MS樋口氏“IT巨人”の危機感と未来図2
日本マイクロソフト執行役員会長の樋口泰行氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。2つ目のキーワードは「ダイエー再生で学んだ、リーダーに必要なのはエモーショナルな力」。現場の人たちと一緒に働くのが好きだという樋口氏、企業再生の裏側を聞いた。
■企業再生に必要なのは「エモーショナルな力」
――樋口さんといえば日本マイクロソフトの社長に就任する前に、流通大手のダイエーの社長として、ダイエーの再建を進められたことでも知られています。ここで経営者として学ばれたことというのは具体的にどのようなことでしょうか?
企業の再生は2種類あって、1つは構造改革ですね。もう1つは営業力の強化といいますか、売上アップ、成長させるということです。構造改革の方は、例えば店舗を閉鎖したり、工場を閉鎖したり、事業のポートフォリオを見直したりという改革なのですが、これは比較的、やることはもう決まり切ったことで、割とこの答えはすぐ出るんですね。ですから「粛々と実行する」のみということなんです。
しかし問題は、やはり売り上げを伸ばして成長路線にもう一回戻していくということのほうが、はるかに難しいです。ダイエーの場合、小売りなんですけど、なかなか差別化が難しい。差別化が難しければ難しいほど、人のモチベーションが大事になる。
その時にやはりリーダーがどれだけ「パッション、エモーション」をもって、やっているかということがどれだけ社員に伝わるかでパフォーマンスが変わってきます。そのことをイヤというほど思い知らされました。
■論理的な正解よりも、現場で一緒に
――ダイエーといいますと産業再生機構とか投資ファンドのもとでの支援を受けて再生をしていましたが、その中で樋口さんらしさというのはどのように出されていたのでしょうか。
論理的に、これが正解だからこういう戦略をするというよりも、現場の人たちと一緒に働くのが好きだし、そういうスタイルでしたので、構造改革、店舗閉鎖、リストラが終わった後は、人心を立て直して、一緒にやるというところは、割と自分にあっていて得意なところだと思うので、そこで頑張りました。
――よく現場力ということをおっしゃっていましたが、現場にもかなり行かれたのですか。
特に、閉める店舗につきましてはほとんど全部回りましたし、それ以外の店舗も時間が許す限り、回ってモチベーションアップをしていきました。