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ロシアに支払う漁業協力費、漁獲枠の取り決め…日ロさけ・ます漁業交渉の行方

2022年4月16日 7:00
ロシアに支払う漁業協力費、漁獲枠の取り決め…日ロさけ・ます漁業交渉の行方

ロシアから日本海域に回遊してきたさけ・ますについて、漁獲量の上限や、ロシアに支払う漁業協力費を決める「日ロさけ・ます漁業交渉」。

制度が始まって以来、毎年交渉は行われ、妥結してきました。

しかし今年は、ウクライナ情勢が交渉に大きな影を落としています。

その行方はどうなるのでしょうか?

   ◇

「ただ魚を捕るだけの問題じゃないことを、ご理解いただきたい」今月12日、金子農水大臣は「日ロさけ・ます漁業交渉」について、このように発言しました。

毎年行われている、日ロさけ・ます漁業交渉。

今年はロシアによるウクライナ侵攻の影響で、日程調整に手間取ったものの、11日からオンラインでスタートしました。

日本がロシアへの経済制裁を強める中で行われている、今年の交渉。

果たしてどのような形で決着するのか、注目されています。

■さけ・ますは“生まれた川”が重要

通常、日本の200海里水域で漁を行う場合、日本は自由に漁を行うことができます。

しかし、さけやますの場合、その特殊な習性から、毎年ロシアとの話し合いが行われています。

一般的にさけやますは、川で生まれて、海を回遊した後に、生まれた川に戻ってくる習性を持っています。

こうした習性を持つ魚については、国連海洋法条約で、「生まれた川の国が利益と責任を持つ」と定められているのです。

4月中旬から7月ごろにかけて、北海道沖などで捕れるさけやますの多くは、ロシアの川で生まれた魚です。

つまりロシアに漁を行う権利があります。

そのため、毎年さけ・ます漁が始まる時期に、日ロの政府間で交渉を行い、漁獲量の上限を決め、日本がロシアに漁業協力費を支払うことを条件に“生まれた国”ではない日本が漁を行うことができるのです。

■ブランド鮭に大きな影響が

去年の交渉は、5日間にわたって行われました。

支払った漁業協力費は2億6000万円。

漁獲量の上限は、2050トンという取り決めでした。

農林水産省のデータでは、2020年のさけ・ますの国内漁獲量と輸入量を合わせると、30万トンを超えます。

つまり、日ロさけ・ます漁業交渉の対象は、国内に流通するさけ・ますの1%弱。

数字だけを見ると、この交渉が私たちの食卓に与える影響は、ほとんどないようにみえます。

しかしこの1%のなかには、希少価値があって人気の魚が含まれています。

「ときしらず」と呼ばれる、この時期に捕れるシロザケです。

一般に多く出回っている「秋鮭」は、回遊を終えかけて成熟した魚です。

一方「ときしらず」は回遊の途中で捕る魚のため、若くて脂がのっていると言われています。

その希少性から、「ブランド鮭」として一般的な秋鮭よりも高値で取引されています。

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■過去には、妥結しない中での操業も
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