【独自解説】「やるしかない、2人分働ければいい」吉村洋文氏が『維新』代表・大阪府知事の“二刀流”へ意欲も、2025年は万博・参院選とハードスケジュール…険しい道を見据えながらも出馬決意したワケ
『日本維新の会』は2024年10月の衆院選で議席を減らし、野党の中では“ひとり負け”状態に。そんな中、大阪府知事を務める吉村洋文共同代表が次期代表選への出馬を表明しました。2025年は万博や参院選など多忙が予想される中、大阪府知事と党代表の両立はできるのか?2024年11月12日に行われた会見での発言を交え、『読売テレビ』平田博一記者の解説です。
■執行部が衆院選敗北の責任を取る中、吉村氏は出馬決意 背景には『党の立て直し』と『仲間からの声』
今回、『日本維新の会』の代表選が行われるきっかけとなったのが、2024年10月27日に行われた衆院選です。
大阪では19の小選挙区全てで維新の候補者が当選しましたが、比例では大きく票を減らし、公示前に44あった議席は6つ失い、38に減らすこととなりました。
この選挙結果を受けて吉村共同代表は、「野党の中では“ひとり負け”」だとして、「我々執行部に責任がある」と話していました。実際に、馬場代表と藤田幹事長は今回の選挙結果を受けて、次の代表選には出馬しない意向を既に示しています。
-Q.馬場代表は出馬しない一方で、吉村共同代表は出馬の意向を決めました。このあたりの責任について、2024年11月12日の会見では、どう語っていましたか?
その点を記者陣に問われた吉村共同代表は、「このままだと『日本維新の会』が国政政党として消滅しかねないという危機感がある。多くの仲間からも『出馬してほしい』という声があり、出馬することを決断した」と答えました。
実は、今回の衆院選の前後で維新内部からも、「次の代表は吉村共同代表しかいない」という声が聞こえていました。2025年7月には参院選を控える中、短期間で党を立て直すことができるのは、「吉村さんしかいない」という話になったのかと思います。
■「永田町文化を変える政党」吉村氏が打ち出した3つのパーパスと党の存在意義
今回の会見で、吉村共同代表が繰り返し述べていた言葉があります。それが、党としての「存在意義」、そして「パーパス(目的)」です。
「党の存在意義が揺らいでいる。国政政党として消滅の危機だ」と話し、強い危機感があることを強調していました。
これまで、維新に対しては「政治を“変えてくれる”のではないか」というイメージがあった方も多いのではないでしょうか。これまで維新を支持してきた方の中には、このような“期待感”があったのだと思います。今回の会見では、この“変えてくれそう”という期待感を取り戻すことを意識したと思われる部分がありました。
それが、吉村共同代表が掲げた3つの『日本維新の会』の目的です。1つ目が「次世代のための政党」、2つ目が「道州制を実現する政党」、そして3つ目が、“政治とカネ”の問題がありましたが、「永田町文化を変える政党」ということで、やはり“変えてくれる”という部分を強く打ち出したといえると思います。
■看板奪われた“あの党”の存在 一方、維新の考えは『実がなる木が育つ土を耕す』
また、会見の中では、吉村共同代表が非常に意識している政党があると感じました。それが、『国民民主党』です。実は今回の衆院選後、維新の関係者からも、「維新の看板を国民民主党に持っていかれた」という声があがっていました。
選挙結果を見ても、維新は今回、前回から4割ほど比例票を落としています。一方、「政治を変えてくれる」という部分の受け皿になったとみられる国民民主党は比例では、前回の2倍以上の票を獲得しています。
今回の会見でも、吉村共同代表は「103万円の壁の議論、国民民主党が多くの支持を得たので、突破すると思う」という発言をしていました。一方で、維新としては、これから「目の前の手取りだけではなく、将来の世代のことも考えると、本丸は社会保障の壁だ」とも話していて、国民民主党を強く意識していると感じました。
また、吉村氏は会見で、「目の前のりんごの実をもぐのではなく、実がなる木が育つ『土』を耕す」ということも述べています。『りんごの実』は「手取り」ことだと思われますが、『実がなる木が育つ土を耕す』、つまりさらにその先の「将来を考えて動いていく」ということを強く訴えたかったのかなと感じました。
■万博・参院選などハードスケジュール予想も、「やるしかない」と意欲 今後のポイントは『共同代表』
ただ、一つ大きな課題として言われているのが、大阪府知事との職を両立できるのかということです。例年、年に4回、大阪府議会の定例会が行われますが、2025年はそれに加え、『大阪・関西万博』という大きなイベントがあります。万博は4月13日から半年間行われますが、その間は、各国の要人などをもてなすために、かなり多くの日数、万博会場のある大阪・夢洲に入ることになると言われています。さらに、夏には参院選がありますので、大阪府知事としての職務も行いながら、維新の代表として参院選を迎えることになり、「本当に両立できるのか?」という声が上がっています。
前回の2022年の日本維新の会の代表選には、吉村共同代表は「大阪府知事と『大阪維新の会』代表の仕事に集中したい」として出馬をしませんでした。
今回の会見では、「両立できるのか?」という問いに対して、吉村共同代表は「やるしかない。2人分働ければいいのでは」と答えていました。
今後、大きなポイントとなるのが、「共同代表」です。12月1日に行われる代表選で、吉村氏が代表になった場合には、代表のパートナーであり国会を担う『共同代表』が誰になるのかが、注目されます。
(『読売テレビ』平田博一記者)
(「かんさい情報ネットten.」2024年11月12日放送)