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小顔にデカ目に肌補正…“盛る”写真はもう古い? 「リアルを残したい」流行のワケ

2023年7月11日 22:25
小顔にデカ目に肌補正…“盛る”写真はもう古い? 「リアルを残したい」流行のワケ
“ありのまま”の撮影を楽しむ2人
目を大きくしたり、輪郭の修正や肌の補正をしたりするなど、さまざまな加工機能で写真を“盛る”のが若者の間では主流でしたが、最近はあえて“盛らない”写真を撮影することが流行しています。

人気を集めている代表例としてあげられるのが、加工や補正が施されない写真が撮影できる『セルフ写真館』。先月発表された『JC・JK流行語大賞2023上半期』のバショ部門では2位にランクインしました。

■『セルフ写真館』が人気のワケは

カメラマンがいない空間で、自分たちでシャッターを切りながら撮影をする『セルフ写真館』がなぜ流行しているのか? 東京・渋谷区のセルフ写真館『GENICBOOTH』で利用者を取材すると「かしこまらずに笑い合ってる状態や、リアルな感じが収められるのでプリクラよりも自由度が高くていい」、「好きなだけ好きなタイミングで撮れるし、シャッターを連続で押しておけば瞬間の自然な写真を撮れる」などの魅力を明かしました。飾らないありのままの表情を写せることが人気の理由の1つとなっています。

また、これまでの“盛る”を重視してきた時代からの反動も影響されているそうで「学生時代は加工される写真ばかり撮っていたけど、今はリアルを残したい。数年後振り返った時にありのままが残っててほしい」、「加工機能の進化に追いついていけないし、顔が変わりすぎてて恥ずかしい」などの声もありました。

■振り返ると素顔の写真がない…「時代への反省が起点に」

セルフ写真館の他にも“盛らないプリントシール機”や“証明写真機”など、盛ることを目的としない写真を撮影する人が増加しているといいます。証明写真機Ki-Re-iを展開するDNPフォトイメージングジャパン企画本部の林典彦部長は「証明写真機自体は昭和時代からあるサービス。若年層にとっては”逆に”新しいものとして捉えていただけているのでは」と分析しています。

林さんによると、1995年にプリントシール機が登場し、2000年には美白加工、2006年にはデカ目ブームなどが生まれ、2016年頃に“盛りの時代”に至ったといいます。最近の“盛らない”需要については「コロナ禍でZ世代を中心に“盛り疲れ”が発生。背景には高校や大学卒業後、友人との懐かしい写真を見ても“盛り写真”ばかりで素顔写真がなく、記憶を遡ることができない、思い出の検索ができない、という反省が起点になっているようです」と解説。証明写真機で撮ることへの魅力は「輪郭を著しく変える、目を大きくするなどの加工ができないことが価値で、“ありのままの自分への回帰”にある」と話しました。

■価値がシフト「コトを楽しみたいニーズに」

また、他に流行した理由として、盛れた写真という“モノ”より、ありのままを撮影する体験(“コト”)への価値シフトが考えられるといいます。「Z世代は価格(コストパフォーマンス)と時間(タイムパフォーマンス)を重視する、背伸びをしない消費が定着しつつあると思われます。節約をしつつ、家族や友人との撮影体験を楽しみたいニーズに移行してきていると思われます」と分析しました。