梶裕貴「納得できないというか、残念な気持ち」 AIを使った声の無断利用への思い明かす
「作品を作ってきた身としては、やっぱり納得できないというか、残念な気持ちはありますね」と、梶さんが“残念”と話すのは声優たちの声を使って無断で作られているAI音声の問題です。
梶さんは「アーティストさんの楽曲を僕なり僕が演じたキャラクターが歌っているみたいな動画がやはり多い。自分の好きな作品だったりセリフだったり。自分の中の好きなものと好きなものをコラボレーションさせるみたいな感覚でネット上に公開して、悪気なく受け取って楽しんでしまうっていう文化が生まれているんだと思うんです」と明かしました。
現在SNSには『歌わせてみた』や『aicover』などのハッシュタグをつけた動画が数多く公開されています。これらはAIに声優たちの声を学習させ、無断でアニメキャラクターなどに関係のない曲を歌わせているものです。
2023年12月から3か月間行われた調査によると、無断で生成された動画は270件。声を使われた声優は267人にのぼるといいます。
この問題に、山寺宏一さんたち26人の声優有志の会が声をあげ、『NOMORE 無断生成AI』をスローガンにした啓発活動がスタートしました。啓発動画のなかで、山寺さんは「商業利用というのは、もうもってのほか」と話し、中尾隆聖さんは「私たち声優の気持ちを聞いてください」と語りました。
今回インタビューに答えてくれた梶さんも、この活動のメンバーです。梶さんは「歌った記憶のないものだったりが、自分の声で再現されているというのがやっぱりちょっと不気味。何かエンタメ作品を作るときには、一人一人がリスペクトを持って作るからこそ人の心に届くものが生まれるんだと思うので誰かが嫌な気持ちになってしまう。ルールを守れていないというのはエンタメとは呼べない」と話しました。
ただ、AIについては可能性を感じているという梶さんは「使い方さえ間違えなければ確実にこれからの未来を良くしていく、プラスに働くものばかりだと思うんですけど」と語りました。
実は梶さん、自身の声をAIに学習させ、キャラクターに好きな言葉をしゃべらせたり歌わせたりできる音声合成ソフトの開発を行っています。
梶さんは「本人が公式として出すことによって、それ以外の今こう世にあふれている無断生成というものが良くないものだという認識に捉えていただけるきっかけにもなるのかなっていう思いはありますね」と語りました。
現在、著作権は認められていない個人の声。今後、問題を解決するために必要なことを聞くと、梶さんは「まだ法整備自体も整っていない。それをとにかく急いでほしいなという思いはありますけど、ほんと一人ひとりの意識かなと思いますね。声なり芝居なりイラストなり音楽なりそれを作るまでにはいろんな努力、時間がかかっている。果たして楽しいから、楽しんでほしいからっていうだけで、それが許されることなのかっていうのを一度考えてみてほしいなと思います」と明かしました。
(10月30日放送『news every.』より)