生成AI時代のはじまり 私たちの身近に広がる「生成AI活用事例」
2022年に発表されたChatGPTを筆頭に、生成AIの開発競争が激化している。そして2023年には、私たちの身の回りでも生成AIを活用したものが見られるように…。
「生成AI時代」が幕を開けた。2022年11月にアメリカのOpenAI社が発表したChatGPTは、その1年後、さらなる進化を遂げた。
2023年11月に発表されたChatGPTの新たな基盤「GPTー4Turbo」では、機能が大幅にアップデート。これまでは、2021年9月までの情報だったものが、2023年4月までの情報が反映されるように。
また、入力できる文字数が増え、およそ300ページの本1冊の要約ができるようになった。
ChatGPTを筆頭に、進化が止まらない生成AI。日本でも生成AIを活用する企業が広がっている。その一つが、食品企業大手の日清食品だ。
■日々の業務に生成AIが溶け込む日清食品HD
日清食品は自社の強みの一つに「営業担当者が提案する、エンタメ性のある売り場作り」を挙げる。
しかし、営業担当者たちは、ある課題を抱えていた。それは「業務のおよそ70%が会議や移動に費やされ、顧客のために使える時間は30%ほどにすぎない」こと。
そこで、非効率的な業務などを洗い出すことに。「売り場展開のアイデア出し」「商談資料の作成」「市場調査」…。およそ30の業務に、生成AIを活用することに決めた。
そして手がけたのが、生成AIによる「売り場展開のアイデア出し」。生成AIがわずか2分半の間に挙げた30ものアイデアの中から「レトロな雰囲気を再現したディスプレーコーナー」「商品キャラクターと一緒に写真が撮れるフォトブース」の2つを担当者たちが選び、売り場に反映させた。
こうした事例をはじめ、今では営業部門の社員の6割以上が生成AIを利用しているという。日清食品では生成AIを活用することで、営業1人当たり年間およそ400時間分の作業を削減し、得意先ごとの戦略・提案を考える時間や顧客と会って話す時間を50%まで増やすことを目指している。
■商品パッケージからテレビCMまで いち早く生成AIを取り入れ話題に
飲料大手の伊藤園も、いち早く商品に生成AIを活用した企業の一つ。
伊藤園が販売している「お~いお茶カテキン緑茶」。今年9月にリニューアルされたパッケージは、生成AIが作った画像を参考にして、デザイナーが仕上げを行った。
「素案生成のスピード感には、驚きを隠せませんでした」。伊藤園の担当者はこう話す。これまでは人が3週間かけて、およそ10通りの素案を作っていたものを、生成AIは短期間でおよそ30通りもの素案を生み出したという。
さらに、伊藤園はテレビCMにも「生成AIタレント」を起用。視聴した人たちから、多くの驚きの声が届いたという。
一方で、生成AIタレントを起用するデメリットとして、有名なタレントを起用するのに比べると「インパクトが弱くなる」点や、「著作権侵害などのリスクに細心の注意を払わなければならない」点を挙げている。
生成AIを活用したCMやパッケージは世間の注目を集め、9月の出荷数量は前年同月比で1.6倍にも伸長した。今後の生成AI活用については「お客様の声を踏まえて検討させていただきます」としている。
■プロモーション分野での活用に広がり 人型ロボットPepperにも
一方、ソフトバンクロボティクスが提供している人型ロボット「Pepper」にも、生成AIを活用した新機能が2023年12月21日から搭載された。Pepperにテーマやキーワードを与えると、それに沿った30秒程度の曲を即興で作詞・作曲。Pepperが歌いながらダンスを披露する。
ソフトバンクロボティクスは「商品紹介の楽曲が、すぐに提供できるため、販促ツールとしての活用も可能」だとしていて、小売店などでの集客目的の利用を見込んでいる。
■身近に広がる生成AI活用 2024年は?
私たちの仕事や作業を格段に効率化してくれる生成AI。2023年は身近なところに生成AIの成果物を見ることができるようになった。そして2024年。生成AIは果たして、私たちの暮らしをどのように変えるのだろうか。