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大型荷物預けて観光…京都で『手ぶら観光バス』実証運行開始 市バスの混雑緩和へ 背景に運転手不足も

2024年10月1日 18:23
大型荷物預けて観光…京都で『手ぶら観光バス』実証運行開始 市バスの混雑緩和へ 背景に運転手不足も

 秋の本格的な観光シーズンを前に、オーバーツーリズム(観光公害)に悩む京都市では、1日から混雑緩和策の一環として、ある実証実験が始まりました。果たして、その効果とは?

 今年も早いものでもう10月。
 秋の観光シーズンには、世界各国から多くの観光客が集まる京都ですが、混雑や交通渋滞などオーバーツーリズムへの懸念が高まっています。

 京都市民
「ほとんど外国人の方ですね。今から紅葉シーズンが始まるので、そうなると(バスに)乗らない選択肢をしてしまう」

 そんな中、混雑を緩和するため、京都市で新たな実証実験がスタート!

 京都市観光協会の担当者
「身軽に移動してもらう方が快適に観光できると思います。手ぶら観光してもらいたい」

 1日から京都市内で実証運行が始まったのが、「HANDS FREE BUS(ハンズフリーバス)」。
 このバスの最大の特徴が…。

 藤枝望音 記者
「大型のスーツケースをトランクに預けて、バスに乗り込むことができます」

 通常の市バスではできない、スーツケースなどの大型荷物を預けることができるのです。

 観光客を対象としたこのバスは、京都駅を出発し、6つの停留所を巡回。ホテルの近くに停留所を置くことで、宿泊先に荷物を預け、手ぶら・ハンズフリーで京都観光をしてもらうことが狙いです。

 運行の背景にあるのが、市バスなどの公共交通機関の混雑です。

 京都市では、スーツケースなど大きな荷物を持った観光客による車内の混雑で、地元の人たちが乗車できないことなどが慢性的な課題となっています。

 京都市観光協会 観光活用課長の藤森稔人さん
「大きな荷物を持っている方は観光客が多いので、観光客の方にはこのバスを利用 していただいたうえで、市民の方々と差別化し、市バスの混雑緩和に寄与するかもしれませんので、市民の方々と観光の方々を分ける意図がある」

 しかし、実証実験の初日のこの日も、通常の市バスを待つ列には大型荷物を持つ観光客の姿が…。

 一方で、ハンズフリーバスはというと…。

 藤枝記者
「午後1時45分です。ハンズフリーバスの第5便が京都駅を出発しますが、一般の利用者はまだ現れていません」

 午後2時までに利用者は0(ゼロ)。多くの観光客に利用してもらうには、まだまだ時間がかかりそうです。

 また、京都市バスでは深刻な運転手不足も。
 京都市は先週、「非常事態」を宣言したほどですが、全国各地で問題となるバス運転手不足について、スタジオで解説します。

◇◇◇

 (中谷しのぶキャスター)
 バスの運転手不足ですが、京都に限った話ではなく、全国的にも深刻になっています。2030年には3.6万人が不足するのではと言われています。

 近畿でも、路線を廃止するバス会社も出てきています。
去年11月に阪急バスは4路線を廃止、去年12月に京阪バスは7路線を廃止、去年12月に金剛バスは15路線を廃止。

 そして、1日表明されたのが、来年3月に大阪府交野市で路線バスの一部廃止が検討されているということです。交野市では市が代替バスの運行を検討しているということです。 

 バスの運転手さんに必要な「大型二種免許」の保有者数を見ますと、30歳以下の割合が4.3%と、やはり少ないですよね。50代、60代がほとんどを占めていて、毎年約2万人が減ってきているということです。

 京都市の路線バスを見ますと、採用で7月下旬に大型二種免許を所有していない人、一から運転手さんを育てますよという枠組みで70人を募集したのですが、実際の応募者は47人にとどまったということです。

 なぜこういうことが起きているのか。
 こちらも全国的な理由ですが、専門家(立命館大学の近藤宏一教授)に話を伺うと、早朝深夜にわたるシフト制で不規則、賃金に見合わない労働になってしまっている。
 最近は、IC決済に戸惑うお客さんや外国人観光客との対話など、乗客の対応も複雑化していて、バスの運転手に求められている対応が増えてきているということです。

 複雑化というと、例えば急ブレーキを踏んで乗客が車内で転倒してケガをしたり、トラブルが起きるなど、車内の事故は運転手の処分対象になるということなんです。
 以前はトラック運転手が高齢になると、力作業のないバス運転手に転職していたが、今はバスの対応の方が大変で、バスの運転手からトラックの運転手になるという逆転現象も起きているということです。こうなると、運転手のなり手が減る一方になってしまいますね。

(高岡達之 特別解説委員)
 お客さんも「乗ってやっている」ではなくて、意識を変えてくださったらと思いますが、人間相手だから難しい点もあります。
 私も日本中を回って見ていると、やはり地方の方がどんどん工夫を広げています。交通系のICカード、キャッシュレスは難しいと言いますが、逆に「交通系」しかもう使いません、というようにしているところが九州にあります。

 山奥に行くのであれば、バスの前が開いてそのまま中に乗っていくという構造のバスは、外国人はなかなか乗らないと思います。
 外国の空港に行きますと、車体の真ん中のドアがドーンと開いて、その両サイドにスーツケースをドカッと入れるようなバスとかですね。ああいうものに、国から補助金を出して、外国人はそれだと本国で乗ってるのと同じだから、自分でスーツケースを乗せますよ。外国の方に使ってもらうのであれば、その方たちのライフスタイルに合わせた設計をするのがいいと思います。
 「金がかかる」って言ってたら一歩も進まないから、こういうこともやってみたらいかがでしょうか。

(中谷キャスター)
 専門家の方もこのように指摘しています。
 今まで朝夕の通勤ラッシュを柱に、運賃だけで採算を取るという運営でやってきた。これは日本は、世界でも特殊な事情で運営をしていた。利用者も減っている中で、今後は国の税金、補助も全国的に必要なのではないか、と指摘されています。