トリンプ 男性目線のブランド戦略とは 1
キーワードを基にビジネスのヒントを聞く日テレNEWS24・デイリープラネット「飛躍のアルゴリズム」。今回は、大手下着メーカー「トリンプ・インターナショナル・ジャパン」ブランドマーケティング部・横尾祐介マネージャー。累計200万枚のヒットとなったアンダーウエアには「常識を覆す“3つのゼロ”」があった。
■経歴
1980年生まれの36歳。大手電機メーカーに新卒で入社後、「もっと自分で企画したい」という思いから、2004年にトリンプ・インターナショナル・ジャパンへ。
入社当時は百貨店担当の営業として勤務していたが、2013年からブランドマーケティング部に配属。現在は国内で累計200万枚の売り上げを誇る「スロギー ゼロフィール」などを展開するアンダーウエア「スロギー」ブランドのマーケティングなどを手がけている。
■常識を覆す“3つのゼロ”
――1つ目のキーワードは「累計200万枚のヒット商品。ラクさは常識を覆す“ゼロ”にあった」。「スロギー ゼロフィール」は、普通のブラジャーと違い、軽くてよく伸びて、ホックもありません。“ゼロ”というのをキーワードにしているということですが?
見ていただいた通り、普通のブラジャーという感じではないですよね。ワイヤもないし、ホックもない。ストラップもなければ、タグもない。普通のブラジャーと全然作りが違うものなんですけれども、「スロギー」には、特徴として3つの“ゼロ”があると思っています。
まず1つ目は、これは最大の特徴なんですけれども「縫い目ゼロ」ということです。裏にも縫い目はありません。この柔らかな生地を全部接着だけで作り上げています。
(本来)縫い目のところも、全部のりでとめてるんですけれども、(のりは)全部ドット状、点状でとめているんです。べたっとのばして(のり付けをすると)、のりが固まって(生地が)伸びにくくなるし、ドット状につけると、とめているところも伸びがいいんです。
縫ってる部分は糸があると伸びないですから、そこだけ締め付けを感じてしまうこともあるんですけど、縫い目がないことで、(体が)動いても全然締め付けがないというようなところも、この「縫い目ゼロ」で達成できていると。
「縫い目ゼロ」があることで、次に出てくる2つ目の“ゼロ”が「肌あたり感ゼロ」です。当然、縫い目の部分では糸があったり、折り返しがあったりして、肌にあたる感じがあると思うんですが、縫い目がないので、それも当然ないと。
「折り返しが肌にあたるなあ」ということもないので、肌あたり感も抜群にいいというのがあります。もちろん素材自体も肌触りがとても気持ちがよく、サラサラしていますので、これも「肌あたり感ゼロ」のところには、気にしています。
3つ目の“ゼロ”は「締め付け感ゼロ」。実はこれが一番重要なんです。
――締め付けってどうしてもあるものだと思うし、やはりバストを固定するものだと思うのですが。
やっぱり女性の中で、ブラジャーというものは「締め付け感があって当たり前である」という価値観というか考え方というのが当然、今までの下着だとあるんですけれども、(スロギーは)ワイヤの部分もないですし、最近の「ラクなブラジャー」であるような、例えばアンダーの部分にゴムがついていたりということも一切ないわけですね。
なので、当然体を締め付けてくる要素というのがすべてなくなっているんです。柔らかいこの生地だけで体を包み込まれているような状態になりますから、これだけ伸びる。柔らかく伸びて柔らかく戻りますので、これが「締め付け感がない」を達成しているところになります。
――今回、ヨガをする時に試着したんですけれども、やっぱり締め付け感もないですし、やっぱり伸びるのがスポーツの時にも適しているのかなって思ったんですけれども。
ヨガだと、やっぱりその時はリラックスして気持ちよくいたいし、動きも伸びがあったりすると、動きの機能的な部分もそうですし、気分的にもやっぱり締め付け感がないっていうのは、とても快適に過ごせるので、本当にピッタリしたシーンにはなるかなと思います。
■スロギー最大のこだわりは?
――「スロギー ゼロフィール」は今年に入って10月までの時点で100万枚の売り上げを達成したそうですが、横尾さんがこだわったところは、どこにあるんでしょうか。
やっぱり「楽チン系」のラクな下着っていうのは、僕が考えるに、ちょっと世の中の女性にとってネガティブな印象というのがあるなと。いろいろお客様の声とか、女性の声を聞いていると出てきたというところがありましたので、こだわりとしては、どうこれをポジティブに伝えていくのかというところにこだわってきました。
具体的に2つあるんですけれども、1つはやっぱり見た目の部分。「スロギー ゼロフィール」はプリントタイプもありますけれども、カラー自体は現在16色あります。
いわゆる「楽チン系」な下着って、例えばベージュとか黒とか定番的なシンプルな色しかない。見た目も、ちょっと年配の方向けの「デザイン的にどうかな」っていうようなアイテムが世の中に多かったりするんです。
(スロギーは)ルックスもスポーティーな感じで、カラーもこれだけバリエーションがあると、気分的にやっぱり、その下着を着けていても何か心地よくいられる、ちょっと元気になれるというところで、商品上のポジティブさみたいなところも出しています。
2つ目は、これをどういうふうにお客様に伝えるかという時に、「いつものワイヤのついてる下着だと“ちょっとこのシーン気になるな”というシーンのところで使ってね」という提案をしていこうと考えたんですね。
ヨガだったり、家でリラックスをしている時だったり、旅行の時だったり、いろいろ調べていくと、どれも結構自分の時間を楽しんでいるポジティブな時間帯だったりするんです。
なので、そこをお客様に「こういうシーンで使ってみたらどうですか」「こういうシーンで選んで使ってみるのには適してますよ」という伝え方をしていく。
そうすることで、ただ単に女性としてラクな下着をつけると、何となくだらしない体みたいな印象を思ってしまうところを、「あ、これでもいいんだ。これを選んでいる私って、きちんと快適なものをここで使ってるからいいんだ」というふうに思える「肯定感」をきちんと出していこうと。
――それまでの概念を覆すようなものなんですね?
そうなんです。