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現代アート特有の「コンセプチュアルアート」2人組のユニット「キュンチョメ」作品展

2024年10月18日 19:42
現代アート特有の「コンセプチュアルアート」2人組のユニット「キュンチョメ」作品展
「金魚と海を渡る」

熊本市現代美術館で開催中の「ライフ2 すべては君の未来」。取材した東島大記者とお伝えします。

(東島大記者)
展覧会には、未来へ向かって作品を作り続けるアーティストが参加しています。ご紹介するのは、「世の中に足りないものはキュンキュンとチョメチョメ」という2人組のユニット・キュンチョメです。

【VTR】
45分の映像作品、「声枯れるまで」。

■「声枯れるまで」本編
「やっぱりどこか自分がストレートに生きられなかったことに対して、なんかどっかごめんなさいって気持ちもやっぱあったんです」
「ごめんねっていう思いがあったから、せめて名前だけでもとか思ってましたね」

生まれついた性に違和感を感じ、性を変え名前を変える。大きな決断をした人へのインタビューです。途中からスクリーンは暗転します。
■「声枯れるまで」本編
「あなたが決めた」「私が決めた」「あなたの名前を」「僕の名前を」「声枯れるまで」「声枯れるまで」「大きな声で」「大きな声で」「叫ぼう」

闇の中に絶叫だけが響きます。

足もとが揺らぐような気持ちが解き放たれるような経験したことのない、感覚でした。

Q叫ぶシーンを暗転させたのは?
■キュンチョメ ナブチさん
「それは視覚は必要ないからだと思うんです」
■キュンチョメ ホンマエリさん
「もう叫ぶ声だけでいいっていう感じですね。あの瞬間は声を浴びてほしい」

キュンチョメは、東日本大震災をきっかけに結成されたホンマエリさんとナブチさんのユニットです。避難指示区域として封鎖される直前の町にタイムカプセルを埋めにいく作品で注目されました。

その後、沖縄の抱える問題をテーマに制作したのが「完璧なドーナツを作る」です。ドーナツをアメリカに、ドーナツの穴を沖縄に見立て、あらゆる立場の人に完璧なドーナツとは何かを問いかけました。様々な立場や思いが交錯する問題を描くこと自体の難しさを突きつけます。

Q基地の問題などをからめる時に、これやったら怒られるかなとかそういう心配はありませんでした?

■キュンチョメ ホンマエリさん
「もうめっちゃ緊張しましたよ。ドーナツ持っていきながら、もう汗だくになってましたからね、ドーナツが。怒られるだろうなっていうのはもう前提なんですよね。でもそれはある意味何かを作るとか、しかも撮るとかって、どうしてもエゴイズムとか暴力性って出ちゃうので」

■キュンチョメ ナブチさん
「ただ、我々もラブの気持ちでやってるっていうのはあるかなと思います」

Qラブって作品の中でどう機能しているんですか?
■キュンチョメ ホンマエリさん
「元々は怒りを込めて作った作品だとしても、怒りを怒りとして出すんじゃなくて、そこにユーモアとかラブとかがちゃんと入ってこれてるかってことはとても大事な基準にしています」

■キュンチョメ ナブチさん
「愛って最も当たり前のもので、 最も陳腐化しているものじゃないですか。それに出会い直すっていう経験ができるのが僕はアートだと思うんです」

社会をアートで切り取ってきた2人がこれから目指すのは…。
■キュンチョメ ナブチさん
「今はもう、なるべく電気を使わないように、 使わないような作品を作りたいと思ってて、はい 」

■キュンチョメ ホンマエリさん
「もっとオーガニックに表現したいっていうことですね。 例えば美術館ってもちろんすごく素晴らしい場所なんですけど、 守られすぎているし、いろんな場所でふわっとできるような作品っていちばんいいと思っているので、どんどんシンプルにある意味抽象的にもなっていってるかなと思います」

【スタジオ】
(東島記者)
そもそも、キュンチョメの2人は映像作家なの?写真家なの?何をしているの?という疑問を抱かれた方もいるのではないでしょうか。これがまさに現代アート特有の「コンセプチュアルアート」というものです。

社会的に立場の弱い人や生きづらさを抱えている人たちの思い、それをアートという形にして私たちに伝えようとしているんです。だからそれは動画でも写真でも絶叫でも形は自由で、意味はわからなくても興味を持って貰うことが大切なんです。

キュンチョメの作品を観ることができる「ライフ2」は、熊本市現代美術館で12月8日まで開かれています。

熊本県民テレビのニュース