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石井監督&いとうせいこう氏、世代超え共感

2011年7月9日 21:10
石井監督&いとうせいこう氏、世代超え共感

 公開中の映画「あぜ道のダンディ」のメガホンをとった石井裕也監督(28)が9日、作家でクリエーターのいとうせいこう氏(50)を相手に都内の劇場でトークショーを行った。

 石井監督の自主制作映画「ガール・スパークス」から、いとう氏はその才能に注目。本作を観賞し、5月24日付のツイッターでは「なんでもない五十才のお父さんを中心に親子と友達との日々を丁寧に軽々と描いていく。すると映画は人類の普遍に届き、巨大な感動がせりあがってくる。あの若さでこれ撮るなんて!」と絶賛している。

 石井監督は本作の制作意図を「人生におかしさと悲しさがあることに気付いて、その2つだけで映画は作れるんです。ストーリーテリングを重視しちゃうと一番大切なその2つがおろそかになっちゃう傾向が僕にあったので、今回はその2つだけでオーソドックスに作りました」と改めて説明。東日本大震災が発生し、現実を直視したうえで問題を解決することが求められる今の日本にあって、「こういう時代だからこそ個人個人の誠実さとか、倫理観が問われている気がする。そこを直視できる年齢になってきたんです。『あぜ道〜』なんかはそういう考えをそのまま映画にしました」と熱く語った。

 「きずな」をテーマに映画を撮る石井監督に、いとう氏がその理由を問うと、低成長時代に突入した日本の現状を踏まえて「経済を成長させるためにこれまで日本人が失った心意気だったり、粋だったり、精神的なバックボーンみたいなものが重要で、そういうものに着目して映画を作っています」と回答。深い考察の一部を示した。

 いとう氏は「まさにそれは世界普遍の問題。困っている人がいるのになぜ助けないんだっていうことだから」と共感し、「じゃぶじゃぶ電気を使えば日本は復興するって言っているおかしな人がたくさんいて…。3・11以前も不況だったじゃないか。みんな不況だったことを忘れている。復興すべきは(日本人の)心の問題ってことでしょ?」と問い返すと、石井監督も大きくうなずいた。

 石井監督の最新作「ハラがコレなんで」が今秋公開される予定。いとう氏は「次も楽しみ。きょうは話ができてよかった」と満足そうだった。