【独自解説】アーティストか?犯罪者か?バンクシーが英・ロンドンで9日連続作品発表 「世界で起きている問題への取り組みが疎かになっていることへの風刺か…」動物の絵は何を意味するのか?
バンクシーといえば、社会を風刺した作品を世界中の路上に描くことで有名な、正体不明のアーティスト。過去にはオークションで、約25億円で落札された作品も!そんな謎に包まれたバンクシーが、9日連続で作品を発表しました。絵は何を意味するのか?バンクシー作品は“落書き”ではないのか?デーブ・スペクターさん、野村修也弁護士の解説です。
■英・ロンドンで9日連続見つかったバンクシー作品 盗難や落書き被害も…
最初の作品が見つかったのは、2024年8月5日。柱の上で行き場を失い、助けを待っているかのような『ヤギ』。その足元からは石のようなものが下に落ち、柱が崩れかけているようにも見えます。普段は防犯の役割をしているカメラもヤギのほうを向いて、下に落ちないよう、そっと見守っていました。
突如として英・ロンドンの街中に出現したバンクシーの新作。2日目には、窓から顔を出し、お互いに見つめ合う『ゾウ』が現れました。
そして3日目には、電車が走る高架を利用し、街中を大移動する3匹の『サル』が登場。
連日バンクシーによる新作がロンドン市内の至る所で発表され、“動物シリーズ”として注目の的になりました。
しかし、4日目に発表された作品を巡り、ある事件が発生しました。
夜に撮影された写真を見ると、白い衛星アンテナが月のように見えるのが特徴の『オオカミ』の絵。簡単に人の手が届くような場所ではなかったのですが、この作品が何者かに盗まれたという報道が!
撮影された動画には、人目を気にすることなく脚立を使い、まるで業者のように堂々とアンテナの取り外し作業を行う覆面の男たちが映っていました。隠れる様子もなく、現場を立ち去って行った男たち。
英『BBC』によると、バンクシーの広報チームは「盗まれたと思っている。アンテナの所在については知らない」と話していて、ロンドン警視庁も「絵が描かれた衛星アンテナの盗難があるという通報はあったが、逮捕者はまだ出ていない」としています。アンテナを持ち去った男たちはいまだ確保されておらず、捜査が続いているということです。
“盗難被害”に遭ったものの、バンクシーは翌日からも毎日新作を発表し、5日目には魚を食べている2羽の『ペリカン』を発表。看板に描かれている魚を食べようとしているペリカンの姿も。
そして6日目には、ストレッチしている『ネコ』。誰にも邪魔されることなく、リラックスしている様子が描かれました。
最初の作品の登場から1週間経った7日目には、“人食い魚”として有名な肉食の魚『ピラニア』が街中に登場。中に入ると、「まるで水族館にいるような気分になれる」と多くの人が集まりました。
連日に渡りさまざまな“動物アート”が発表される中、8日目に発表された作品を巡って、またしても“事件”が…!車によじ登っている『サイ』のおなか部分に、白のスプレーで『$』『V』の文字を落書きされたのです。
今回の被害について、区の担当者は「今回の被害により、多くの人に喜びを与えている壁画を汚してしまったことは、本当に残念だ」とコメントし、今後も注意深く監視していく予定だということです。
様々な騒動が起きる中、“動物シリーズ”の最終作品として発表されたのは、仲間を逃がす『ゴリラ』。ゴリラがシャッターの一部を持ち上げ、アザラシや鳥が外に出ている様子が描かれています。
また、今までの作品はロンドン市内の動物と関係ない場所で発表されていましたが、今回選ばれたのは動物園。『ロンドン動物園』のマネージャーは、「ロンドン動物園を選んでくれたことを光栄に思っています」と話していました。
■9日連続・動物のみを描いたバンクシーが絵に込めたメッセージとは?
普段は“数か月に一度”というペースで発見されるバンクシー作品が、今回は9日連続で見つかり、描かれたのは動物だけという異例の事態に。
バンクシーが作品に込めたメッセージについて、『BBC』バンクシーの番組の司会者は、「ヤギの絵は足場を失いつつあるパレスチナの人々を表している可能性。また、GOAT(史上最高の選手)や五輪ばかりに世間が目を向け、世界で起きている重大な問題への取り組みが疎かになっているという批判とも取れる」と語りました。
Q.バンクシーでなければ、犯罪ですよね?
(デーブ・スペクターさん)
「落書きといえば普通は文字ですけど、絵でも落書きと変わりはないですよね。いつもは政治のメッセージが多いのですが、今回なぜ動物なのかというと、動物を施設から解放してほしいといったメッセージもあるのではないかという話もあります」
Q.イギリスでは「無許可で落書きすると器物損壊の罪になる」ということですが、バンクシーにも該当しますか?
(弁護士・野村修也氏)
「器物損壊は、“元あったものの価値が下がること”をいいます。でも、価値が上がっていますので、『バンクシーの場合は該当しない』というのが世界的な見解です」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年8月20日放送)