スタバ急成長支える人材育成の秘訣 3/4
スターバックスコーヒージャパンCEOの関根純さんに聞く「飛躍のアルゴリズム」。3つ目のキーワードは『チェーン的な事はしない』。
サードウェーブ、コンビニコーヒーなどの台頭で激化する競争の中、スターバックスの“決め手”とは。
■チェーン的なことはしない
――最近、“ブルーボトル”“コメダ珈琲”などの店舗も進出してきたが、ブランドイメージを保つための努力とは?
店舗数が多くなり、いま1160とか1170。毎日できているので正確に把握していませんが、そうなってくると怖いのはコモディティー化です。「どこにもあるね」というのが一番怖いので、一店舗ごとに個性を持たせて「1000あれば1000の個性」だと言っています。
大きくなってもやっぱりブランドとしてのプレミアムなポジションを維持することがたいへん大事なことだと思っています。“店舗”“パートナー(従業員)”“ドリンク”の3本柱がしっかりとしたクオリティーを持っていないとできないことなので、そういうところに一番注力しています。
――あえてチェーン的なことはしないということですが、具体的にはどういう所を大切にしたいとお考えでしょうか?
基本的なチェーンオペレーションは「セルフのオペレーション」と言われているんですが、我々はセルフサービスをしているつもりはないんですね。ただ、手法としてはやっているというだけで。
お客様とパートナーの間でしっかりと会話があって、対話があって…そこを無くしてしまうとただの機械的なチェーンオペレーション、チェーン店になってしまうのではないかと思っています。店舗ひとつひとつの個性を出しつつ、業態的にも幅を広げながら「コモディティー化しない」ということに強い意志を持ってやっているところです。
■台頭するコンビニコーヒー対策は?
――コンビニコーヒーが頭角を現していますが、何か影響はありましたか?
おかげさまでドリップの杯数にはいっさい影響ありませんでした。コーヒー1杯にコンビニさんは100円、我々は310円ほどいただいているわけですけども、このお値段を決めるのは、消費者の方だと思うんですね。
クオリティーと店舗の環境と、そして何よりもパートナーのサービス。これがしっかりと三位一体となって310円を払っていただいているので、競合さんがどうしたというよりも、自分たちが310円を払っていただけるためのクオリティーを保ってしっかりやっていく。それがいまできているので、お客様が離れていかれないと確信していますし、そのまま続けていきたいと思っています。
――コンビニや他のチェーン店のコーヒーを飲んで分析はするのでしょうか?
当然のことながらですね。コーヒーは大好きなのでたくさん飲んでいます。
――コンビニコーヒーの急速な広がりに脅威を感じるときもあったのでしょうか?
そういうことを聞かれることが非常に多いのですけども、コンビニコーヒーだけでなく、いろんなところがコーヒーをどんどん拡充されているし、全体的に広がってきていますが、あまり人のことを意識しないで「自分たちがどうあるべきか」ということをずっと注力してやってきているので、そこを特に意識して対策をしたことはこの数年間全くないですね。ちょっと偉そうかもしれませんが。
■20年目の新戦略は“やんちゃな大人”
――今年で日本進出20周年となるわけですが、新たな戦略はあるのでしょうか?
私がスターバックスに来たのはちょうど5年前。会社はまだ“15歳の少年”でした。いよいよ成人式ということで、「どんな大人になるのか」というところ。企業としてはアメリカの100%子会社でしたし、いろんな自由度が出てきたので、今まではストイックにエプロンを着けて1つのビジネスをやっていたんですが、これからは何でもできる。
また、デジタルの進化とともに、いろんな形で世の中が変わってきていますから、その変化に急速に対応しなきゃいけない。だとしたら、“よいこの大人”じゃなくて、もっと“やんちゃな大人”になろうといま現場で言っています。
何でもできる、もっといろんな事にチャレンジできる。そうやって会社としての夢が広がることによってパートナーも元気になりますし、そういう面では私自身が一番元気でなきゃいけないので、一生懸命、年齢に負けないように頑張っています。