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性感染症がテーマの音楽フェス 「勇気がいる」「話すのが難しい」 パートナーとの安心できる関係作りのきっかけに

2024年4月18日 22:45
性感染症がテーマの音楽フェス 「勇気がいる」「話すのが難しい」 パートナーとの安心できる関係作りのきっかけに
性感染症をテーマに自分や相手との“安心できる関係”について考える音楽フェス『BLUE HANDS TOKYO』を取材
4月14日は、性別にかかわらず、家族や友人、職場の同僚など、お世話になっている人に感謝の気持ちを伝えるパートナーデー。この日、性感染症をテーマにした音楽フェス『BLUE HANDS TOKYO』が、東京・渋谷区のMIYASHITA PARKで開催されました。初めての開催となった音楽フェスの様子や主催者の思いを取材しました。

主催したのは、自宅でできる性感染症の郵送検査キット『smaluna check(スマルナチェック)』を提供する株式会社ネクイノ。2021年に『#しかたなくない』をキーワードに、体や性にまつわる「しかたない」と諦めていることへ声をあげるプロジェクトを渋谷発で展開。その一環として、パートナーとの性行為の前に性感染症の予防を呼びかける音楽フェスが実現しました。

イベントには、フェスのコンセプトに賛同した6組のアーティストが参加し、ライブパフォーマンスを披露。さらに性感染症の予防、検査の重要性を呼びかけました。

また会場には、安心な性行為に対する『賛同の輪』を体現するように、未来に手をかざす“共通ポーズ”で写真を撮影できる『表明写真機』やパートナーとの安心できる関係を目指して、心がけたいことや相手に伝えたいことを打ち明けるメッセージボードなど、抱えているモヤモヤやイベントで得た気づきを可視化できるエリアが設けられました。

■音楽フェスと性感染症予防 人々と対話しやすいコミュニケーションの形

株式会社ネクイノの代表・石井健一さんは、開催のきっかけについて「僕たちは医療系のスタートアップをやっているんですけども、医療に関わる課題、コミュニケーション、特に性感染症が今色々な注目を受けていると思うんですけど、難しいことを考えずにふわっと話し合うとか考えてみる日を作ってみてもいいじゃないかなと思って。今までのこの領域に対する発信って、どちらかというと自分に矢印が向いてたと思うんです。“自分が病気にならないように”とか、“自分がなったらどうする?”という話で、それだと少し弱いかなと思っていて。自分の大切な人とか、自分が存在しているコミュニティーとかのことを思うと、もう一歩前に進めるんじゃないかなって思ったので、4月14日のパートナーデーにターゲットをおいたという経緯があります」と明かしました。

また、音楽フェスという形でイベントを開催したことについては、「どういうふうなコミュニケーションの形を取ると、人々と対話しやすいかなと思った時に、アーティストを通じて、今まで僕たちが出会ったことがない人たちに対してコミュニケーションしていく形がいいんだなと思って。最近はインターネットが普及したので、検索をする人とか目的にする人に対して、コミュニケーションを取るのは簡単になっています。でも、そうじゃない人たちと接点を作るには、インターネットって逆に不便で、リアルな音楽とかアートとかっていうふうな接点を使ったコミュニケーションの形に期待しています」と、対話しやすい空間やきっかけ作りのために、音楽を取り入れたといいます。

■性感染症の報告数が多い若い世代に向けて「信頼できる正しい情報を一本筋として置いておく」

厚生労働省が発表した2021年の性感染症報告数によると、若い世代における性感染症の報告数が多いことが明らかになっています。この問題を受け、このイベントでは特に若い世代に向けて、性感染症について知ってほしいという思いがあるといいます。

石井さんは、報告数が多い背景について「一定のセグメントの中で、セックスに対するアロケーションというのが増えてきてる、アクティブな世代が増えてきているっていうのは間違いないことだと思うんです」と指摘。「セーフセックスという言葉が、エイズのときに少し出てきたと思うんですけど、安全に性に対してアクティブになっていけるような関係性を(パートナーと)どう作っていくのかっていうのは、次に考えなきゃいけないこと」と、課題をあげました。

そうした背景のほかに、誤った知識の伝達やSNSでのあやふやな情報の広がりがあるという現状を指摘し、「僕たちがやるべきなのは、本当の信頼できる正しい情報を一本筋として置いておく。ここにできる限り、多くの人たちにプラットフォームに参加してもらって、それが真実になるような情報になっていけばいいんじゃないかなと思っています。困った時にここを見にいくとか、この人が言ってるから大事だというような人格だったり存在っていうのが増えていくと、SNSの活用っていうのもいい方にぐるぐる回ってくるんじゃないかな」と語りました。

さらにイベントでは、メッセージボードにメッセージを書くなど、条件を満たした参加者に向けて、自宅で性器クラミジア・性器淋菌の検査ができる性感染症の郵送検査キットが配布されました。

無償での配布について、「商品としては存在しているので、自分自身に検査のニーズがあったりとか検査しなきゃいけないって思われてる方にとっては、すでに手が届く環境にはなってるんです。一方で、こういうイベントを通じてやりたいのは、まだそこまでたどり着いていない方々に“こういうのがあるんだ”とか、“一回やってみようかな”という形ができることが大事だと思っていて、そのきっかけに手渡しというものがどのくらい影響があるのかを測ってみたいなって思って配布させていただきました。できる限り、早く医療機関にかかれる、医療にアクセスができるような関係を作っていきたいのが、私たちのミッションでもあるので、無償配布をやってみました」と、明かしました。

■フェス参加者「音楽という形と混ざり合うことで話しやすい空間ができるんだな」

ラッパー/作詞家・maco maretsさんのファンで、ライブを見に来たという21歳の大学生は、「このフェスティバルのためのアレンジになっていたり、アーティストさんが(性感染症について)話してくださったりとか色々考えさせられることがあって、すてきな空間だなと思いました。性感染症の話とかになってくると、友人やパートナーとの間でもオープンに話そうと思っても、少し勇気がいるトピックだと思うので、こういうことを“一緒にみんなで考えようね”っていう機会が、アートとか音楽という形と混ざり合うことで、さらに話しやすい空間ができるんだなっていうのを実感しました」とコメント。

さらに、4人組バンド・ASOUNDのパフォーマンスを見に来たという20代と30代の2人組は、性感染症について「なかなか話すきっかけが難しい」「もしもの時くらいにしかしないかな」とオープンに会話をすることへの難しさは感じるとしつつ、「パートナーにこのイベントに行くことを伝えていて、“すごくいいね”って言ってくれてたので、“こういうイベントに行ったんだ”っていうところから話すきっかけを作れる気がしました」と、明かしました。

ネクイノの代表・石井さんは今後について、「今回は音楽フェス、アーティストを通じてだったので、この形は一回イベントが終わった時に効果はどうだったのかなと振り返ってみたいと思います。より多くの人とコミュニケーションすることが目的なので、今後も音楽とかフェスだけじゃなくて、色々な形の中で世の中と対話し続けてみたいなというふうに考えています」と、展望を語りました。

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