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企業トップに聞いた「今年の賃上げ」サントリーHD・新浪剛史社長

2024年1月6日 18:00
企業トップに聞いた「今年の賃上げ」サントリーHD・新浪剛史社長
約30年ぶりの賃上げ率となった昨年に続き、今年も賃金上昇への期待が高まる経済界。春の労使交渉(=春闘)が始まるのを前に、サントリーホールディングス・新浪剛史社長に賃上げの見通しなどについて聞きました。

■賃上げの重要性は?

「いわゆる消費者物価が上がった分は必ず賃金が上がるんだっていうのは、実は欧米においては社会的通念なんです。日本においては今までそういうことがなかったんで、むしろ、下げないけど今を維持するということが社会的な通念だったわけです」

「しかし今後はそうじゃなくて、間違いなく今後とも続いていくのは、人手不足。が故に、物価も今年度は2.8%(上昇)と、日銀が言ってるわけで、その次の年もそうだと。少なくとも3%前後も上がってくのが前提で、そうであれば、それを上回る賃金を企業としては提供していくんだと。こういったことをしていかなくてはいけない。そして、それに基づいて企業経営をしていくんだと、そうした意味では、もう自動的にそれ(賃金)は上がっていくんだということを社会通念にしていかなくてはいけない。こういう趣旨で話をしたわけです」

「経済同友会としても、基本的にこういうノルムを作っていくことが大切で、そして生産性を上げていくという。今までは生産性が上がって賃金が上がる。そうじゃなくて、CPI(消費者物価指数)が上がるんだから賃金が上がるのが当たり前だと。それ以上に生産性を上げて、収益を上げて、一緒に働く人たちと企業が共有していこう、こういうことです」

「人材に対する投資ができない企業は退出するってことに(今後)なってるでしょうね。ですからそれが新陳代謝を生み、人にとってはいいことなんですよね。賃金が上がり、人に対して投資をしてくれる、そういった会社にいこうじゃないかと。ですからこれは人材の流動化にも繋がってくる、そういう話になります」

「企業にとっては、いい人材を獲得したいんで。やっぱりそういうことをやれる企業が生き残ってくる。また、そういう企業が人材をもっと広く集めることができる、こういうことだと思います」

■今年の賃上げは?

――新浪さんは10月の時点で既に(賃上げの)数字、7%という数字をあげて、サントリーでは7%の賃上げの方向ですとおっしゃってたんですけども、実際そのように7%ということになりますか?

「7%以上にできると今、自信を持っておりまして、そういう方向性でやっていきたいと思っています」

「私は日本の経営者みんなが(賃上げ)やりたいなって思ってるんだと思うんですよね。でも少し背伸びしてでもやろうじゃないかっていう、そういう企業が増えてきたんだと思うんです。そういった意味で、人への投資。これ、岸田政権が非常に標榜してたことですけども、これは我々経営者がみんな思ってたことなんですよね。これじゃいけないと。一方で、人手不足がこれだけ起こってきましたから、それが拍車をかけて、みんな経営者がこういうことやろうじゃないか、そういうふうになったんだと思うんです。そういった意味で7%以上上げるところもあるわけで、早期早期にこれをアナウンスがされることによって、私は働いている人たちが安心して、じゃあ消費をしようとか、なんかちょっと土日は贅沢してみようかなってこんなようなことになってくる。これが非常にほんわかとしたいい経済社会になっていくんじゃないかな」

「そういった意味で今までは昭和・平成というのは前提が高度成長であり、労働人口が増えるんだって前提で全部やってきたんですね。そうじゃなくてもう高度成長はないんだと。低成長だと。しかしそんな中でどういう幸せを掴んでいくか、これが令和モデルだと私は言ってるんです。その時に重要なのがみんなで助け合って、しかしちょっとした幸せを享受しながら、一方で資本主義はしっかりやっていこう。こういった社会に、新たな社会になっていく。そういった元年に今年はなっていきたいなと、していきたいなと思います」

■今年の日本経済は?

――賃上げ、今年が正念場ってあちこちで聞きますけど、今年が大事なんでしょうか?逃すとどうなるんですかね?

「この4月にだいたい皆さん給与が上がるか上がらないか明確になってきますよね。しかし、継続的に本当に上がるかどうかって、働く人たちは疑ってるんですよ。過去30年上げてこなかったんですから。経営者に対して本当に信頼してるかというと、信頼はしてないんですよ。ですから継続的にやれたと、2年連続で、それも前の年を上回った。このようなことになってくれば、きっと給与って上がってくるんだと。そうなった時のウェルビーイング、つまり、働く人たちの気持ちってどうなるか。それが伝播してきますよね。これを私たちは作っていかなきゃいけない。そういった意味で24年はすごく重要で、そして継続的に25年、26年と(賃金が)上がっていく社会を作っていかないといけない。新たな経済社会ってものをこの30年と決別して作っていく、そういう年だと、そういう意味ですごく重要なんです」

「働きたい人は、ひょっとしたら65歳以上も働きたいと思うわけです。多分多くの方がそう思われているんです。そうすると生涯年収が増えますよね。ある学説なんですが、生涯年収が増えると消費も増えるんです。そうすると経済もまわるんです。こういったことで、ぜひとも生涯年収をいかにアップしていくか、そして65歳以上も現役でいよう、生涯現役と。こういったような新たなコンセプトで、この24年以降を、新たな日本経済をつくっていく、こういった年にみんなでしていきたいとこのように思います」