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「無い。だから創る」ファクトリエの挑戦3

2016年11月24日 16:16
「無い。だから創る」ファクトリエの挑戦3

 キーワードを基にビジネスのヒントを聞く日テレNEWS24・デイリープラネット「飛躍のアルゴリズム」。今回はファクトリエ・山田敏夫氏。3つ目のキーワードは「4年で500以上の工場を飛び込み訪問。日本のモノづくりから世界一流ブランドを作りたい」。


■現地のタウンページ開いて電話攻勢

――最近のファストファッションブームなどで、工場がどうしても低コストの海外拠点に重きが置かれてしまっていて、日本での生産がすごく激減しています。そんな中で、なぜ日本の工場に飛び込み訪問しようと思ったのですか。

 やはり、世界に誇る「日本からのモノづくりブランド」がなかったことです。私は別に起業家気質でもないですし、末っ子で、どちらかというと、兄がしっかりしていてという感じだったんです。起業するのが目的ではなくて、どちらかというと、そういう会社がなかったので企業せざるを得なかったほうかなと思っています。

 なので、工場と言ってもホームページを持っていませんので、全国各地に行って、その近くの産地にある駅の電話ボックスに入って、タウンページを開いて順に(電話を)かけていくんです。

 そうやって一つ一つの工場を回って、どういう状況なのか、どんな技術があるのか、今は青森から沖縄の43工場と提携していますが、一つ一つ僕らが作った30のチェックリストを見ながら工場を回って、本当にいい技術のある工場と手を組んで、長く残っていく取り組みをできたらなと思って、回り続けています。


■「怪しいやつ」だった…

――すぐに受け入れてくれる工場はありましたか。

 もう本当に変なやつですよね。この20年、赤字続きで何もいいことがなかったところに、急に「インターネットを使って自分たちの工場の名前を使って売りましょう」って。

 資本金もたった50万円、会社を作って2年半は、社員は自分1人だけだったので、社員数を聞かれても「1人」ですし、資本金を聞かれても「50万円」ですし、今思うと「怪しいやつ」でしかないですよね。


――それでもあきらめなかったんですか。

 今もそうですけど、「日本の工場を救っている」と思うことは1回もなくて、どちらかというと「僕の夢を追い、一緒に追いかけてくれている」というのはありがたいなと思っているので、やはり「20歳の時に思った夢をかなえたい」と。

 それが結果として「日本の地方創生」だったり、日本のモノづくりが結果として良くなることに必ずつながると思うので、そこへの意志は頑固に無我夢中でやっていました。くじけるとかいうよりは「次の工場こそは」という思いで毎日やっていましたね。


■「モノづくり事業部の部長」として

――いざモノをつくるとなった時に、モノを作ったことがなかった山田代表が、どのようにして工場と一緒にモノを作っていったのですか。

 工場はデザインよりも実は下請けで、言われたことしかやることがなかったというものがあったので、どちらかというと「デザインってどうするんだ?」「パターンってどうするんだ?」「生産個数ってどうするんだ?」「そのリスクってどうするんだ?」。全部イチからです。

 なので、「僕らが全て買い取って云々(うんぬん)」ということになると、今までの商社とかと全部一緒になってきてしまったので、「工場が一定のリスクは負わなきゃいけないよね」とか、「どうやったらパターンを覚えてくれるんだろう」とか、今までの下請けで「これさえすればよかった」というところから、「よりプラスの一つ一つ階段を上っていく」というのを、膝を交えながら一緒にやっていく。

 工場に「デザインを作ってください」と言っても、1か月たっても出てこないので、僕らから原案を作って「こういう形だったらどうですか?」「いや、それだともっとこういうふうにしたほうがいいんだよ」というのを侃侃諤諤(かんかんがくがく)しながら。

 もう本当に今まで100%下請けだったところが自分たちの名前を使ってブランドを作っていくわけなので、その一歩一歩はいまだに、僕が一緒に付き添って、僕らは彼らの「モノづくり事業部の部長」と思っているので、未来を見据えてやっているというのが、昔から今も変わらずです。


――やはり高品質のモノをつくるためには、試作品のチェックなどもこだわっているんですか。

 最初の時に出そうと思っていたポロシャツは結局1年半くらいかかって、2年くらい売れなかったというのもありますし、最初に作ったシャツ20回以上試作しました。

 結局、世界の一流ブランドに負けないくらいの品質でモノづくりにこだわれるかと。僕は「モノブランド」だと思っているので、そこをやっぱりこだわって、全国にある工場と自分たちの名前が出るので、それに恥じないものを作ってほしいと思っています。