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【なぜ?】アスファルトと砂利道の狭間で揺れる京都『哲学の道』 整備検討で住民賛否「どこでもある道になる」「生態系を壊す」一方で「小石で窓が割れた」「車イスで通りにくい」の声も…

2024年11月12日 8:00
【なぜ?】アスファルトと砂利道の狭間で揺れる京都『哲学の道』 整備検討で住民賛否「どこでもある道になる」「生態系を壊す」一方で「小石で窓が割れた」「車イスで通りにくい」の声も…
『哲学の道』整備を巡り住民賛否

 日本が誇る京都屈指の散策路『哲学の道』が今、揺れています。整備を巡り、住民からは戸惑いと賛否の声が。『ミヤネ屋』取材班が、歴史ある道の未来予想図を探りました。

■京大教授・西田幾多郎が愛した『哲学の道』に思わぬ事態発生 「再び“アスファルト化工事”が始まるのでは…」

 人は人 吾はわれ也 とにかくに 吾行く道を 吾は行くなり ―西田幾多郎―

(『読売テレビ』西山耕平ディレクター)
「明治から大正へ時代が移る1900年代初頭、日本の哲学界の巨人・西田幾多郎が愛し、思索に耽りながら散策した小径が、この『哲学の道』です」

(西山ディレクター)
「それから100年以上の時が経った令和の今、歴史ある小径の保存を巡って住民同士の意見が割れるという、思わぬ事態が起きています」

 『哲学の道』は琵琶湖疎水に沿った約2kmの道で、哲学者・西田幾太郎らが思想に耽って歩いたことから、1972年に住民が命名しました。『日本の道100選』でも紹介され、ホタルや桜の名所としても知られています。

 実は、1985年頃と1996年度の2度、京都市が全面アスファルト化を検討し、舗装工事が行われました。しかし、工事の途中で地域住民からの強い反対があり、砂利道などの未舗装区間が残ったままになっています。

 そんな中、アスファルトの経年劣化などもあり、道全体の景観・安全などを見直す案が浮上。市民公募委員・地域住民代表・大学教授らを構成メンバーとして、2024年10月に京都市で『第1回デザイン検討会議』が開催されました。

 検討対象区域は、銀閣寺橋から若王子橋までの全長約1.5km。そして、この検討会議の開催に、地元住民たちは「再び“アスファルト化工事”が始まるのでは」と色めき立ったのです。

■「アスファルト化ありがたい」「やっぱり『哲学の道』は土の道」住人の意見が真っ二つ

 住人に話を聞くと―。

(賛成)
「アスファルト、ありがたいと思いました」

 『哲学の道』の沿道で土産物店を営む女性は、“砂利道が生む被害”を訴えます。

(賛成)
「これ、ほら、割れているでしょ」

 沿道に面した引き戸のガラスは、歩行者が飛ばした小石で割れ…。

(賛成)
「車も、こんなことになるんですよ」

 車庫に入れた高級車は、見るも無残…砂埃にまみれています。

 さらに、雨が降れば、悲惨なことになるといいます。

(賛成)
「風情って何かわからないけど、土砂降りの後に来られたら、風情も何もあったもんじゃないですよ。水溜まりがいっぱいあって…」

 一方、同じく沿道に住む女性たちは、揃ってアスファルト化には反対だといいます。

(反対)
「とても信じられないと思って、びっくりしまして」
「住んでいる者はみんな、この木も空も何もかも含めた全体が、トータルで『哲学の道』って捉えているんです」
「コンクリートにしたら、どこでもある道になるので。やっぱり『哲学の道』は土の道。それを次世代に代々と繋がっていきたいという思いが、すごくあります」

■賛成派・反対派の理由も様々…京都市への直撃取材でわかった未来予想図

(西山ディレクター)
「私は今、アスファルト部分と未舗装部分がちょうど切り替わる場所にいます。私が立っている砂利道は、ザクザクという音が『散歩道として趣を感じられる』という人も多いと思います。少し北に移動すると、アスファルト化されて、色が変わっているのがわかります。この道を巡って、京都市が“一括してデザインを考えよう”という会議を開いたところ、住人からさまざまな意見が出ているのが現状です」

(西山ディレクター)
「私は、実際に両方の意見を聞きました。『砂利道を残してほしい』と言っていた方の理由の多くが、桜でした」

(西山ディレクター)
「『哲学の道』は桜が有名で、桜の木が並んでいます。住人によると、木の根っこが地面に水平に横に伸びているということです。だから、舗装となると、『桜の木の根っこを切ることになり、生態系を壊すのではないか』と心配する声や、『風情ある“土の姿”をずっと残してほしい』という意見がありました」

(西山ディレクター)
「一方で、先ほどから自転車に乗って観光している人を見かけますが、砂利道だと石が飛んで、沿道の家のガラスが割れることもあります。自転車は、最近非常に増えてきたそうです。また、水溜まりができて車椅子が通りにくいなど、実際に被害が出ているので、『早く舗装してほしい』という人もいます。様々な意見が出ています」

 そこで取材班は、『哲学の道』を管理する京都市を直撃取材しました。今後の方針について、京都市・土木管理課によると、「『砂利道を残す』『全面舗装』のどちらかではなく、それぞれの良いところを残すなど、折衷案を考えたい。『アスファルト化する』という案は提示していない」ということです。

 保全に取り組む団体『哲学の道 保勝会』田村真和会長は、「検討会では、桜への影響を重視してほしい。生活している人の苦しい声も聞くので、『土の道』を維持しながら、埃が立たない結論になってほしい」と話していました。

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年11月1日放送)

最終更新日:2024年11月12日 8:00