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ミュージカル『この世界の片隅に』原作者が稽古場を初訪問 主人公すずの名前の由来明かす

2024年5月3日 22:40
ミュージカル『この世界の片隅に』原作者が稽古場を初訪問 主人公すずの名前の由来明かす
左から)大原櫻子さん、こうの史代さん、アンジェラ・アキさん、昆夏美さん
日生劇場で5月9日に開幕するミュージカル『この世界の片隅に』の稽古場に原作者のこうの史代さんが訪れ、主演の大原櫻子さん(28)、昆夏美さん(32)、音楽を担当したアンジェラ・アキさんと作品、ミュージカルの魅力を語り合いました。

原作を初めて読んだ際に、戦争を扱いながらも温かい空気が流れているところに心が打たれたと語った昆さん。いま気になっているのは、すずの表情だと言います。「分かりやすく笑ったり怒ったりしている時もあれば、もっと奥深い表情をしている時もあることに気付いて、どう自分の中に落とし込んだらいいかを考えながらお稽古しています」と演じる上での難しさを話しました。

同じくすずを演じる大原さんがこうのさんに、すずを“ボーっとした”キャラクターに設定した理由を聞くと、「そのほうが、この時代と場所に馴染みのない読者でも、物語に入り込みやすいと思ったんです。主人公が最初から呉でチャキチャキ頑張っている人だと、会話の中で状況を説明する隙がないですよね。でもよそから来たボーっとした人が主人公なら、主人公が周りの人たちに色々と質問をして、それに答える形で状況の説明ができるんです」と明かしました。

また、登場人物のすずやリンなど、キャラクターの名前が元素名から取られていることに関しては、「キャラクターの名前って、自分の思いつきだと似通ってしまうから、系統を立てて考えることが多いんです」と話したこうのさん。続けて、「最初は呉の地名にしようかと思ったのですが、呉には硬い地名が多いんですね。悩んでいた時、たまたま近くに周期表があったので、これを使おうと(笑)たくさんある元素の中で“すず”を主人公にしたことには、私が飼っていたインコの“すずしろ”が関係しています。ある時いなくなってしまったのですが、どこかでずっと元気にしていてほしくて、新天地で頑張る主人公にその思いを込めたんです」と自身のエピソードも交えて語りました。

自身の作品がミュージカルになることについては「自分の漫画がミュージカルになるなんて夢のようで、アンジェラさんの歌われたデモテープも感動しながら聞かせていただきました」と話しました。

■オリジナル作品、ミュージカルだからこその魅力

こうのさんから稽古中の苦労を聞かれると、アンジェラさんはオリジナル作品だからこそ最終形が見えないことだと伝えました。

その一方で、「だからこそ、キャストの皆さんと一緒に作れている感覚があって楽しいです。特にすずの二人は、“すずはこういう言い方はしないと思う”といったフィードバックをくれる頼もしい存在で、それを受けて歌詞を変えたりもしているんです。私はこの作品が長く続いていくことを願っているのですが、最初のすずがこの二人で本当に良かったです」と主役を務める2人の存在を語りました。

またアンジェラさんは、「ミュージカルは、総合芸術なんですよね。私も自分のアルバムを作る時は基本的にひとりですが、今回はみんなとキャッチボールをしながら作っているから、大変ではあっても決して孤独ではない。それがミュージカルの醍醐味なのかもしれません」とチームで作品を作り上げる喜びを話しました。

■ミュージカル『この世界の片隅に』 作品の見どころ、聴きどころ

最後に、こうのさんに対して3人がミュージカルの見どころや聴きどころを紹介することに。大原さんが見どころとして挙げたのは、すずと周作のデートのシーンでした。その理由を「特に『醒めない夢』という楽曲が、二人の可愛らしさがギュっと詰まっていてすごく素敵なんです」と話しました。

昆さんが聴きどころとして挙げたのは劇中で2回歌う楽曲、『この世界のあちこちに』です。「これからどんな物語が広がっていくのか、お客様がまだ知らない状態で一度歌われた曲が、すずさんが自分の在り方を見つけた時に再び歌われる、という構成が大好きなんです。二度目に歌う時には、涙をこらえるのに必死になってしまう楽曲です」と話しました。

対してアンジェラさんが挙げたのは機銃掃射のシーン。「二人の演技がとにかく素晴らしいんですよ。このシーンあたりから、すずの感情がクレッシェンドしていき、最後には優しくデクレッシェンドしていくのですが、そのすべてが見どころですね。すずの熱量を表現するのは本当に大変だと思うのですが、二人とももう、“圧倒的”“ヤバい”といった言葉しか出ないくらいすごいパワーなんです(笑)」と見どころを熱く語りました。