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「最低賃金」1050円台半ばに?──上げ幅“過去最大”でも物価上昇に追いつかず 理想は…専門家に聞く【#みんなのギモン】

2024年7月25日 13:33
「最低賃金」1050円台半ばに?──上げ幅“過去最大”でも物価上昇に追いつかず 理想は…専門家に聞く【#みんなのギモン】
厚生労働省の審議会で、来年度の最低賃金をめぐって議論されています。上げ幅の目安は過去最大で、1050円台半ばとする方向で調整されています。ただ物価上昇に追いつかない水準とみられます。経済評論家に、あるべき水準や賃上げの課題を聞きました。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「最低賃金1050円台半ばに?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。

●過去最大の上げ幅でも
●中小企業は…賃上げの課題

■審議会で議論…経営側は慎重な姿勢

加納美也子・日本テレビ解説委員
「最低限の時給である最低賃金の引き上げについて、厚生労働省の審議会が23日から佳境に入っています」

「2023年度の上げ幅は43円で、現在の最低賃金の全国平均は1004円です。今回の審議会では労働者側が、物価高の影響などを考慮して大幅な引き上げを求めたのに対し、経営者側は慎重な姿勢を示しているということです」

「関係者によると、過去最大の引き上げ幅の目安を50円程度として、全国平均を1050円台半ばとする方向で調整しているということですが、議論は今も続いています。働く人の生活に直結する時給について、東京・渋谷では24日、こんな声が聞かれました」

■「時給低いとモチベーションに…」

居酒屋アルバイト(37)
「(時給)1300円。(生活は)それなりですけど、そんなに余裕があるわけでもない。(最低賃金が50円上がった場合は)ちょっと分からないですけど、そんなに変わらないんじゃないかなと思いますね」

スーパーでアルバイトする大学生
「先月まで(時給)1150円だったんですけど、50円だけ上がりました。バイトが人が足りなすぎて、なんでだ?と店長と話した結果、時給が低いとモチベーションにならないからという事で上がりました」

加納解説委員
「アルバイトで生計を立てている人や、親からの仕送りがある大学生など、人によって違いがあるとは思います」

鈴江奈々アナウンサー
「大学生は学業がメーンですし、その中でアルバイトをしながら自分のお金を作っていくのは大変なことです。さらに物価高ですから、本当に生活は大変ですよね」

■もし時給が50円上がったら…?

加納解説委員
「現在の最低賃金から50円上がったとして、時給1054円として単純計算していくと、1日8時間で月20日勤務した場合、月に8000円収入がアップすることになります。1年間ですと、9万6000円アップということになります」

桐谷美玲キャスター
「9万6000円アップとなると、給料をもらう側も払う側にとっても、決して安い金額ではないですよね」

■10年で224円UP…最低賃金の変遷

加納解説委員
「最低賃金の全国平均はこの10年でググっと上がっています。厚生労働省によると2014年度は780円でしたが、2023年度は1004円。10年で224円アップしています。2023年度は1000円の大台を突破したと話題になりましたよね」

「しかし現状は、手放しで喜べるものではありません」

■節約中の50代男性を悩ませる物価高

加納解説委員
「埼玉県に住む50代の男性を取材しました。時給1280円の郵便配達で生活を支えていますが、食費を切り詰めるなど、節約に努める日々だといいます。さらに男性を悩ませているのが物価高です」

男性 
「やはり(買う)基準が半額。さらに下がればなおいいかなと。食事は欠かせないものだから。そこをどれだけ節約できるか」

「値段は以前と変わらないんですけど、中身の量が少ないとか、本数が少ない、グラムが少ないとか。(時給)1500円は最低でもあればと思いますね。みんながゆとりをもって日常の生活(ができる)、暮らしていけるような賃金体系を望んでます」

■首相が目標に掲げる最低賃金は?

森圭介アナウンサー
「給料を上げると企業としては人件費が増えますから、なかなか簡単ではないと思いますが、とにかく今ポイントなのは、給料の額が増えたとしても、物価の上昇がそれを上回っていると、実質賃金がマイナスになりますよね」

「賃金の額と物価の上昇のバランスが本当に重要になってきますもんね」

加納解説委員
「なかなか生活に余裕は出ないんですよね。男性は『最低でも時給1500円あれば』と話していましたが、岸田首相は最低賃金について、2030年代半ばまでに全国平均を1500円まで引き上げることを目標に掲げています。あと10年くらいはかかりそうですよね」

河出奈都美アナウンサー
「ただその10年でさらに物価が上がって行ったら、1500円なども高いというふうにはならなくなってくるかもしれないと思います」

■経済評論家「生活にゆとりが出ない」

加納解説委員
「経済評論家の加谷珪一さんは今回の引き上げの目安について、『最低賃金1050円台半ばは現実的には妥当』としながらも、『本当に最低限の水準で、物価上昇には追いついていない。物価の上昇を賃金アップが追い越さないと生活にゆとりが出ない』と話しています」

桐谷キャスター
「物価の上昇を上回る賃金にするには、どれくらい上げていかないといけないんですか?」

加納解説委員
「加谷さんによると、今年度は最低賃金が1100円に近いところまで行くのが理想だったということです。そして『2030年代半ばまでに1500円』という目標について加谷さんは、『物価上昇分しか上がらないから1700円にするべきだ』と話していました」

■中小企業の「短期的」「長期的」課題

加納解説委員
「ただ、賃金を上げるには課題もあります。加谷さんによると、そもそも日本の中小企業は大企業の下請けが多いですが、それゆえに2つの課題があるといいます。1つ目は、短期的な課題として大企業が下請けの中小企業にきちんと代金を支払うことです」

「中小企業は賃上げを実現するために、より利益を増やさなければいけないわけですから、原材料費の高騰などを受けた代金の値上げをきちんと大企業に申し出る、そして大企業はきちんと代金を支払うことが重要だということです」

「2つ目は長期的な課題として、中小企業全体が下請けにとどまらず、独自に商品開発や販路拡大をして自ら利益を増やす力をつけること。また、業務の効率を上げるため政府がIT化を支援することも大切だとしています」

鈴江アナウンサー
「日本全体で、働く人の約7割が中小企業です。そういった方たちが賃金アップでゆとりを感じられるということが、日本全体の豊かさの実感にもなると思います。中小企業の成長を促す支援も求められますね」

加納解説委員
「賃上げできないと人材は残らない、企業としても生き残れないという状況ですので、今こそ日本経済全体で変わっていかなくてはいけないのではないでしょうか」

(2024年7月24日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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