テーマパーク再生のプロ、「刀」森岡毅CEOに聞く 「イマーシブ・フォート東京」を“完全没入体験”で世界展開のテーマパークへ
東京・お台場にオープンした新しいテーマパーク「イマーシブ・フォート東京」。最大の特徴は“完全没入体験”。数々のテーマパークを成功に導いてきた株式会社「刀」が運営するこのテーマパークの狙いを森岡毅CEOに聞きました。
■「ライブエンターテインメント」を大きく進歩させる「イマーシブ体験」
ーーイマーシブ体験に特化したテーマパーク作った狙いは?
森岡毅CEO「日々デジタル、AIの技術が進んでいく中で、テーマパークに代表される“生で自分がその場で楽しむ”というライブエンターテインメントも大きく進歩させないと、いずれ飽きられると思っています。エンターテインメントは常に新しく革新されていくべきだと思っています。従来のテーマパークは、パレードが通ったら自分は座って手をたたく、あるいは乗り物も100人乗ったら100人とも同じような体験をする、これはこれで楽しいんですけど、“イマーシブでできる完全没入体験”は、観客が“第三者的に見る”のではなく、大変な現場や事件に“そのまま入り込む”“傍観者から当事者に”というのが一番違うんです」
■“傍観者から当事者”ハラハラトキドキ体験
「イマーシブ(没入)体験」は、2000年代のロンドンで「イマーシブシアター」と呼ばれる「体験型演劇作品」として始まったといわれています。特徴は、観客が演劇に参加し、登場人物として物語に参加することもできるなど、作品の世界観に入り込みやすい鑑賞法とされているといいます。「イマーシブ・フォート東京」では、11のアトラクションの全てが「イマーシブ体験」で構成されていて、中には、名探偵「シャーロック・ホームズ」の世界で連続殺人事件の謎を追う“体験”もあります。
森岡毅CEO「“臨場感のある”じゃなくてプロの俳優たちの演技で、“事件”をそこに作り出して、その中に人を巻き込む。例えば、本当の殺人事件を見たことがある人はほとんどいないと思います。その事件を目撃してしまう、あるいはその犯罪に自分が関わってしまう、そういう(疑似)体験をしたときに“自分の心がどう動くのか?”この“ハラハラドキドキ”を従来のテーマパークでは成し得なかったレベルで体験できるのが「イマーシブ」の面白さなんです。このハラハラドキドキ感というものが、従来のテーマパークの先を行くものとして日本に持ってきたかったんです」
■「イマーシブ体験を集めたテーマパーク」で世界へ
森岡毅CEO「イマーシブシアターは、少ない人数だったら満足させられるということには、世界のあちこちで成功してきてるんです。でも、これを一気に100人、200人近くを満足させられるっていうのは、今回「刀」のノウハウを動員して世界で初めて、ここでやっているんです。この規模でイマーシブシアターを集めてテーマパーク化しても、(お客様の)すごい高い満足が作れるかどうか。まずは「イマーシブ・フォート東京」が、ある程度うまくいく前提に立ったときに、ここで実際にデータがたくさん手に入ります。これを分析して、ビジネスモデル上、さらに勝つ確率が高いように手を入れながら、世界で勝負したいんです。日本発のイマーシブ体験をテーマパーク化することに成功したノウハウを使って、日本のコンテンツを世界中で楽しんでいただいて、日本のことが好きになっていただく。そして現地の方に働いてもらいながら、そこで上がった売り上げからライセンス料とかをしっかりと日本に還元していって日本に納税するっていうこのビジネスモデルで世界展開をしていきたい。」
■世界で一番面白いライブエンターテインメントは東京お台場にあるーー今あるイマーシブ体験が完成形ではない?
森岡毅CEO「テーマパーク全般に言えることですけど、完成したと思った瞬間に衰退が始まるので、常に新しいものに入れ替えていって、もっと面白くしていく日々の改善は、ずっと続けていかなくてはいけない。運営ノウハウももっと磨いて、パフォーマー、クルーの能力もどんどん高めていきます。また、あるシーズンになったら面白い企画があったり、まだ発表していないアトラクションもあります。常に新しく、面白い「世界で一番面白いライブエンターテインメントは東京のお台場にある」と、皆さんが認識していただけるような、未来を作りたいというふうに思っています」