観光地にも相次ぐ“値上げ” その背景は?
連日のように食料品や飲食店などの値上げのニュースをお伝えしているが、実はいま、全国各地の観光名所で入場料の値上げの計画が相次いでいる。観光客への影響も懸念される値上げ。その背景には何があるのか?
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澄み切った青空のもと、紅白に咲き誇る「梅の花」。多くの人でにぎわう、日本三名園の1つ、茨城県・水戸市にある「偕楽園(かいらくえん)」。
観光客「満開でいい頃に来られたなと思います」
無料で楽しめるのもこの庭園の魅力だが…
観光客「有料になるんですってね」
実は先月、茨城県が偕楽園(かいらくえん)の一部エリアを有料化する方針を打ち出した。有料化は早ければ今年の秋からで、料金は300円程度を想定。県民はこれまで通り無料だという。
県外から来た観光客「できれば無料の方がいいですね」
県外から来た観光客「園の維持とか環境整備にもお金が必要だと思うので必要かなと」
県によると“有料化のワケ”は、以前園内にあった建物を復元し、休憩施設としたり、新たな整備をしたりして、魅力度を向上させるため。
有料化されればおよそ1億円の収入が見込めるという。
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そして、来月から値上げが決まっているところもあった。
島根県・松江市にある遊覧船は、ゆっくりと景色を眺めながら松江城のお堀を巡ることができる。そして、見えてくるのが国宝「松江城」。就航開始から今年で22年がたった。
松江市観光振興公社・専務理事 乙部明宏さん「運営そのものが難しくなってきますので、値上げせざるをえない状況になってしまったと。心苦しいんですけど」
ここ2年は赤字が続いているというこの遊覧船。船着き場などの老朽化に伴う修繕費や、船の燃料代が高止まりしていることなどもあり、来月から値上げすることに踏み切った。(乗船料 大人1230円→1500円 小人(小学生)610円→800円 外国人820円→1200円 ※団体など除く)
さらに、別の問題もあった。
松江市観光振興公社・専務理事 乙部明宏さん「船頭さんが不足してきている時代です」
船頭の人手不足が加速。値上げすることで、これまで固定だった賃金を上げ、人材を確保する狙いもあるという。
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いま、相次いでいる公共観光施設の苦渋の値上げ。
東京の「新宿御苑(ぎょえん)」では、施設の整備費などにあてるため、今月19日から大人の入園料を500円に値上げする。(大人200円→500円 子供50円→無料)
さらに兵庫県・南あわじ市にある「淡路ファームパーク イングランドの丘」でも、今年10月から施設の改修費などのために大人の入園料を値上げするという。(大人800円→1000円子供400円→200円)
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そして、値上げの波は“あの国宝”にも及んでいた。
現存する五重六階の天守の中で日本最古の城「松本城」。築城からおよそ430年が経過しているとみられているため、城の周囲にある崩れた石垣の積み直しや、お堀の改修が行われていた。
さらに、耐震診断の結果で、大規模な地震が起きた際には倒壊の恐れがあり非常時に備え、常時、警備員を10人ほど配備。
松本城管理事務所・手島学所長「(警備員の人件費だけで)年間6000万円はかかってしまう」
そのため、来年1月から観覧料の値上げを決めたという。(大人410円→700円 小・中学生200円→300円)
観光客「国宝なので維持費がかかるのはわかるけど、現状維持でやってもらいたいのが一般庶民の考え」
観光客「行ったことない人は普通に払う額だと思う」
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モノだけでなく観光にまで及ぶ、値上げの波。苦渋の決断に迫られる名所は今後も増えていくのだろうか?