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政府が政策発表「教育無償化」格差解消は?

2017年12月8日 20:15

 政府は8日、「人づくり革命」などの実現に向けた2兆円規模の政策パッケージを発表した。その柱となるのは「教育の無償化」。経済的に恵まれない家庭を支援することで、子供たちの格差を解消しようとするものだが、課題は少なくない。

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■子供たちに無償で食事を提供「こども食堂」

 あたたかい湯気を上げる卵焼き。用意されていたのは、ごはんにみそ汁にから揚げなどの家庭料理――ここは子供たちに無償で食事を提供する「こども食堂」。食卓を囲んでいる子供の多くは経済的に困難な状況にある。週に一度の開催だが、利用者は絶えないという。

 厚生労働省の調査では、子供の7人に1人が貧困状態にあるとされている(2016年国民生活基礎調査)。子供のころの貧困が将来的な収入の格差につながるともいわれている。こうした経済的に恵まれない家庭に育つ子供たちを支えようと、安倍政権は「教育の無償化」を掲げ、8日に政策パッケージを発表した。

■柱は幼稚園、保育所の無償化

 0歳児から2歳児までは住民税が非課税の世帯、3歳児から5歳児までは全世帯が対象で、2020年4月から全面的に実施する。また、私立高校や大学なども低所得者世帯は無償化したり、授業料を一部免除したりするという。

■家庭・学校以外の子供たちの“第三の居場所”

 「こども食堂」を運営する宮城・仙台市のNPO法人「アスイク」フリースクールは、仙台市内のフリースクールで貧困や虐待、不登校など学校や家庭になじめない子供たちも受け入れている。行き場を失った子供たちに家庭・学校以外の“第三の居場所”を作った。

 生徒「ずっと通いたい。中学生とかになってもずっと通いたい」

 こうした子供たちの「受け皿」はまだ少なく、国の支援も十分ではない。

 NPO法人アスイク・大橋雄介代表「色んな子供たちが行きやすい場所をたくさん広めていくということが必要ですし、そういう居場所を継続的に運営していくための取り組みということも大事」

 このNPO法人は、民間企業などの助成金を受けているが、事業の運営は1年先も見通せない状況だ。

■文京区の学校に通う全中高生が利用できる施設

 一方、文京区ではこんな取り組みも。完全防音のスタジオでドラムの練習をする少年。広いホールの鏡の前で、音楽に合わせてダンスを練習する中学生たち。こうした場所を中高生が自由に使えるのが、2015年にオープンした文京区青少年プラザ、愛称は子供たちが名付けた「b-lab」。文京区内の学校に通う全ての中高生が利用できるこの施設。様々な学校や学年の人たちと一緒に勉強、遊びなど自由に過ごせる場所であり、スポーツ、学習支援などのイベントも行うことで、様々な「経験」をできるようにサポートしているという。

 文京区青少年プラザb-lab・白田好彦副館長「未来の可能性を広げるという意味で、この思春期で様々な機会を得ることが大切だと考えています」

■子供の「経験の格差」が問題に

 山や海、動物園など、子供が学校の外で経験する教育的、文化的な「経験の格差」が今、問題となっている。この「経験の格差」は学習意欲や学力にも影響すると言われている。

 b-lab・白田副館長「こういった格差にいちはやく気付いて、私たち大人側ができるサポートをしていくということが、とても重要で、答えのない課題だなと」

 子供たちを苦しめる目には見えない貧困や格差。「学校の外」にも様々な居場所を作るなど、きめ細かい対応が求められる。

■民間活動支援に…「休眠預金」活用に期待も

 民間活動への支援としては、税金による支援の他に、休眠預金の活用も期待されている。銀行には引き出されずにたまっていく休眠預金が毎年約600億円ずつあるが、政府は昨年、これを有効活用する法律を定めた。その中では子供及び若者を支援する活動にお金を回すことが決まっているので、ぜひ有効活用してほしい。