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【混迷の兵庫県知事選】過去最多の7人が“乱立” 最大会派・自民は候補者“一本化できず”右往左往 県議「斎藤前知事は知名度抜群」さらに擁護の声まで…

2024年10月12日 10:00
【混迷の兵庫県知事選】過去最多の7人が“乱立” 最大会派・自民は候補者“一本化できず”右往左往 県議「斎藤前知事は知名度抜群」さらに擁護の声まで…
不信任決議を受けた斎藤元彦前知事

 兵庫県の斎藤元彦前知事の失職に伴う県知事選挙(11月17日投開票)は、これまでに7人が出馬の表明や意向を示し、大混戦の様相を呈しています。候補者が乱立する中、鍵を握るのは県議会最大会派の「自民」の動きですが、候補者を一本化できず、県議団で一旦は「自主投票」が決まるなど、混乱に拍車がかかっています。

■連日街頭に立つ斎藤前知事「鋼のメンタルと言われるが…体重減った」

 県議会による「不信任決議」を受けて失職した9月30日以降、連日、県内各地で街頭に立って、市民らに「おはようございます」と挨拶を繰り返す斎藤元彦前知事(46)。

 10月8日、失職して以来、初めて県庁を訪れた斎藤氏は、知事として毎週会見していた場所で、「ある意味“失敗”した人だから、新たにチャレンジができる。即戦力としては私が適任だと思う」と再出馬への思いを語りました。

 さらに、記者から「心の支えはあったか?」と尋ねられた際、これまでに見せなかった表情を見せる場面もありました。

斎藤元彦氏「“鋼のメンタル”と言われますけど、すごく痩せてきてますし、だいぶ疲れていると思う。体重もそれなりには減ってますし、この半年間しんどいことが多かった。映画でいうと、最近『ロッキー』を見たりとかしました。ノックアウト寸前でも立ち上がるというところですよね」

■「兵庫県はかつてない危機」市長経験者や参院議員ら相次いで乱立

稲村和美氏「いま兵庫県はかつてない危機に陥っています。県政の混乱と停滞をこのままにしておくことはできないという一心で決意をいたしました」

 10月8日、県知事選に正式に出馬を表明した前尼崎市長の稲村和美氏(51)は、2010年に38歳で尼崎市長選に出馬して初当選。当時は女性市長としては全国最年少で、任期中は子育て支援や行財政改革などを行いました。

 3期を務め退任する際は「今後は政治活動は行わない」としていましたが、市民らによる政治団体からの要請を受け、無所属での立候補を決意したということです。

 さらに10日には、日本維新の会の参議院議員の清水貴之氏(50)が正式に出馬を表明しました。

 清水氏は次期衆院選で、日本維新の会の候補としてくら替えして兵庫8区から出馬する予定でしたが、10日の会見では、維新を離党して「無所属」で出馬し、政党に公認・推薦の要請は出さない意向を示しました。

清水貴之氏「維新がどうとかではなく、党で選挙する状況ではない。幅広くいろんな方の声を聞きながら、兵庫県を再生していくのが最初のミッション。斎藤さんと(自分は)力が違う、僕は県議団だけでなく職員・県民ともコミュニケーションをとりながら進める」

 11月17日に投開票される兵庫県知事選にはこの他にも、経済産業省出身の元官僚で兵庫県への出向の経験のある中村稔氏(62)、共産から推薦を受ける医師で無所属の大沢芳清氏(61)、元加西市長の中川暢三氏(68)が出馬を表明しています。

 さらに、明石市在住でレコード会社経営者の福本繁幸さん(58)も立候補する意向だということです。

 出馬を表明、または意向を示しているのは斎藤氏、稲村氏、清水氏を含めると7人で、兵庫県知事選の立候補者数は過去最多になる見通しです。

■「不信任」突き付けた県議に危機感「斎藤前知事は知名度抜群」

 まれに見る「大混戦」の様相を呈する中、取材を続ける神戸支局の神田貴央記者が解説します。

黒木千晶キャスター:取材を通じてどういった声が聞かれますか?

神田記者:斎藤前知事の疑惑の話はこれまでメディアが連日報道してきたので、一見すると、斎藤前知事にとってはかなり厳しい選挙戦になると見られてはいるんですが、県議の中には危機感が広がっています。

神田記者:その声の一つが、斎藤前知事はよくも悪くもメディアに露出したということで「知名度が抜群である」というもの。この知名度というのは票につながる可能性がありますので、勝つ可能性があるというような声もあります。

神田記者:そしてもう一つ、こちらも兵庫県議の話ですが、県議の中にも斎藤前知事を擁護する声があります。県議というのは、地元の支援者の方ともつながっていますので、票の動きに対しても少なからず影響を持っているんですが、議会で全会一致の「不信任決議」を出したにもかかわらず、斎藤前知事の一連の疑惑に対して「直接的な証拠がないじゃないか」というような声を上げている人もいるのです。

■最大会派の自民は候補者“一本化できず” 県議「今後どうなるか不透明」

黒木キャスター:選挙戦の鍵を握ってくるのはどういうところでしょうか?

神田記者:最大会派の自民党県議団は、3日に一度、自主投票を決めました。自民が候補者を絞り切れていないことで、混乱の拍車に拍車がかかるとみられています。最初は、自民も独自の候補を擁立すると主張してきました。そこで、現職の首長の方などに出馬を打診したんですが、いずれも断られてしまい、断念しました。

神田記者:その後、出馬の意向を表明している候補者を支援するという意見も出たんですけれども、稲村氏は自民党の方からすると、どちらかというとリベラル寄りの思想を持っているということで、理念が合わない。中村さんについては、元官僚で政策も自民党とは一致するが、知名度がまだ低くて勝てないのではないか。そして、日本維新の会の参院議員である清水さんも、「無所属なら支援する」という意見もあったんですが、最終的に反対の声が大きかったわけです。

神田記者:これだけ候補者が出ている中で、さらに候補者を立ててしまうと、票が割れてしまって、斎藤前知事が再選する可能性も出てしまうということで、3日の段階では一旦、自主投票が決まりました。その後、再び「候補者を一本化すべき」と意見が上がり、県連への報告には「引き続き候補者を探す」と追記するなど、自民内では今も右往左往しているのが現状で、自民の県議の一人は「今後どうなっていくか不透明だ」と話しています。

神田記者:自民党の動きが流動的な情勢の中、多くの票がどこに行くのか分からない状況になっています。各候補者らは自民を支持する有権者の票を確保しようと、保守層に寄った政策を出してくるという可能性があります。そうなると、いったい「争点」は何なのか。今回は前知事と議会の対立によって起きた側面があり、候補者それぞれの政策も似通ってしまうと、有権者にとっては、何を基準にして選べばいいか分からなくなってしまう可能性があります。

黒木キャスター:県民のための選挙であってほしいと思いますね。

※10月3日放送「かんさい情報ネットten.」での放送をもとに、その後の取材を踏まえて加筆しました。