都で全国初「カスハラ防止条例」 企業も対策…AIで疑似体験・研修プログラム販売も
全国初となるカスハラ防止条例が、東京都議会で可決・成立しました。「カスハラ対策」には様々な企業も動いていて、研修を行ったり、カスハラを疑似体験できるツールを作る企業も出てきています。
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客などからの暴言などのハラスメント行為、通称“カスハラ”。4日、東京都内で話を聞いてみました。イベントなどの映像関係の仕事をしているという男性は――
映像関係(30代)
「お客さんには『修正2回まで』と伝えさせていただいた。お客さんの方から修正が40か所以上いってきたことがあって、やっぱり変えてみたら違うんでやっぱり戻してくださいと」
契約とは違う依頼を何度もされたといいます。
映像関係(30代)
「やめさせてくれぐらいの気持ちではありました」
こういったカスハラを防ぐため、東京都では全国で初めてカスハラへの防止条例が成立(来年4月1日施行)。しかし、努力義務としていて、違反しても罰則は設けていません。
都はカスハラの具体的な行為を示すガイドラインを年内に公表予定。いまのところ、次のカスハラの代表的な行為が案として上がっています。
・長時間の居座りや電話等で就業者を拘束すること
・謝罪の手段として土下座を強要すること
企業にも広がっています。大手コンビニエンスストアでもカスハラ対策が行われていました。
ファミリーマートでは、店員に対して「この野郎!」「おい!ふざけんな!」などイラストが描かれたポスターが張られていました。悪質なハラスメントは罪に問われる可能性があると注意を呼びかけています。今月から順次、全国の店舗に掲示しています。
“カスハラ被害”を受けた人の多くが悩んでいたのが、客とのやりとりです。
接客業の経験あり(30代)
「例えばなんですけど、商品タダにしろとか、あとは土下座しろとか、あとは家に届けに来いとか、そういった理不尽なことがたくさん見たり味わったりしました」
アパレルやメガネ店で店長をしていた時にカスハラ被害にあったといいます。
接客業の経験あり(30代)
「僕が店長やっている時にスタッフの男性が受けたのを見たのが、『お前は犯罪者みたいな顔してるな』という罵声を浴びせられたことがある。ただこちらとしては何も手出しはできない現状。もう我慢するしかない」
理不尽な客のカスハラに対し謝罪するしかなかったといいます。
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こういった対策の1つとして、富士通とカスハラ研究を行っている東洋大学の桐生教授が共同開発したのが、人工知能(AI)にカスハラを学ばせた体験AIです。
設定されたのは、ドラッグストアの店員と客。AIがカスハラ客です。過去に接客のアルバイトを経験したことがある日本テレビスタッフが体験しました。
やりとりが終わると…
「スコアは60点と採点されました。対応内容としては、き然とした態度をとっておりよかったと思います」
会話の内容や心拍数などからストレスをどれだけ感じたのかなどAIが判定。事前に体験することで、適切な対応の仕方を学べてメンタルを守ることが狙いです。今年度中に実証実験を始め、2025年度の製品化を目指すということです。
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一方で接客の機会が多い航空業界。ANAグループの会社がカスハラ対策を学べる研修プログラムの販売を来月からスタートします。
講師となるのは、空港で客対応や本社でのクレーム対応などを務めた社員。主に組織の体制づくりについて研修をしていくということです。
ANAビジネスソリューション研修事業部 長直子副部長
「やはり組織が体制をつくって、しっかりと対峙(たいじ)していくことが必要」
対策することで、自覚なくカスハラをしている人が気づくきっかけにもなるかもしれません。