あす“集中回答日”どうなる?春闘
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。15日のテーマは「どうなる?春闘」。日本テレビ・小栗泉解説委員が読み解く。
■春闘って?
16日は、製造業大手各社の春闘集中回答日。春闘は労働者と経営者の間で給料や待遇をめぐり行われる交渉のことだが、16日に出される製造業大手の回答が、その年の春闘の「相場」となって中小企業の判断にも影響を与えることになる。
■注目はベア
注目は基本給が上がるベースアップ(ベア)がどの程度になるか。一般的に基本給は年齢や勤続年数に応じて上がっていくが、ベアは基本給全体の水準を底上げする。
ベアに踏み切ると、基本給が上がるだけでなく基本給を基に計算されるボーナスや退職金の引き上げにもつながるため、企業の負担が大きく増えることになるから、経営者は慎重になりがちだ。
ただ、春闘のリード役と言われているトヨタの回答で見てみると、2014年は月4000円のベアを求めたのに対し、2700円のベア回答。2015年は月6000円の要求に対し、過去最高となる4000円と回答している。トヨタだけでなく、過去2年は多くの企業がベアを実施した。
■なぜベアが実現?
その理由の一つには、2014年から政府が経営者にベアを含む賃上げを要請したことがある。
2014年、2015年と円安で輸出企業を中心に業績がアップする中、その収益を賃金に回すことができれば家計に余裕が生まれ、消費の拡大につながって経済の好循環が生まれる。この好循環を実現するため、政府の要求に応じた企業の経営者が賃上げを実施した。
■今年はどうなる?
これまでの交渉では、経営者側と労働者側でベアについて意見が対立している。経営者側の経団連・榊原会長は「年収ベースでの賃金引き上げを期待している」と、ボーナスや手当などで年収が上がればそれでいいと、必ずしもベアにこだわっていない。
一方、労働者側の連合・神津会長は「ボーナスを上げればそれでいいかというと、違う」として、業績が悪くなれば下がってしまうボーナスではなく、あくまでベアにこだわっている。
■焦点は中小企業
中でも今年の焦点は中小企業がベアできるかどうかという点だ。実際、昨年度、大手企業でベアを実施したのは約63%となっているが、企業全体の9割を占める中小企業でベアを実施したのは約18%となっていて、大手と中小との間で大きな差が生まれている。
■個人消費も縮小
また、個人消費を見ると、第2次安倍内閣が発足した2012年は308兆円だったのが、2015年は306.5兆円と1.5兆円程縮小した。つまり、確実に給料が上がっていくベアが中小企業にまで行き渡らなかったことなどもあり、消費に回っていないのが現状だ。
■専門家「多くの大手企業でベア実施」
今年の見通しについて、労働問題に詳しい日本総研の山田久さんは「去年ほど大幅アップとはいかないまでも、多くの大手企業でベアを実施するだろう」「一方、中小企業がベアを実施するには厳しい状況だが、人材を確保する上で何らかの賃上げをする企業もあるのでは」と話している。
■「全体の底上げを」
経済の底上げをするためには、大手企業だけではなく中小企業など幅広い層でのベアが必要だ。実際、トヨタの組合の場合、「自分たちの要求分をグループの部品会社に回してほしい」と、今年や去年よりも要求額を抑えるなどの動きが見られた。果たして、全体の底上げにつながるのか。