【独自解説】万博「開幕前に下見ができない…」子どもたちの“遠足” 先生たちからは不安の声 移動手段、熱中症対策、ガス爆発 不安を解消して多くの人が訪れるようにするためには?
大阪府が来年開幕する大阪・関西万博に小中学生や高校生などを無料で招待する事業を進める中、7月22日には万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)が学校の先生に向けて説明会を開きました。しかし、先生たちからは移動手段や熱中症対策、メタンガスによる爆発事故など不安が残る点が指摘されました。なかでも一番不安視されたのは「万博が開幕してからでしか下見が出来ないこと」でした。説明会に参加した先生からは「説明会の内容だけでは、保護者に子どもの安全について説明するのが難しい。これなら、協会が保護者の方々に直接、説明してほしい」という声まで聞かれました。不安を解消して、多くの人が訪れるためにはどうするべきなのでしょうか、徹底解説します。
Q.今回の説明会を受けて、先生からも不安の声が上がっているようですね?
(読売テレビ・平田博一記者)
「大阪府では、約1900ある学校のうちで、約8割が学校単位で校外学習とか遠足のような形で万博を訪れたいと回答しているんですが、現場の先生に話を聞いてみますと、『会場に行くための移動手段って本当に確保できているんですか』とか『今年も暑いですが、熱中症の対策って大丈夫ですか』とか、メタンガスによる爆発事故というのもありましたけれども、『安全面大丈夫なんですか』という様々な不安の声が多く聞かれているのが現状かと思います」
「中でも皆さん口を揃えておっしゃっているのが、『下見の重要性』です。ただ、万博協会は開幕前までは工事をしているということで、『開幕する4月13日以降しか下見に行けない』としているんですが、これは学校でいいますと、4月はまさにそのクラス・学年が変わる時期なんです。『その忙しい時期になかなか下見に行くことはできません』というような声が聞こえています。また、多くの先生に聞いてみますと、一般的な遠足とか校外学習というのは2か月とか3か月ぐらい少し余裕を持って行うことが多いと聞いておりますので、『4月の段階では厳しい』という声がよく聞かれました」
Q.説明会では、どんな説明がなされたんですか?
(平田記者)
「説明会で配られた資料は、75ページにも及びます。この膨大な資料を配って行った説明会ですが、結果、よく聞かれたのが『結局、下見をしないとわからない』ということです。どういうことかといいますと、校外学習などで一つ大事なのが、『昼食をとる場所を確保できるのか』ということがあるのですが、説明会の資料で『大きく3か所、昼食を取れる休憩場所ができます』ということは示されたんですが、例えば『どうやってその休憩場所まで行くのかという導線』などは実際に行かないと分からない。対象も小学生から高校生までですので、『ちゃんとここまでたどり着けるのか』、『距離感はどのくらいなのか』というようなところは、やはり行ってみないとわからないということです。少し皮肉な話なんですが、この説明会でわかったのが、この昼食をとる休憩場所の1つがまさに今回メタンガスの爆発事故が起きたエリアにあるということで、『むしろ、ちょっと不安が募りました』というような声も実際ありました」
「他にも大事なポイントがありまして、熱中症対策です。今回、救護施設の数や場所というのは明記されたのですが、児童・生徒が個別に班ごとの行動を取るケースも想定されますが、『離れた場所で熱中症になったという連絡があったときに適切に誘導できるのか。救護施設まで児童・生徒を安全に速やかに連れて行くことができるのか』というようなことは、実際に行かないとわからないという声や、貸切バスの乗り降り口から入場ゲートまで約15分あることがわかったのですが、例えば小学生が1クラス30人いるという中で、『人が多い中で本当に並んで連れて行けるのか』、『暑い中で大丈夫なのか』というような声も聞かれました。また、トイレです。中には介助が必要な子どももいると思いますが、『介助するときに必要な広さが本当に確保できているのか』など、こうしたことは、『やはり実際に行かないとわからない』という声がよく聞かれました」
Q.上げだしたら心配事はきりがないとは思いますが、万博協会の副会長でもある大阪府の吉村知事も『下見を開幕前にもするような配慮が必要だ』と会見でコメントしていました。下見が改めて設けられるという可能性はないんですか?
(平田記者)
「今まさに、現場からかなりの数の『下見をちゃんとさせてほしい』という声があがっています。また、先ほど申し上げた工事との関係です。工事をしながらも安全に下見ができるのかというのは、今後検討材料になってくるんだろうと思います。また、先生の中で大きな役割があります。それが、“保護者対応”ということで、例えば、先生たちのところには保護者から『メタンガスは大丈夫なんですか』という連絡が来ることもあるということです。そうしたときに自分たちもまだ状況がよくわからないので保護者にちゃんと説明ができない。『こんな状態だったら万博協会がちゃんと保護者の皆さんに説明してください』という声が上がるぐらい、不安を抱えている人が多いと感じました。ただ、大阪府内でも約8割の学校が参加したいと言っています。万博というのは、子どもたちに未来の技術を見せるというのが一つ大きな役割でもあると思いますので、子どもたちが安全に会場に行けるように、開幕残り9か月を切っているので、下見を含めた安全対策を、具体的にそして早く先生たちに提示をする必要があると感じています」
(「かんさい情報ネットten.」2024年7月23日放送)