松重豊、北斎は「表現者として究極の憧れ」
展覧会「北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃」で音声ガイドのナレーションを務める俳優の松重豊(54)。普段も家族で美術館を訪れることがあるという松重に、江戸後期を代表する浮世絵師・葛飾北斎の魅力を語ってもらった。
「ジャポニスム」は19世紀後半、日本の美術に魅了された西洋の芸術家たちが、そのエッセンスを取り入れて新しい表現を生み出した現象のこと。
本展覧会では北斎の作品約90点のほか、北斎の影響を受けたとされるモネ、ドガ、セザンヌ、ゴーガンらの名作約200点を比較展示する。
松重が音声ガイドのナレーションを担当するのは初めて。19世紀、パリに生きた「ある美術店店主」に扮し、穏やかな語り口で作品の解説をする。
ドキュメンタリーのナレーションはこれまで経験している松重は「ドキュメンタリーはでき上がった作品に寄り添うことですけど、今回は絵を見ているお客さんに、どういうふうにうまくガイドできるかっていうことで」と分析。
そのうえで「今回は仕掛けが特殊。北斎と、その作品の影響を受けたであろう西洋の画家たちの作品(を比較展示する)。僕も興味がつきない内容でありますし、自分がはしゃぎ過ぎてもいけないなと思いながら、本当に面白いなと思ったところには若干の力を入れつつ、思う存分楽しませていただきました」と収録を振り返った。
現代のようにインターネットがない時代に、海外の芸術家に影響を与えた北斎を表現者としてリスペクトする部分も多々あるようで、「死ぬ間際も『あと5年、あと10年あったら、もっとすごい絵描きになれたのに』って(言っていた)。そういう死に方ってかっこいいし、ロックンロールだなって思う」と松重。
続けて「絵の天才なんでしょうけど、僕ら俳優から見てもこういう人になりたいし、こういう人だからこそ、海外のアーティストも影響を受けて北斎のエッセンスを自分の中に加えたっていうのは、表現者として究極の憧れですね」と尊敬のまなざしで語った。
「北斎とジャポニスム」は21日から来年1月28日まで、東京・上野の国立西洋美術館で開催される。