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霞が関官僚がYouTuberになったワケ

2021年7月3日 16:23
霞が関官僚がYouTuberになったワケ

官僚でありながら、農水省公式YouTuberとしても活動する山地智司さん。活動の背景には、約20年前から続くある食生活の変化がありました。

        ◇ ◇ ◇

■農水省YouTuberが挑んだドッキリ企画

6月28日午後1時半すぎ。東京都千代田区にある水産庁の一室に、小さな画面を真剣にのぞき込む男性たちがいました。彼らは、水産庁始まって以来、初めてのあることに挑戦する若手職員です。

挑むのは、水産庁長官へのドッキリ企画。農水省公式YouTubeチャンネルの企画として、長官室の机に本物そっくりの魚のペーパークラフトを大量に置き、長官を驚かせるというものです。

中心となって企画したのは山地智司さん。入庁3年目の若手官僚です。水産業の魅力を若い世代に発信したいと、半年前から農水省公式チャンネルのYouTube活動に力を入れています。山地さんが力を入れる背景にあるのは、魚離れに対する危機感です。


■この20年で40%の減少…

農水省によると、国内の魚の消費量は、2001年をピークに、20年間で約40%減少。食生活の変化で、魚離れが深刻化しています。その一方で、2019年に大日本水産会が行った意識調査では、魚料理が「好き」または「やや好き」と答えた人は90%を超えました。このことから、山地さんは魚を食べる機会は減っても心までは離れていないのではと考えています。

そのため、今回のドッキリに利用した魚のペーパークラフトは、実は子ども向けに販売されているものを使用しています。子どもたちでも手に取ることができる小道具を選ぶことで、子どもたちに魚のことを知る機会をつくりたいという思いが込められています。


■コロナ禍をチャンスと捉えて魚の消費拡大へ

「おぉ~!何コレ!」と、外出先から戻った山口英彰前水産庁長官は狙い通りのリアクションで、ドッキリ企画は成功。若者を中心に魚の種類や食べ方が知られていない中、「水産をわかりやすく伝えようという気持ちを持っていることを頼もしく思う。将来は明るい」と、山口前長官は若手職員のYouTube活動に期待を寄せました。

また、新型コロナウイルスの影響による生活の変化で、今こそ魚に親しんでもらえる機会だともみています。外食や旅行の機会が減ったことで、キンメダイ、ヒラメなどいわゆる「高級魚」の消費が減少。一方で、家で過ごす時間が増える中、自宅で魚をさばいてみようと考える人がいたことなどから、アジ、サバなど家庭でよく食べられている魚の消費が拡大しました。

総務省の調査によると、昨年の家計の食料支出額に占める魚介類の割合は25年ぶりに増加。水産庁はこの機会をチャンスと捉えて、コロナ後のさらなる魚の消費拡大を目指しています。

山口前長官は、山地さんたちのYouTubeを見てもらうことで、幅広い世代に「魚を自分でさばくのがかっこいいというムードをつくってほしい」と期待していました。


■簡単に食べられる「シーフードミックス」がカギ

水産庁は、新しい生活様式での魚の消費拡大に向けた検討会を重ね、6月に政策の方針をとりまとめました。検討会が魚離れの原因とみているのは、さばいたり骨を取り除いたりと調理に手間がかかることや、魚種によって調理方法が固定化していて、献立に取り込みづらいことなど。

それらを払拭する商品として考えられた案が、おいしくて保存しやすく、様々な料理に使いやすい、冷凍の「シーフードミックス」の活用です。肉や野菜と同じように、家にいつもあって、汁物や炒めものに入れられる定番食材になることを狙い、開発を進めたいと考えています。

水産庁は今年秋を目指して、漁業者、加工や流通に関わる事業者による「水産物消費拡大実行会議」を立ち上げます。官民一体となって魚の消費拡大に力を注いでいく予定です。

官民をあげて取り組む魚の消費拡大。家の台所で魚をさばく「かっこいい」光景は広がっていくのでしょうか。

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