不妊治療の「着床前診断」のミスで流産したと訴え 夫婦がクリニック側を提訴した裁判が和解 大阪地裁
大阪市内のクリニックで不妊治療を受けていた夫婦が、「着床前診断」のミスで流産したなどとしてクリニック側に賠償を求め訴えていた裁判で、両者の間で和解が成立したことが分かりました。和解は26日付。
訴状などによりますと、横浜市に住む40代の夫婦は2019年、大阪市内にある不妊治療専門のクリニックに通院。夫婦は体外受精による出産を目指し、受精卵の染色体に異常がないかを調べる「着床前診断」を行った際、医師が誤って異常がある受精卵を移植し、妊娠したものの流産したということです。夫婦は2023年6月、クリニックに対し治療費や慰謝料など1000万円あまりの賠償を求める訴えを大阪地裁に起こしました。
これに対し、クリニック側は「医師は丁寧な説明を繰り返し行うなど、事実関係の調査・報告、謝罪、補償の申し入れ、原告らの意向を最大限考慮した示談条件の提示を行い、誠実に対応した。対応に落ち度はなかった」として争う姿勢を示し、大阪地裁では非公開の協議が続いていました。
夫婦側の代理人である平井健太郎弁護士によりますと、26日付で両者の間で和解が成立したことが分かりました。和解の条件として、クリニック側がミスを認めて夫婦に謝罪し、再発防止を約束した上で、和解金を支払うということです。
原告の夫婦は代理人を通じて、「和解という形でようやく一区切りがつきました。しかしながら、流産という経験で負った心身の傷はこの先も癒えることは決してありません。不妊治療はゴールの見えない治療で、ただでさえ心身の負担がとても大きな治療です。クリニック及び当該医師らには、どうか一人一人の患者と真摯に向き合っていただき、再発防止に取り組んでいただきたいと切に願っております」としています。
一方、クリニック側の代理人は「原告側が提訴の際に行った記者会見の後、裁判が開かれない時期が相当長く負担も大きかった。これ以上時間をかけて裁判を続けるべきかと考えた結果、ドクターもスタッフも日々の仕事に安心して臨めるように、また患者の不安を取り除くためにも、早期に円満に和解することを選んだ。再発防止策の整備も完了している」とコメントしています。