インパルス板倉「さんまさんになったら大変、僕は僕でいいです」 “諦めるために始めた”お笑い芸人という職業
■発売まで約5年 初のエッセー本出版
――板倉さんはこれまでも小説などの執筆をされていますが、エッセーの執筆活動はどうでしたか?
今回は、“いつまでに出す”みたいな締め切りがあったわけではなく、半年くらい何もしなかった時期とかもあるので(笑)。たまったら出すっていう話だったので、放置しまくってましたね。
■芸人になるきっかけは「諦めるため」
――エッセーの中では「お笑いが必要のない仕事」というふうに書かれていましたが…。
ほとんどのことがやっぱり意味がないんですよね。たまたまお笑いっていうことが仕事になっちゃう世界なだけで。例えば、原始時代だったらどんなに面白い人でも、“マンモス捕れるやつの方が…”ってなるわけじゃないですか。どんな面白くても。逆に今、めちゃめちゃいい刀を打てる人がいても、合戦がないとそれは売れないじゃないですか。タイミングとかもあるんだろうなって思って。
――現在はお笑い以外に、小説家、俳優、動画編集など様々なジャンルでも活躍されていますが、芸人になった当初はマルチに活躍する姿は想像していましたか?
全然思ってない、僕は諦めるために(芸人を)始めたんで。
――諦めるために始めた?
お笑いやりたいなって思いながら、普通に働いて家に帰ってテレビつけて“俺やってたらどうなってたんだろう”って思いたくないから、やって、あきらめて、生きるためにお笑いをやったんですよ。
でも、お笑いの養成所ってめちゃめちゃ面白いやつら、学校のトップレベルが集結するところだと思ってたら、そうでもなくて。学校と同じくらいの比率なんですよ、面白いやつも面白くないやつも。で、なんか生き残っちゃったってだけで。なので、別に将来こうなろうっていうのではなくて、スッキリと普通に生きるために始めた感じですね。
――現在の板倉さんのお笑いをやるモチベーションはなんですか?
やっぱり笑い声を浴びるっていう以上の快楽はなかなかないと思っていて。あれを失うのが怖いというか。芸人だけじゃなくて、学校のクラスでなにか言って笑い声が起こると気持ちいいんですよ、誰でも絶対。
それが“もっと強いのくれ!”ってなっちゃって、今度は劇場の何百人の笑い声を浴びたら“もっと強いのくれ!”ってなってるだけな気がするんですよね。だから“人の心を軽くする仕事ですね”って言われちゃうと、ちょっとズキッとくるんですよ。いやそんなところまで見てやってないんだけどなって。
■ないものねだりの憧れは苦しむだけ「自分のメリットに目を向ける」
――板倉さんにとって憧れの人や目標にしてる人はいますか?
いないですね。最初はありましたけど、もしその人に入れ替われたとしたら別の苦悩がのしかかるよなって。例えば独身でいるメリットもあるし、家庭を持つメリットもあるし。結局人はないものねだりをしつづけて苦しむだけなので、だからないものねだりをしなければいいんですよ。
自分が持ってるメリットの方に目を向ければいい。それがみんな下手なんですよね。自分にないものばかり見て“ほしいほしい!”って言ってるけど、そっちにいったら逆に大変な目に遭うよって。全員愚痴ばっかり言って生きてるんですよ。人と比較してチキショウって。無駄でしかないんですよ。だって超イケメンのスーパースターになってたらそれはそれで大変ですよね。ずっと写真で狙われたり。きついですよ。
だからちょっとこの人羨ましいって思った瞬間にその人のデメリットを考えればいいんですよ。そしたらすぐに“あぁ全然ここでいいわ!”ってなるんですよ。その人が抱えてるであろう苦悩をちゃんとリアルに想像したら“あぁ危ねえ、俺でよかった!”ってくらいになるんですよ。
――芸人さんだと明石家さんまさんとかに憧れるのかなと思うのですが…。
さんまさんになんかなったら大変ですよ! 大変でしょ、カッコいいなと思いますよ。水飲まないし全然。あんなにしゃべってるのに。さんまさんに言いましたけど、“全然水飲まないじゃないですか”って。さんまさんって、めちゃめちゃたばこ吸いに行くイメージだったんですよ。だけど、番組収録の時に“さんまさんたばこ吸いに行かないんですね”って言ったら、“おぉそやねん”って。そこからまた注目してたら“水飲んでねえじゃん!”って。3時間とか飲まずにしゃべってるんですよ。だから僕は水を飲みたいんで、僕でいいです(笑)