『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』…ヒット作支える担当編集 読者からの感想は「いまだにうれしい」
■地球の裏側からの感想に「なかなかない感動がある」
――これまでの漫画編集の仕事で印象的だったエピソードはありますか?
作家さんと一緒に打ち合わせしたものが、数週間後には世の中に出て、今だったら電車で『ジャンプ+』を高校生が読んでくれているのを目の当たりにできますし、書店に行けば自分の担当作をレジに持っていく方もいらっしゃって。最初の頃感動して「こういうのって慣れていくものなのかな」と思ったんですけど、いまだにやっぱりうれしい。さらに言うと今だと世界中の方に読んでもらえているんです。作品を更新して、数時間たったらロシア語、英語、スペイン語とかで感想が普通にオンライン上で上がって、僕にDM(ダイレクトメッセージ)をくれる方はもちろんいらっしゃいますし、作家さんの方にもいろいろな感想を書いてくれる方がいて、なかなかないなっていう感動もあって。地球の裏側から感想が届くっていうのは、かなり面白いことだなって思いながら日々働いています。
■変化する流行の波「マネしちゃいけない感じもする」
林さんは現在、連載中の『HEART GEAR』『幼稚園WARS』『ダンダダン』『BEAT&MOTION』の編集を担当しています。『SPY×FAMILY』と『チェンソーマン』はアニメ放送され、それぞれミュージカル、舞台にもなり話題となりました。そうしたヒット作品を漫画家さんと共に生み出している林さんは、世の中の流行の波を普段どのようにとらえて、見ているのでしょうか。
――世間で流行しているものと自分たちが作りたい作品にギャップがあったときは、どのように作品を制作されていますか?
そもそもその波が分からないっていうのが正直な感想なので、逆に今売れているものと同じことをやっても、世に出るまでの間にズレてるから、むしろマネしちゃいけない感じもするじゃないですか。作家さんと自分が社会のことを見つめて、エンタメの流れを見つめて「こういうのを面白いんじゃないか」って世に出していくことでしか多分トライできないので。もちろん、世の中のヒット作とか、「何が賞を取ったかな」とか、「何で興行成績そんなにいったんだろう」とか考えますけど、そういうものを作るために見ているわけでもなく、その世界の空気感を把握するために見ているだけであって、でも理解しようと思っても理解できることは多分ほぼないので、考えながら「今だったらこれがベストなんじゃなかろうか」っていうのを作家さんとキャッチボールして作るだけっていう感じですかね。
――さまざまな出来事に常にアンテナを張っていらっしゃるんですか?
好きだから読んでいるっていうのもあります。小説読んで、漫画読んで、映画見て、ドラマ見て、ニュース見てって、生きていることの延長線上というか、特に頑張るわけでもなく。作家さんと日々打ち合わせしていると結局そういう話になるんですよね。「最近売れているあれを見たか」とか「最近話題の映画こうだよね」とか、もう当たり前のようにやっているので、見る人が見たら修業なのかもしれないし、やっている側からすると楽しくてやり続けているだけのことなので。だから、自分が苦じゃない業界にいることはもしかしてラッキーだったことかもしれないなっていうふうには思っています。