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ドラマで話題の「偽装強盗」…現実では「重い罪」も 元捜査1課刑事が解説

2024年5月3日 21:11
ドラマで話題の「偽装強盗」…現実では「重い罪」も 元捜査1課刑事が解説
シャッター商店街のケーキ店で、黒い目出し帽姿の3人組の男がバールを手に、金を脅し取る。店主に包丁を突きつけ、その妻はロープで拘束。店主の脇腹には包丁が刺さり、白衣には血がにじむ。男の1人は、さらに厨房まで侵入し、ミキサーやオーブンなどを叩いて破壊、3人組は奪った現金を手に逃走していった。

白昼堂々と起きた凶悪な強盗事件…かと思いきや、実はこれ、店主もグルになった「偽装強盗」だった…。

ドラマ「街並み照らすヤツら」(日本テレビ系・土曜夜10時)第1話で登場したこのシーン、そのコミカルな演技が話題となりましたが、もし実際に「偽装強盗」をしたら、犯人はどんな罪に問われるのでしょうか。

ドラマで警察監修を担当する元捜査1課刑事・佐々木成三さんに解説してもらいました。

※以下、一部ネタバレも含みます※

■被害ゼロのはずの「偽装強盗」でも…偽計業務妨害罪に

「偽装強盗」は、文字通り強盗被害があったことを装うことです。

ドラマ「街並み照らすヤツら」でも、経営に苦しむケーキ店店主の竹野正義(森本慎太郎SixTONES)が、荒木(浜野謙太)、シュン(曽田陵介)、マサキ(萩原護)と事前に打ち合わせをした上で、店のレジや財布にあった現金を渡したり、厨房機器を破壊させたりするなど、強盗事件が起きたかのようにみせかけました。

となると、「実際の被害」がないので、罪に問われることはないのでしょうか。

「110番通報をして、警察が被害を確認し、強盗事件として認定されないといけないので、ドラマでも110番通報をしています。まず、ウソの110番通報をした時点で軽犯罪法第1条16号違反(虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者)になります。そしてその結果、刑事が聞き込みをしたり、現場検証や防犯カメラの解析をしたりしましたが、こうした無駄な捜査をさせれば、警察の業務を妨害したとして偽計業務妨害罪が適用される可能性があります」(元捜査1課刑事・佐々木成三さん)   

偽計業務妨害罪の罰則は「3年以下の懲役、または50万円以下の罰金」です。

「偽装強盗」以外でも、たとえば、SNSに「駅に爆弾を仕掛けた」などとウソを書き込み、電車が止まるなどした場合も「偽計業務妨害」にあたる可能性があります。

■「偽装強盗」をする背景・事情で…もっと「重い罪」も

ただ、ドラマのケースが実際にあれば、さらに重い罪に問われる可能性があるといいます。それは「詐欺罪」です。

ケーキ店店主の正義は、経営が苦しく、壊れたオーブンやミキサーの買い替えができないことから、友人の荒木の提案に乗る形で「偽装強盗」に手をだしました。目的は、被害を装うことで、加入していた高額な損害保険金を得ることでした。そのため、わざわざオーブンやミキサーだけをバールで叩いて壊すよう、打ち合わせもしていました。

「強盗被害を装って保険金をだまし取る、このドラマのケースは、人を欺いて財物を交付させるという詐欺罪の要件そのものです。嘘の事件で保険金を申請した時点で、保険金詐欺が認められ、たとえ結果的に保険金が下りなかったとしても詐欺未遂罪になります」(元捜査1課刑事・佐々木成三さん)
 
詐欺罪も詐欺未遂罪も罰則は同じ「10年以下の懲役」、罰金刑はありません。もし保険金が得られなかったとしても、正義らは「10年以下の懲役刑」に問われる犯罪に手を染めたことになるのです。

■「偽装強盗」大半は…警察の目は欺けない

実際に行われれば、重い罪に問われる可能性のある「偽装強盗」。しかし、警察の捜査の目をかいくぐって「偽装強盗」がまかりとおる可能性はほとんどないといいます。

「たとえば店員が店の金を使い込んでしまったことがバレるのを防ぐため、自らを刃物で傷つけたりして強盗被害を装うというケースもありますが、聞き込みで得られた証言と現場の状況を照らしあわせたり、ケガをさせられたと主張してきた場合、傷の深さや方向などを確認したりすると、本当に強盗に襲われたのか、すぐに疑念が浮かびます」

「綿密な現場検証も行われますし、しっかりと捜査を積み重ねていけば、どこかに矛盾が出てくるので偽装強盗がバレないことはまずないと思います。ドラマのように、逃走の途中で覆面を外すような強盗犯がいれば、防犯カメラでリレー形式で追って行ったらすぐ身元が特定されて、荒木たちは早晩逮捕されることになるでしょうね」(元捜査1課刑事・佐々木成三さん)

■ドラマでは新たな「偽装強盗」が…主人公も「実行部隊」に

5月4日夜10時から放送の「街並み照らすヤツら」第2話では、酒店の娘の高校生(月島琉衣)からの依頼を受け、主人公の正義自身も「偽装強盗」の実行部隊に参加。新人刑事の澤本(吉川愛)と日下部(宇野祥平)のコンビが、回り道をしながら、正義たち「偽装強盗団」にどう迫っていくのかも注目です。