ギネス記録の『ゼルダの伝説』、なぜ異例の大ヒットになったのか ゲームサイト編集長に聞いたヒットのワケ
■3日間で世界累計販売本数1000万本 ゲーム業界でも“異例の事態”に
Nintendo Switch向けに開発された『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、2017年に発売した『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の続編となるシリーズ最新作。世界販売本数が発売から3日間で1000万本を突破するのは、これまで過去最高売り上げだった『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』に並ぶ記録となりました。
この販売記録に「ゲームソフト1つで1000万本突破ということで、より多くの人に届いたのでは。こうしたことはゲーム業界で日常茶飯事で起こることでは全くなく、ワールドワイドでも400万、500万本売れればかなりの大ヒットで、今回はその倍以上。ゲーム業界でも異例の事態です」と驚いたのは、ゲーム情報総合サイト『ファミ通.com』で編集長を務める三代川正さんです。
■自由な発想を認める“懐の広さ” プレーヤーのガッカリが生まれない仕組み
『ゼルダの伝説』シリーズは、主人公リンクを操作してフィールドやダンジョンに隠された謎を解き明かしながら冒険を進めていくアクションアドベンチャーゲームです。2017年に発売された前作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の完全続編となった今作では、ものを動かし付け外しが出来る“ウルトラハンド”や新たな武器を生み出せる“スクラビルド”など、謎解きや敵を倒す際にプレーヤーの自由な発想を後押しする、新たな要素が追加されました。
三代川:(今作では)ウルトラハンドで、とても自由にモノを作れる。組み合わせ次第では、敵を一網打尽にするワナを作れたり、中には自動で動く巨大ロボットを作ったり、そういうものがこぞってSNSなどにアップされている。そういう動画を見て「こんなゲームなんだ」と驚きもありますし、「こんなことが出来るんだ」という発見にもつながって、買ってなかったユーザーにも遊んでみたいと思わせるような相乗効果を生んでいるんじゃないかと思います。
また、ゲームのガッカリ要素って、「これできないんだ」という想像していたものに対して、期待通りのリアクションが来なかったりするという、そういったことがあると思うんですけど、今作はそれがある程度出来てしまう。もし出来なかった場合も「自分の工夫が足りないんじゃないか」と思わせるほど、あらゆる要素が用意されているので、プレーヤーのあらゆる発想の成就、受け入れがあるからこそ、ガッカリが生まれづらいのだと思います。
■ “敵の強さ”と“難易度”は自分の発想次第 無数の答えから生まれる達成感
三代川:今回から実装された“スクラビルド”という新要素で、落ちている棒と落ちた敵の角を組み合わせるなど、武器も自由に作れる。普段の敵にはその辺にある木と岩で、ちょっと強い敵が出てきたなと思ったら、強敵が落とした角を組み合わせて戦うなど、自分の発想次第で“敵の強さ”と“難易度”が変わる。普通のゲームであれば1つの解法が決まっていたり、もしくは数パターン用意されている中で選んで進めるんですけど、今作では無数に答えが広がっている。「これでよかったんだ」と、自分の発想が認められる感覚、達成感が味わえます。
また、人に言いやすい失敗談も生まれやすくて、「ここでこうなっちゃった」と言ったときに、それが「あー、あったあった!」なのか、「そういうことになるんだー」と反応も様々で、発見の共有が出来るというのは、このゲームならではなのかなと思います。
■謎解き、クラフト、寄り道の強化 ゲーム・オブ・ザ・イヤー候補で「半年近くはまだまだ伸びる」
三代川:(ゲーム自体は)最終的には強大な敵がいて、その先にゼルダ姫を助けるというのがあって、今回もそれは変わらないが、より謎解き、クラフトの楽しさ、寄り道の楽しさっていうのが強化されていて、あまりに広大すぎてみんながゼルダ姫を助けに行かない。SNSなどでもみんながゼルダを忘れてしまうという。私自身もまだプレイ途中ですが、ゼルダを助けに行ってないので、それくらい自分の冒険を楽しんでいます。
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は少なくともこの半年近くは売れると思います。任天堂のタイトルだと夏休みや年末などにより伸びる傾向にありますし、年末までにその年のゲーム・オブ・ザ・イヤーなどいろんな表彰される機会、露出も増えていきます。現状ではゲーム・オブ・ザ・イヤー候補として名高いので、まだまだ伸びるチャンスはあると思います。
◇◇◇
三代川 正
ゲーム情報総合メディア『週刊ファミ通』や『ファミ通.com』でゲーム記事などの執筆の他、ゲームイベントの司会や解説なども担当。現在は『ファミ通.com』の編集長を務めています。