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【独自解説】『103万円の壁』より難攻不落?国民民主党・玉木代表に立ちはだかる実現までの“3つの壁” 税制を決める希望に繋がる“交渉相手”とは?問われる党首の器

2024年11月10日 12:00
【独自解説】『103万円の壁』より難攻不落?国民民主党・玉木代表に立ちはだかる実現までの“3つの壁” 税制を決める希望に繋がる“交渉相手”とは?問われる党首の器
玉木代表に立ちはだかる“様々な壁”

 政界の“主役”となった国民民主党・玉木雄一郎代表は、与党が「言うことを伺うのみ」というぐらい協議の中心になっています。本人の公約でもあった『103万の壁』や『トリガー条項』を与党に呑ませられるかがカギですが、そこには“政治”という高い壁が…。実現までにどんな壁があるのか、『読売テレビ』高岡達之特別解説委員の解説です。

■公明党を置いてけぼりに?『党首会談』が迫る中、国民民主党・玉木代表に立ちはだかる“公明党の壁”

 『103万円の壁』も『トリガー条項(ガソリン減税)』も、税金ですから法改正もあります。石破総裁が「うん」と言ったからOKになるわけではなく、壁があります。

 一つは、『党首会談』です。話がまとまって、与党が呑んでくれたということになると、党首同士で「合意しました」という話をしなければなりません。そして、『党首会談』がもう11月11日に控えていますから、アクシデントが起きています。

 今回、自民党と国民民主党の間で話が先行していますが、公明党も自民党と選挙後に協定を結んでいる与党ですので、入ってもらわないと困ります。ただ、石井代表が落選したので、既に斉藤国交大臣の名前が出ているとはいえ、代わりの人を決めないで、自民党と国民民主党だけ手を握られても困るということが、一つあります。

■税制の方針決める“税調の壁” 『4つの税調』と、それぞれの役割

 二つ目が、『4つの税調(税制調査会)』の存在です。税金の制度は国民の暮らしに直結する話ですが、毎年、年末のほぼ半月弱で決まっています。

 税金は“法律を触る”ことなので、国会での議論は当然ですが、実は毎年ものすごく細かく変わります。「酒税を上げてタバコ税を同行する」など調整するのですが、その方針を決めるのが、自民党と公明党の中にある『税制調査会』です。この二つで合意されると、ここは手続きですが、『与党税調』にいきます。

 そして、『政府税調』です。政府は政府で、財務省がいろいろとセットアップします。他の3つと違うのは、大学教授も入るので、研究している方々の意見が入る『税制調査会』ということです。

■「軽視していない。無視しておる」『自民政調』と『政府税調』の関係性

 『自民税調』には、ものすごくベテランで何回も当選していて、派閥領袖をやっている人たちも入っています。「自分は財務省どころか大蔵省出身のプロだ」とかいう人もいて、“首相を超えるプライド”を持っています。

 私は、『自民税調』の会長を長く務めた方と話したことがありますが、もう“けんもほろろ”です。「総理大臣なんてのは、何かあったら首が飛ぶんだよ。でも税金は、国民がずっとこの制度でやるんだ。簡単に、総理が決めたからって、言うこと聞けませんよ」とおっしゃっていて、数々の“神話”が残っています。

 『政府税調』には、ずっと研究している大学教授も入っているので、「偉いんでしょう」と普通は思います。でも、『自民税調』のほうが優先されます。『自民税調』の意見がずっと通ってきた時に、ある記者が「ちょっと『政府税調』の言うことを軽く見過ぎていませんか?」と聞いたら、「軽視はしてない。無視しておる」と答えたと。この“神話の方”は亡くなったので、今は変わっていると期待しています。

■『自民政調』会長は岸田元首相のいとこに?税金を決める『コア』メンバーとは

 「“恐らく”このメンバーで行くだろう」という人を挙げます。というのも、『自民税調』会長は公表されますが、それ以外のメンバーは、ネットなどで調べてもなかなか出てきません。

 ざっと30人いますが、その中でも常連なのは、元財務大臣・額賀福志郎氏や現財務大臣・加藤勝信氏などです。会長は、岸田前首相のいとこ・宮沢洋一氏。ご親戚には宮澤喜一元首相がいて、元大蔵省出身です。

 ただ、11~12月の半月ぐらいの短期間で決めるわけですが、30何人もいると話が進まないので、この中の9人ぐらいで、まず話を詰めます。最高幹部の『インナー』といわれる人たちです。

 しかし、9人でも議論がいろいろ出て話がまとまらないとなると、真ん中の核という意味の『コア』と呼ばれる4人ぐらいで、話をつけます。誰が入っているかは年によって違いますが、この『コア』の人たちが、国民に大変身近な税金を決めています。

 ただ、もし今の自民党代表・石破氏が「玉木代表の言うことを呑みます」となった時、宮沢氏が反対したら、石破氏は宮沢氏に対して「交代してくれ」と言えるでしょうか。岸田前首相とはいとこ同士ということもあり、「ちょっと政権として困るんだ」という話も聞いてくれたかもしれませんが、石破氏と宮沢氏がどんな関係かは、誰にもわかりません。会長とはいえ自民党の中の役職なので首相のほうが上ですし、宮沢氏は「無視しておる」なんてことは言わないでしょうが、どうなるかわかりません。

■“死に物狂い”の玉木代表も「難しさはわかっている」 希望となる交渉相手とは?

 玉木代表も「死に物狂いで」とは言いながら、財務省出身なので、難しさはわかっています。ただ、国民民主党の交渉相手は『インナー』のお一人、森山幹事長です。『インナー』として名を馳せている方なので、税金に詳しいです。希望を繋ぐのは、ここです。

■“ガソリン減税”と『103万円の壁』 実現の可能性が高いのは…

 今回、国民民主党の要求は、2つあります。“トリガー”という言葉でいわれていますが、ものすごく簡単に翻訳すると、ガソリン減税です。こちらは、東日本大震災を受けての一時的な措置です。もう1つは、“働き控え”に繋がる『103万円の所得税の壁』を上げましょうというものです。

 問題は、この2つには大きな差があることです。どちらが実現する可能性が高いかというと、実は“ガソリン減税”です。東日本大震災を受けてのことなので、一時的だからです。『103万円の壁引き上げ』は、ずっと続く制度だから難しいです。ただ、こちらで自民党に歩み寄ってもらわないと、玉木代表の顔が立ちません。

■様々な壁が立ちはだかる中、迫る“時間の壁” 妥協か、貫くか…玉木代表の決断は―

 今の時点では、玉木代表は「0か100%か」と言っていますが、大方の予想は、「一度にやったら無理です」という話にして、ほどほどの真ん中で落とし込んでくるでしょう。

 なぜかというと、103万円を178万円に引き上げると、7兆~8兆円の減収になるからです。7兆~8兆円というと、消費税3%~4%分と一緒です。だから、「いきなりその減収は、いくらなんでも…」というような話が出て、「140万ぐらいかな」という話になるのではないでしょうか。ただ、今度は日付の壁があります。

 2024年12月31日です。2025年の国会で審議する2025年の予算は、年末までに上げますが、予算を作るなら、その前に税金を当てないといけません。タイムリミットがある中で、玉木代表は妥協するのか、貫くのか―。(『読売テレビ』高岡達之特別解説委員)

(「かんさい情報ネットten.」2024年11月4日放送)

最終更新日:2024年11月10日 12:15