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【衆院選】“和歌山のドン”VS“参院のドン”「裏金問題」巡り2人の元大臣の選挙区が“激戦”に!注目!和歌山2区&兵庫9区

2024年10月13日 8:00
【衆院選】“和歌山のドン”VS“参院のドン”「裏金問題」巡り2人の元大臣の選挙区が“激戦”に!注目!和歌山2区&兵庫9区
二階氏と世耕氏

■象とアリの戦い…!?新・和歌山2区は「保守分裂」に…“和歌山のドン” VS “参院のドン”

「“象とアリの戦い”ですが…アリにも五分の魂があります!」

 11日午後、和歌山県・御坊市-。今月27日に投開票される衆院選に、和歌山2区から自民党の公認で出馬する予定の二階伸康氏(46)が会見を開き、15日に公示される衆院選への意気込みを語りました。

 会見での記者からの質問は、“2つの焦点”に集中しました。まずは“和歌山のドン”と呼ばれる、父親の二階俊博・元自民党幹事長からの「世襲」について。そしてもう一つは、同じ和歌山県における“もう一人のドン”、今回「裏金問題」で自民党を離党し、衆議院にくら替えして「無所属」での立候補を表明した、世耕弘成・元参院幹事長についてです。まず、“政治家・二階俊博”については…

(自民党公認で出馬予定 二階伸康氏)
「(父の)政治はやっぱり憧れでした。この紀伊半島、高速道路一周というものを一つとってみても、それが実現していく、これは凄いもんだなぁということを常々思っておりました」

 世襲については、「世間でいろいろな意見があることは承知している」と述べたうえで、「世襲の立候補制限については法制度的な議論が重要になる。制度が決まれば、それに従う」と話しました。そして、世耕氏のくら替えでの出馬について問われると…

(二階伸康氏)「今まで自民党を支援下さった皆さまが選択を迫られ、(私と世耕氏の)ポスターが並んで貼られる。そういう景色を見ると申し訳ないという気持ちです。ただ、これは選挙というルールにのっとったものなので、対戦相手にどうこういえる立場にないが、党の公認候補として、一歩も引けない。」神妙な面持ちで、“戸惑う”胸の内を語りました。

 世耕氏の出馬によって、“保守分裂”の大激戦の様相を呈することとなった和歌山2区。“紀州の仁義なき戦い”の敵となった世耕氏との戦いについては、あくまで“挑戦者”としての姿勢を強調しました。

(二階伸康氏)「(世耕氏は)自民党の参議院の“ドン”で、『総理になる』と明言されているくらいのキャリアと経験をもたれている。私は新人候補で、比較すれば“象とアリの戦い”ですが、アリにも五分の魂があります。和歌山で生まれた私だからこそ、届けられる声、想いがある。」

 自らと世耕氏の政治家としてのキャリアを“アリと象”になぞらえ、敵の圧倒的な強さを認めつつ、“絶対に負けられない戦い”に挑む決意をアピールしました。

■「裏金問題」で自民党を離党“参院のドン”世耕元参院幹事長 俊博氏への評価は「足元にも及ばない大政治家」

 伸康氏の会見から遡ること、ちょうど1週間前ー。今月5日午後、世耕氏はこちらも地元の田辺市内で、参議院からくら替えしての出馬を正式に表明しました。冒頭、まず始めたのは、「裏金問題」で自民党を離党したことについての“謝罪”でした。

(無所属で出馬予定 世耕弘成・前自民党参院幹事長)「今回の選挙を通じて、和歌山2区の有権者の声を謙虚に受け止めたい。もう一度和歌山の為に、国の為に働かせていただきたい。(裏金問題については)誠実に真摯に、心から反省し謝罪したい。」

 世耕氏は、1998年の参院補欠選挙で初当選し、現在5期目。第二次安倍政権で官房副長官や経済産業大臣を歴任した後、参院幹事長に就任しました。参院安倍派のトップも務め、「参議院の実力者の一人」として影響力を持っていましたが、派閥の裏金問題をめぐり党から離党勧告を受け、4月に離党。その後は無所属で活動していました。会見で、世耕氏にとって二階前幹事長とはどんな存在か聞かれると…

(世耕氏)「私は二階先生としのぎを削った覚えはありません。常に敬意を払って接してきましたし、足元にも及ばない大政治家だと思っております。」

 一方で。その俊博氏の息子である、伸康氏との“ガチンコ対決”については…

(世耕氏)「政治経験がしっかり26年間ある私を選んでいただけるのか、“新人の方”を選ばれるのか。これはもう有権者の判断を仰ぐしかないと思っております。」

 政治家としてのキャリアと経験の差を強調しました。

■噂されていた世耕氏の衆院へのくら替え…「裏金問題」での離党で“決断”“保守分裂”の“仁義なき戦い”が勃発

 「10増10減」の選挙区調整によって、前回の衆院選から“1減”となった和歌山選挙区。長年にわたり、二階元幹事長が守ってきた「旧和歌山3区」は、和歌山市など北部の3市を除いた全市町村を選挙区とする「新・和歌山2区」に再編されました。

 もともと、世耕氏の参議院から衆議院へのくら替え出馬は、地元では以前から噂されていましたが、和歌山における衆議院は、二階氏の“牙城”であり、“聖域”。世耕氏自らも、参議院の党幹事長という立場ということもあり、表向きは衆院へのくら替えについては否定し続けてきました。

 しかし今回、自らの裏金問題によって党を離れ、二階氏もまた裏金問題によって政界を引退。奇しくも、“裏金問題”によってタブーがなくなった世耕氏は、衆院へのくら替えを“決断”しました。一方、自民党和歌山県連は、世耕氏の会見に合わせて県連としての緊急の談話を発表。

 「(世耕氏が)党の公認候補に対抗して立候補することは重大な党規違反」と指摘した上で、県連として森山裕・自民党幹事長に問い合わせを行い、「ルールに従えば(仮に世耕氏が当選しても)復党を承認することはない」との説明を受けたことを併記し、世耕氏への“嫌悪感”を露わにしました。

(和歌山県連 中村裕一幹事長)「(公認候補として)誰が一番良いのかを考えた上で(伸康氏を)選んできた。(世耕氏の出馬表明は)残念ですし、みんな嫌だと思っていると思います」

 そして、9日の解散当日。衆議院の本会議場から出てきた二階氏は、取材でひしめき合う記者達をにらみつけ…一言。

(二階俊博・自民党前幹事長)「通路もクソもない!やかましいぞ!!ほんとに。」

 “和歌山のドン”と“参議院のドン”。勃発した「紀州の仁義なき戦い」。地元の有権者の反応は…

(和歌山2区の有権者の女性)「楽しみですね。商店街や喫茶店で知人と会うと“ところであなたは(投票)どうするの?” という話題ばかり。これまでは迷わず二階さんだった人も…今回はどうするのかしら。当日に誰に票を入れるかは本当にわからない。私もじっくり話を聞いて、最後の最後まで悩むんじゃないかな…」

 一方で、こんな“冷めた”見方も…

(和歌山2区の有権者の男性)「伸康さんは裏金問題で引退した二階さんの息子だし、世耕さんも裏金問題で離党したので…正直、どっちもどっち、ですよね。世耕さんも世襲ですしね。」

 和歌山2区には、2人のほか、共産党の楠本文郎氏(70)、立憲民主党の新古祐子氏(52)、諸派の高橋秀彰氏(42)が立候補を予定しています。

■「裏金問題」で勃発 “激戦”②兵庫9区 西村元経産大臣 VS 立憲新人 元大臣のたすきには「自民党」の文字はなく…

 そして関西でもう一つ、自民党の“裏金問題”で、かつてない注目を集めている選挙区があります。兵庫県の明石市と淡路島の自治体からなる「兵庫9区」です。

「おはようございます」「おはようございます。いってらっしゃい。」

 早朝からJR・明石駅前で、通勤中のサラリーマンや地元住民に対し、深々とお辞儀を下げていたのは、西村康稔・元経産大臣(61)です。のぼりやたすきには、所属する「自民党」の文字はありません。

(「無所属」で出馬予定 西村康稔元経産相)「おはようございます。原点に戻ってやります。初心に戻ってやります」

 旧安倍派の幹部の一人だった西村氏。前回の衆院選では、得票数は14万票を超え、2位の候補に3倍以上の圧倒的な差をつけ、7回目の当選を果たしました。しかし、“裏金問題”をめぐり、キックバック再開をめぐる協議に参加していたとして、党から「党員資格停止1年」の処分を受けました。衆院選は、党からは「非公認」となり、無所属での出馬に。比例復活はないため、「議員バッジ」を賭けた“絶対に負けられない戦い”です。

(西村元経産相 10日会見)「(党員資格停止の)処分を受ける中で、地道に謙虚に。地元の有権者の皆さま方にも、説明を重ねてきました。」

 解散当日の9日朝、石破総理は土壇場で、「裏金問題」に関与した議員について、「非公認」とすることを決めました。

 ところが、連立を組む公明党は同日、西村氏に対し、公明党として「推薦」を出すと発表。前日には石井代表が会見で「(自民党から)公認されないということは、推薦の要請もないと思う。(公明党として)推薦することにはならない」と話していたにも関わらず…わずか1日での“朝令暮改”となりました。「無所属」で出馬する8回目の選挙(比例復活なし)。“絶対に負けられない戦い”への意気込みは…

Q.逆風は感じる?
(西村元経産相)「丁寧に説明していきたいと思います。原点に戻ってしっかりやります。」
Q.選挙中、不記載問題はどんな形で説明するのか?
(西村元経産相)「しっかりと、丁寧に説明したいと思います。」

■“激戦”兵庫9区 元大臣に挑む立憲新人 泉房穂前市長がバックアップか “野党連携”は…

 そんな“元大臣”に今回、挑戦状を叩きつけたのは、立憲民主党の新人候補です。

(立憲民主党から出馬予定 橋本 慧悟氏)「裏金政治に“イエス”か“ノー”か?裏金政治を許すのか?裏金政治を許さないのか?」

 立憲が擁立する、新人の橋本慧悟氏(35)。去年の兵庫県議会議員選挙で、前明石市長の泉房穂氏が設立した政治団体から出馬し初当選。それからわずか1年半で、初の国政選挙へと打って出ました。選挙戦のテーマとして全面的に訴えるのは、もちろん「政治とカネ」の問題です。

(橋本氏)「私たち国民の多くは裏金を作っていいよと、裏金作りに励んでねと思っているのでしょうか?そんなことはありません!裏金づくりに励むような政治を任せておくことはできません!」

 相手は今回は「無所属」。とはいえ、2009年には自民党総裁選にも出馬し、兵庫9区で圧倒的な強さを誇ってきた元大臣です。それでも、橋本氏は毎日の街頭活動を通じて、戦いへの手ごたえを感じているといいます。

(街の人)「相手(西村氏)が強力やんか~」
(橋本氏)「そうなんですよ~」
(街の人)「(西村氏は)公認がなくても強いから。絶対、西村には負けたらあかんからな!」
(橋本氏)「なんとか頑張ります!」

(橋本氏)「なぜ12人だけが非公認になっているのか。民間で考えると脱法行為、違法行為なので。裏金づくりをしている人が、何十万円、何百万円という金額の基準で処分されるのかどうか、公認されのるかどうかのが変わるというのはそもそもおかしい」

 今回、兵庫9区では、共産・維新からも2人が立候補する予定ですが、野党候補が複数立候補することで、“反自民票”が分散してしまう可能性も…

(共産党から出馬予定 高田良信氏)「裏金政治、本当に深刻です!」

 共産から出馬予定の高田良信氏。自民党の“裏金問題”をターゲットにした選挙戦は、立憲と同じですが…

(高田氏)「立憲の皆さんも私たちとほぼ同じ文言を言っているので、 (政策的にも) 一緒にやろうというのであれば潔く退きます。その方がこの選挙区の民にとっては良いと思う。維新のためには…退けませんね」

 立憲との選挙協力については「政策が一致すれば」と前向きな姿勢を示す一方で、維新については「自民の補完勢力だ」としました。一方、維新から出馬予定の加古貴一郎氏も…

(日本維新の会から出馬予定 加古貴一郎氏)「たとえば私が共産党さんと何か手を組め、と言われると、それはちょっとご遠慮したい。政策だとか考え方とは(共産党とは)かなり違いますので。“野党一本化”みたいな話は、兵庫9区に関しては全くない。今まで通り活動します。」

 こちらも、共産党を含めた“共闘”には後ろ向き。超短期決戦となった今回の衆院選。野党共闘の難しさも浮き彫りになっています。

■「裏金問題」で…2人の“元大臣”はどうなる?ドンvsドン“ 仁義なき戦い”の勝者は?27日に投開票

 「裏金問題」をめぐり“岐路”に立たされる2人の「元大臣」。負ければ即バッジを外さなければならない“絶対に負けられない”激戦の行方はー。衆院選は、15日に公示され、27日に投開票されます。