取材した記者は劇団四季の元俳優【特集】海外のダンサーが秋田に集結!現代舞踊のイベントを企画した男性に密着
前職は劇団四季の俳優。
異色の経歴を持つ、進藤拓実記者とお伝えします。
【進藤拓実記者】
私はかつて、劇団四季の劇団員として、アフリカのサバンナが舞台のミュージカルなどに出演していました。
その経験から、今回、注目したのが、去年、秋田市にオープンした、小さな芸術ホールです。
ここで先日、韓国やイタリアなど、世界各国のダンサーが集まる、国内では珍しい、現代舞踊のイベントが開かれました。
非日常的な空間を生み出す、ダンスイベントを企画した1人の男性に密着しました。
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今月5日。
秋田市の市街地にある芸術ホール、アートボックス卸町で、国際的なダンスイベントの準備が進められていました。
その中心となっていたのは、芸術監督の山川三太さん、71歳です。
去年、空き倉庫だった建物を改装して、アートボックスを作りました。
山川三太さん
「初めて見るお客さんもたくさんいると思うので、そういう人たちの反応がすごく楽しみだね」
山川さんは、10年前の2015年から、国際ダンスイベント「踊る。秋田」を開いています。
山川さん(2015年)
「秋田の子どもたち、あるいは若い人たちに本物の舞台を見せたい」
毎年、国の内外からダンサーや演劇団体を招いて、様々な舞台芸術を生み出してきました。
「嫌いだとか怖いとか気持ち悪いとか思うんだったら、それはそれでいいんだよね」
「嫌だなって思った時に、なんで私はこれを嫌だと思っているんだろうってことを考えると、それが舞台芸術を見る楽しみになると思う」
アートボックスでの開催は、今年が初めてです。
100席ほどの小さい規模のホールを生かした非日常空間を作り出し、観客を迎える準備を整えました。
本番の日が近づき、出演するダンサーたちも集まり始めました。
山川さん
「ようやくだな」
ジョセフさん一行
「三太さーん、So glad to see you!」
最初に秋田に到着したのは、古典芸能と現代舞踊の融合を得意とする、キム・ジョセフさん率いる韓国のチームです。
「踊る。秋田」の出演者は、世界各国のダンスイベントの舞台に立っている人たちばかり。
現地でパフォーマンスを見て、山川さんがスカウトしました。
出演者たちは、本番に向けて、秋田市内で技に磨きをかけました。
ジョセフさんたちが披露するのは、2人で踊る作品です。
虎に殺された人間が悪い鬼に生まれ変わって人々を誘惑するという、韓国や中国に伝わる民話がモチーフになっています。
ジョセフさんは、振り付けを担当しました。
たくさんの羽がついた韓国の民族衣装を小道具に使い、魅惑的な表現を追求しています。
かつて「踊る。秋田」に出演したことがきっかけで秋田が大好きになったというジョセフさん。
日本でダンスを披露する機会にはなかなか恵まれないといいます。
ジョセフさん
「こういうふうに秋田に来られるようにフェスティバルを作ってくれた三太さんにとても感謝しています」
「世界の様々な国のダンサーがこの場所に集まることは重要だと感じます」
滞在期間が長かったジョセフさんたちは、山川さんが用意したゲストハウスで生活しました。
もとは山川さんが幼いころに過ごした実家です。
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迎えた当日。
7チームが次々と踊りを披露しました。
押し引きや反発する動作で、社会の中にある抵抗などを表現した台湾のチームに、絡み合うような振り付けで、男女関係の複雑さなどを表したイタリアのチームもありました。
そして、ジョセフさんのチームも。
ジョセフさん
「言葉にできない感情」
「アートボックスが私たちを温かく歓迎してくれて、私たちを受け入れてくれたので、パフォーマンスが成功したんだと思います」
観客
「すごく迫力がありました、近くて息づかいまで聞こえる感じで」
「ヒップホップを習っているんですけど、なんかマネできるところがないか探してみたんですけど、全くありませんでした。それぐらいすごかったです」
国も文化も違うダンサーが集った「踊る。秋田」。
山川さん
「ハイレベルな作品をこれだけ集めているフェスティバルはないっていうもの。すごくうれしい評価をもらって、本当に大成功だった」
「若い世代に本物を見せる機会、それを増やしていきたい」
芸術を通して、国を超えた交流が、アートボックスで生まれました。