【独自解説】“最も血なまぐさい銃”で狙われたトランプ前大統領…またも暗殺未遂か?「結論から言えば“発射寸前”だった」現場で何が起きていたのか―
ドナルド・トランプ前大統領が、またも暗殺未遂かという事件に巻き込まれたとの報道が。トランプ氏は無事で、容疑者は現場で身柄を確保されました。容疑者が所持していたとみられる“悪名高い銃”とは?所持品から分析し得る心理とは?『読売テレビ』特別解説委員・高岡達之の解説です。
■トランプ氏の自宅に近い自身所有のゴルフ場で“暗殺未遂”か 現場で何が?
現場は、米・フロリダにあるトランプ氏所有のゴルフ場で、『トランプ・インターナショナル』という名前がついています。この近くには、日米首脳会談も行われた『マール・ア・ラーゴ』というトランプ氏の自宅もあるので、大統領選の合間を縫って、英気を養っていたのだと思います。
前回の暗殺未遂事件のときのように、演説会場ではないので、警護はどうしていたのでしょうか。ゴルフ場にはビルなどの高い場所はありませんが、警備がしやすいかというと、そうでもないです。
ゴルフ場そのものはフェンスで囲まれていて、外の道路も封鎖しています。ただ、中は貸し切りではなかったようなので、トランプ氏がプレーしている前をシークレットサービスが守っていましたが、恐らくスーツ姿ではなく、他のお客さんが不快に思わないように、ゴルフ場の中に溶け込むようにゴルフウェアを着てカートを運転したり、というような態勢を取っていたようです。
■「結論から言えば“発射寸前だった”」トランプ氏に迫っていた危険
今回、容疑者がゴルフ場のフェンスの外側からライフル銃を構えていたのをシークレットサービスが発見し、発砲しました。容疑者は現場から逃走しましたが、その後、身柄を拘束されました。
ゴルフ場は広いですが、ホールによってはトランプ氏が外の道路に近い所まで来ることがあるので、そこからライフル銃を構えていたということです。
一方、当局からは、「シークレットサービスがこの男を発見し、発砲で対応した」という大変気になる言葉が出ました。この言葉には、大変重みがあります。「発砲で対応した」というのは当然、“何となく長いものを持っている男がいたから撃った”ということではありません。
シークレットサービスも法の執行官なので、「銃そのものを目にした」あるいは「既に発射体勢に入っていた」ということでないと、発砲はしないわけです。結論から言えば、「発射寸前だった」ということです。
前回と同じように、トランプ前大統領は大変危険な状態にありました。前回の事件を受けて、シークレットサービスを統括する人を交代させるぐらい大変注意を払っていたので、今回も何とか未遂に抑えたということです。
■容疑者が所持していたとみられる“最も血なまぐさい銃”とは
今回使われた銃は、「世界で最も広く使われている、最も血なまぐさい銃」といっていいと思います。旧ソ連時代に開発された『カラシニコフ』という銃です。大変古い歴史のある銃で、アメリカで製造していたこともありました。
今回、シークレットサービスが容疑者を発見・発砲した時の距離は、約270~460mだといわれています。一方、この銃の有効射程距離は300mなので、もし撃たれていたら、まかり間違えば…という事態になっていました。
この銃は非常に単純で、いろんな用途に使われます。いまだに、旧ソ連の国を中心に軍の正式兵器として使っているところもありますし、ゲリラ戦でもよく使われます。
しかし、アメリカで銃砲店に行った時に最初に勧められる銃ではなく、どちらかというと、アメリカでは馴染みの薄い銃と言っていいほうだと思います。ただ、使い方が簡単なので、かつては乱射事件に使われたこともありました。
■容疑者は小型カメラを所持か “暗殺未遂”に及んだ動機は?
FBIが公開した写真を見ると、ゴルフ場を囲むフェンスだと思いますが、ここから銃身が覗いていることに気付いて発砲し、一旦容疑者を追い払い、逃げた容疑者を追跡して捕まえたということです。
また、ここに写っているのは、手下げ袋と銃、そして小型カメラです。YouTubeなどに映像を投稿する人が使う小型のカメラで、テレビの世界では『GoPro』と言います。
今後の調べで明らかになってくると思いますが、小型カメラを持っていたということは、自分がそういった行為に及ぶところを撮影して、何かアピールしたかったのかもしれません。
容疑者は白人で、激戦州・ノースカロライナに住んでいる58歳の男です。白人というだけでは、アメリカではわかりません。どこか他の国から来たかもしれません。
米・メディアによると、ウクライナ支持に大変熱心だったと伝えられています。なぜこういうことに及んだかはこれからなりますが、トランプ前大統領のほうが、どちらかというとウクライナ支援には消極的ですから、「当選したらやめるのか」と今回の行動に及んだという話も、あることはあります。
■ハリス副大統領が「無事で良かった」と声明 現政権に対する批判的な声
今回の件、アメリカ政府も大変衝撃を受けています。バイデン大統領も、今はトランプ氏と次の大統領を争う立場のハリス副大統領も、「彼が無事で良かった」と直ちに声明を出しました。
その理由は、政治的なライバルであっても、「今起きたことの責任は現在の政権が持つから」です。今後の捜査の行方、あるいは「またしてもそれだけの接近を許した」ということで、現政権に対して批判的な声が上がってくるように見受けられます。
(「かんさい情報ネットten.」2024年9月16日放送)