来事も全て必要だった」 金メダルまでの歩みを振り返る レスリング・文田健一郎選手 山梨
 パリ五輪レスリング男子グレコローマンスタイル60キロ級で悲願の金メダルを獲得した、山梨県韮崎市出身の文田健一郎選手(28歳、ミキハウス)。激戦を終え、甲府市の山日YBS本社を訪れた"最強レスラー"に村上幸政アナウンサーがインタビュー。これまでの軌跡を振り返るとともに、次世代への思いや今後について聞きました。

■競技を始めたきっかけは「練習相手」

村上アナ

「輝かしい功績を振り返るということで年表を用意しました」

文田選手

「すごい!全部ばれてますね(笑)」

村上アナ

「小学5年生の頃にレスリングを始めたと…」

文田選手

「ただ言われて始めたというのがスタートしたときの印象。『好きか?』と聞かれたら『好きじゃない』と答えたと思う」

■父と磨いたスタイル 貫き通す大切さ

文田選手

「父(韮崎工業高監督の敏郎さん)が見せてくれたのがグレコローマンスタイルの特集ビデオ。『グレコローマンはこんなに面白い技があって、派手な技が…』と。そこで見た反り投げに魅了された。互いに五分五分だと思われる状態から相手を後ろに投げ飛ばすのが相当格好いいなと。投げすぎて目が回るくらい練習した」

 高校時代は全国高校生グレコローマン選手権と国体(現・国スポ)をそれぞれ3連覇。全国高校総体(インターハイ)にグレコローマンスタイルはなく、フリースタイルのみでしたが、3年時に初優勝しました。

文田選手
「レスリングのインターハイ優勝は山梨県勢で僕が第1号。すごい自慢(笑)。インターハイに懸ける思いも強くて、初めて優勝して父に抱きついた。(抱きついたのは)唯一この試合。スタイルに関係なく自分のレスリングを突き通すことが大事と気付けた経験は、このインターハイだった」

■先輩の金メダル獲得 「自分の使命だと」

 2012年、高校2年時にはロンドン五輪を現地観戦。高校OBの米満達弘さん(富士吉田市出身)が男子フリースタイル66キロ級で金メダルを獲得する姿を目の当たりにしました。

文田選手

「五輪の決勝を見て…あの大観衆の中で、スポットライトが当たるマットで米満先輩が勝ち名乗りを受け、観客が総立ちで手をたたき、鳥肌が止まらなかった。『レスリングにこんな世界があるんだ』と。『ここに立ちたい』『ここで勝ち名乗りを受けたい』と。自分の使命だと思うぐらい『ここでやらなければ意味がない』と」

■東京で無念の銀 新たな家族の支え

 2021年、25歳で初出場を果たした五輪。しかし、東京大会は優勝候補に挙げられながら無念の銀メダルに。

文田選手

「悔しさを通り越して、時間を戻したいとか、何をしても報われないとか、上手くいかないとか、ずっとこの思いを引きずるとか…そういう感情がずっと浮かんでいた。(妻・有美さんは)一緒にパリでの金メダルという目標に向けて歩んでくれたし、娘(長女・遥月ちゃん)にも強い姿を見せたいと。自分以外にモチベーションができたのは本当に大きな出来事だった。東京五輪の悔しさをもってマットに上がり、悔しさを晴らすことができた。(東京大会を)ネガティブなものでなくポジティブにとらえられるようになったので、東京大会をやっと終わらせられたという気持ち。(年表を)見返すと全てつながっていると実感する。良い出来事も悪い出来事もいろいろある中で全て必要だった。あの時間は意味があったのかと思っていたが、全てが必要で、全部あったからこそ金メダルを手にすることができたと実感している」

■金メダリストに憧れる「ネクスト文田」

村上アナ

「文田選手の活躍は『山梨のネクスト文田』、レスリングに励む少年少女にも夢と希望を与えていました」

 9月の県体育祭りに出場していた子どもたちにインタビュー。その様子を文田選手に見てもらいました。

子どもたち
「格好良かった」

「文田選手の反り投げを見て、やってみたいなと思ったし、将来金メダルを取ってみたいと思った」

「文田のレスリング、格好良かったよ。ロサンゼルスオリンピックも頑張ってね」

「なんでそんな技ができるんですか?」
―――――――

文田選手

「かわいい…」

村上アナ

「小さいお子さんたちが文田選手に憧れてレスリングに打ち込んでいる様子が伝わったと思うが…」

文田選手

「やりたいと思うことを好きでいてほしい。好きだと思い続けて、何かやりたいと思っていること、もっとうまくなりたいことに向き合ってほしい」

村上アナ

「VTRの中で『文田頑張ってね』という声もありましたが…」

文田選手

「ロサンゼルスも頑張ってねと言われたので頑張らないと(笑)」

■「これからも勝ちたい」

 五輪の金メダルという最大の夢を叶えた文田選手。気になる今後は…。

文田選手

「もっともっと強くなる自信があるし、レスリングが大好き。これからも勝ちたい思いはすごく強い。気軽に2連覇と言えないくらい厳しい道と知っているので、どんなモチベーションでどういうふうにレスリングと向き合っていきたいか、(自分自身を)ワクワクしながら見ていきたい」

 3年前の東京大会は無観客での開催。大歓声に包まれた五輪はパリ大会が初の経験に。文田選手は、そこに山梨からの応援があったからこそ堂々とマットの上で戦えた、そんな地元・山梨に金メダルを持ち帰れてうれしい、とも話していました。
(「YBSスポーツ&ニュース 山梨スピリッツ」2024年9月15日放送)

最終更新日:2024年9月24日 8:57
山梨放送