MC上田晋也のコメントに演出も「グッときた」…『上田と女がDEEPに吠える夜』で「フェミニズム」特集
■日本テレビのバラエティー番組初?フェミニズムを特集
日本テレビのバラエティー番組で「今週のテーマはフェミニズムです」というのはたぶん初めてじゃないかなと思うんですけど、なかなか攻めた選択をしましたね。
『上田と女がDEEPに吠える夜』演出 前川瞳美ディレクター:
そもそも『上田と女がDEEPに吠える夜』という番組自体がフェミニズムをやりたくて始まった番組みたいなところもありまして。ジェンダーバイアスや性的同意とかを取り扱ってきたんですけど、国際女性デーに乗っかったら大手を振ってやれるかなということで、勇気を出して。
白川:瀧波さんは番組のオファーが来てどんな気持ちでした?
漫画家 瀧波ユカリさん:
「よし来た!」みたいな。というか、「まだやっていなかったんだ」と思って。日本のバラエティーでフェミニズムを語る番組のゲスト5人に選ばれたんですよ。オリンピックみたいなものじゃないですか。
白川:どんな内容を収録したんですか?
前川:「フェミニズム」っていったい何なのか、出演者の女性陣がこれまで女性として生きてきた中で違和感を抱いたエピソードや、日本に根強く残っている“女性の役割”みたいな問題についてみんなで話し合いました。ゲストは瀧波さんと、山崎怜奈さんと、LiLiCoさんと、MEGUMIさんと、ファーストサマーウイカさんです。
瀧波:こういう番組や講演だと、できるだけ「みんなの役に立つよ」という感じを求められるんです。でも、本当に基礎の部分で、やはり「女性はこうあれ」という抑圧があって、そこからの解放を訴えるのがフェミニズムですよね。
例えば歩行にハンディキャップがある人のために「スロープをつけましょう」ってなるじゃないですか。「でもこのスロープってね、身体が元気な人にとってもすごく登るのが楽なんですよ」みたいなことを言うのもありだけど、結局これが必要な人の存在を透明にしちゃってますよね。
だから、フェミニズムっていうのはいろんな考え方があるんですけれども、本当に基本的な1丁目1番地のところとしては、女性が、“女性らしさ”の抑圧からの解放を求める運動ですっていう説明ですね。それを最初にズバッと言わせてもらいました。
■「将来の夢はお嫁さん」から“モテないと価値がない”へ
白川:どういう女性の生きづらさのエピソードが披露されたんでしょうか?
前川:上田さんの世代だと、小学生の頃に書く作文で「将来の夢はお嫁さんです」って書く女の子が結構いたけれども、今はどうなっているんだろうね?みたいな話がありました。
瀧波:そのワードだけ切り取ると一昔前な感じはするんですけど、でも今の時代って私、それが「モテ」に切り替わっているような気がします。“モテないと価値がない”みたいな。「お嫁」とか「結婚」みたいな昔ながらの言葉は持ち出さなくても、「男性から求められることが必要なんだよ」っていう抑圧はすごくあると思いますね。
白川:前川さんはご自身が30代を迎えて、女性としての生きづらさに気づいて、そこからこういう番組が作りたくなったと言っていたんですけど、それは「男性から求められることが評価される」とかも含めての“生きづらさ”だったんですか?
前川:そうですね…学生の時はそんなに感じることもなかったような気がするんですけど、社会に出ると途端に。事務所の方とご挨拶しても、男性プロデューサーには挨拶するけど、私とは目も合わないとか。
この間も、若いディレクターと話している時に、「若い時って男性の年配のカメラマンさんが自分の言う通りに画を撮ってくれないことがよくあって、すごく嫌だった」っていう話をした時に、女の子は「わかる」って言うんですけど、男の子はぽかんとしてるっていう状況があって、「ああ、これもそうだったんだ」っていう気づきがありました。
■上田晋也さんが「バリバリのフェミニストとおんなじことを」
白川:出演者のエピソードで他に印象に残ったものはありますか?
前川:MCの上田晋也さんが、「古き良き昭和って言うけれども、それは一部の男性にとって良かっただけで、その陰に苦しんでいた女性がいるってことを無視しちゃいけないよね」みたいなことおっしゃっていて。上田さんのような男性の立場でそれを言える人ってなかなかいないんじゃないかなと思いまして。だからすごくグッときて、感動してしまいました。
瀧波:上田さん、多分あの番組をやっていることによって、知らない間にめちゃめちゃアップデートされちゃっていて。だからバリバリのフェミニストとおんなじことを言ってるんです。
前川:瀧波さんが最後に「全ての差別がなくなったとしても、最後に残るのが女性差別」とおっしゃったんですけど、それも印象に残っています。
白川:女性差別が最後に残ると言われているのはどういう理由なんですか?
瀧波:生活の全てに紐付けられ過ぎているのと、身体性の問題もありますよね。どうしても女性が「子どもを産む」ことに関しては代わりがきかないじゃないですか、科学的には…今のところ。だから、「女性が子どものお世話をして家庭のことを全部やる。その方が合理的でしょう」みたいなところに持っていかれやすいですよね。
■今発信できるのは「めちゃめちゃラッキーな人」
瀧波:私とか前川さんとか、メディアで発言する機会のある人たちっていうのは、ある程度抑圧から守られてきた存在です。環境も良かったし、体力とかもあったし、誰かに守ってもらえた機会とかもあったので、その意見って全く現実に即してないんですよね。めちゃめちゃラッキーな人の意見なんですよ。だから、発言できる人達が集まって話すと、「もうそうでもないよね、男女差別って」みたいになりかねません。
白川:前川さんは女性の本音をうまくバラエティー番組に落とし込んでいますけど、何か心がけていることってありますか?
前川:それこそ瀧波さんがおっしゃったみたいに、自分が語れることってすごく限られていると思うんですね。番組のスタッフが語れることも限られていて、なんならタレントさんがしゃべれることも限られていて…。だから、街頭インタビューで街の声を吸い上げたりとか、アンケートを取ってみたりとか、そういうところは細やかにやっていきたいなと思っています。
女性がもっと生きやすい社会のためにというテーマでやっている『上田と女がDEEPに吠える夜』は、毎週火曜よる11時59分から放送していますので、皆さん興味がありましたらぜひご覧ください。
日テレ報道局ジェンダー班のメンバーが、ジェンダーに関するニュースを起点に記者やゲストとあれこれ話すPodcastプログラム。MCは、報道一筋35年以上、子育てや健康を専門とする庭野めぐみ解説委員と、カルチャーニュースやnews zeroを担当し、ゲイを公表して働く白川大介プロデューサー。 “話す”はインクルーシブな未来のきっかけ。あなたも輪に入りませんか?
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