「カメラがまわっていないときも店主になりきってレジ前の椅子に座っていた」 いしだあゆみさんの遺作映画で店舗を撮影に提供した田村浩祥さん

今月11日に76歳で亡くなった歌手で俳優のいしだあゆみさん。最後の映画出演作となった昨年公開の映画「室井慎次 敗れざる者」「室井慎次 生き続ける者」では、秋田県大仙市の市毛商店店主 市毛きぬ役を熱演しました。
経営する田村商店を市毛商店として撮影場所に提供した田村浩祥(ひろよし)さんは、いしださんの訃報に「びっくりした。これからもっと映画に出られるかと思っていたのに」と話すとともに、撮影時のエピソードを教えてくれました。
田村さんによりますと、撮影が行われたのは昨年の2月と4月。スタッフから「主演の柳葉敏郎さんがデビュー当時憧れていた人、ということで出演をオファーした」といしださんの出演が柳葉さんたっての希望だったことを伝え聞いたということです。
寒い時期の撮影にもかかわらず、長時間店の扉を閉めることなく行われた過酷な現場。心配したスタッフがいしださんが映っていない場面で上着を渡そうとしても、いしださんは自分の持ち場であるレジ前の椅子から動かず、上着を受け取りませんでした。
田村さんは、「いしださんが撮影中も休憩中もどんなときでも役の雰囲気を保とうとしていた」とその役者魂に感激。その一方で、店のスタッフに気さくに話しかけてくれる場面も多かったことや、マネージャーを通じて、土産に甘納豆を購入したことも教えてくれました。
映画が公開されてからは、全国からファンが聖地巡礼で田村商店を訪れ、「ここが、いしださんが最後に犬を抱いて座っていた椅子ですね」などと声をかけらることがあったと語る田村さん。店内にはいしださんのサイン色紙や、撮影で使用した市毛商店の看板を大切に飾っているということです。