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トランプ効果?ワインや牛肉値下がりに

2019年1月3日 22:41
トランプ効果?ワインや牛肉値下がりに

2019年はワインやチーズ、牛肉など輸入食材の値下がりが見込まれる年になりそうだ。多国間の経済連携協定が発効して関税が下がることが要因だが、その背景の一つには保護主義を強めるアメリカのトランプ大統領がある。

18年末。欧州産ワインの値下げが発表された。アサヒビールは、19年3月1日出荷分から、フランス、イタリアなどEU(=ヨーロッパ連合)内でつくられるワイン40品目について、価格を平均で約10%、最大17%引き下げる。サントリーは、フランスやドイツなど同じくEU産のワイン69品目について1~11%程度引き下げる。

これは、日本とEUの間でEPA(=経済連携協定)が19年2月1日に発効し、ワイン1本あたり約93円かかっている関税が即時撤廃されるためだ。

このほかカマンベールやモッツァレラなどソフトチーズは29.8%の関税がかかっているが、今後一定量の枠内で段階的に関税が引き下げられ、16年目には撤廃される。

EPAは日本とEUの間で貿易などの経済活動を活発にするために結ばれたもので、日本から輸出される自動車など工業品の関税も引き下げられる。

また、アメリカが脱退したTPP(=環太平洋経済連携協定)でも動きがある。アメリカが離脱したことで一時、崩壊の危機に直面したTPPだが、日本が主導して交渉を進めたことで、残りのオーストラリアやカナダ、ベトナムなど11か国で18年12月30日に発効。これによっても輸入食材の値下げが見込まれている。

例えば日本国内で消費される牛肉の約3割をしめるオーストラリア産は、関税が現在冷凍品で26.9%だが、15年かけて9%に引き下げられる。

大手スーパーのイオンは、関税引き下げの還元と商品のPRのため、本州と四国の約400店舗で、サーロインステーキ用の肉を約20%引き下げるなどのキャンペーンを始めた。

関税の引き下げは消費者にとってはありがたい話だが、多国間の経済連携を結ぶのは簡単なことではない。安い農産品の輸入は、国内の農業に打撃になるなど問題も多いからだ。

実際、日本とEUのEPAは、交渉開始から発効まで6年、TPPは8年がかかっている。ではなぜ発効がこの時期に重なったのか。これはアメリカのトランプ大統領の外交政策が影響していると言える。アメリカのトランプ大統領は、「アメリカ第一主義」を掲げ、これまで世界が議論してきた公平で公正な貿易のルールを重視しない方針を貫いている。自国の産業にある程度影響が出ることを受け入れつつ、貿易の活性化を優先させるEPAやTPPなど、多国間で自由貿易圏を作ることには否定的なのだ。各国からすれば、アメリカと一対一で貿易交渉をすれば圧倒的な政治力や経済力の違いにより不利な条件をのまされかねない。そこで、いわばその「防波堤」として、多国間の自由貿易の協議を加速させ発効を急いだと言える。

19年はさらにもう一つ別の自由貿易圏の議論が進む見込みだ。日本、中国、韓国のほか、インドや東南アジアなど16か国が参加するRCEP(=東アジア地域包括的経済連携)で、世耕経産相は年末、「世界的に保護主義的な動きが広がる中、自由貿易の旗手として主導的な役割を果たす」と述べて、19年中の妥結を目指す考えを示した。

日本がTPPやRCEPで主導的な役割を果たすのは、今後のアメリカとの交渉を意識しているためでもある。例えば、アメリカが日本にコメの輸入拡大を迫ってきた場合、TPPが発効していれば、「TPP以上は受け入れられない」といったように交渉で拒否する理由にできるからだ。

日本とアメリカとの間では、年明けからTAG(=日米物品貿易協定)の交渉が本格化する。アメリカからは自動車や農産品などをめぐり厳しい要求を突きつけられることが予想される。これまでの経済連携協議で培った経験で、アメリカとの交渉を乗り切ることができるのか。試練の一年となりそうだ。